臍帯血ガスの評価
『新訂版 周産期ケアマニュアル 第3版』(サイオ出版)より転載。
今回は臍帯血ガスの評価について解説します。
中野育子
滋賀医科大学医学部附属病院看護師長
臍帯血ガスの評価
目的
臍帯血の採取は、臍帯血ガス分析により分娩時の低酸素およびアシドーシスの状態を評価する。
新生児仮死と臍帯血ガス
出生時における新生児の呼吸、循環不全を主徴とする症候群と定義されているが、その病態は、分娩周辺のガス交換の障害により低酸素血症が影響しているため、新生児仮死の補助診断として、臍帯膨脈血のガス分析が推奨されている。
アシドーシスの評価
PH<7.20
呼吸性アシドーシスでは、PaCO2が高くなり、HCO3-も上昇する。代謝性アシドーシスでは酸が蓄積するためH+が上昇し、HCO3−も上昇する。
必要物品
ヘパリン入り1mLシリンジ、ポータブル血液分析器(i-STAT)(図1)。
臍帯血ガス採取の実際
方法
❶ヘパリン入り1mLシリンジとポータブル血液分析器(i-STAT)を分娩30分前に冷所から常温に置いておく。
❷児の娩出後、臍帯を結紮する。
❸胎盤娩出前に臍帯の表面の羊水や血液を拭きとる。
❹児から胎盤に流れる臍帯動脈を穿刺し、血液を少量採取する(図2)。
❺間接介助者に渡し、血液ガス分析装置で測定をする。
間接介助者
❶カートリッジを袋から取り出す(図3)。
❷臍帯血を検体注入マークまで注入する。
❸カートリッジに注入する。
❹カートリッジのふたを閉める。
❺オン/オフキーを押し、カートリッジを挿入口に入れる。
❻機械の表示に従い、操作を行う。
❼測定終了後、血ガスデータを評価する。
血ガス値の評価
・pH:7.25以上
・PaO2(酸素分圧):27.4 ±5.7mmHg
・PaCO2(二酸化炭素分圧):37.8 ±5.6mmHg
・HCO3-(重炭酸イオン):24mmol/L
・BE(塩基過剰):2.5mmol/L
・SaO2(酸素飽和度):97~98%
BE(塩基過剰)
代謝性(非呼吸性)の因子の状態を表す指標の1つで、血液ガスで得られたpHやPaCO2、HCO3-などの数値から算出される。base excess(ベースエクセス)という。
マイナスの場合は、代謝性アシドーシス、プラスの場合は、代謝性アルカローシスと判断される。
指標の意味づけ
・PaO2は、血液酸素化能力を表す。
・PaCO2は、肺胞換気量を表す。
・pHは、酸性かアルカリ性かの指標。
・BEは、体内のアルカリの増減。
臍帯血pH
娩出時に急激な低酸素(血)症となった場合は、臍帯血pH値はあまり低下しない。臍帯血pH値の低下は、長時間、低酸素状態となっていたことを示し、その状態で出生した場合は、予後が悪いとされる。
ガス交換の指標
PaO2、PaCO2、SaO2。
酸塩基平衡の指標
pH、PaCO2、HCO3-、BE。
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本連載は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『新訂版 周産期ケアマニュアル 第3版』 編著/立岡弓子/2020年3月刊行/ サイオ出版