最終更新日 2018/01/29

PaCO2

PaCO2とは・・・

PaCO2(ぴーえーしーおーつー)とは、動脈血二酸化炭素分圧のことで、動脈血中の二酸化炭素の分圧を表す。

動脈血液ガス分析装置で測定する。単位はTorr(とる:トルチュエリの略)、またはmmHg(みりめーとるえいちじー)。日本では、生体内の圧力の単位としてTorrを、血圧を示す単位としてmmHgを使うことが慣習である。なお、国際的にはPa(パスカル)を使う。

分圧とはその気体がもっている圧力のことで、圧力の比は濃度に置き換えることができる。たとえば、1気圧の空気中の酸素の分圧は約160 Torrである。大気圧(1気圧)は760 Torrなので、酸素濃度は160÷760≒0.21すなわち21%となる。また、二酸化炭素は空気中にほとんど存在しないため分圧は0 Torrである。

 

PaCO2の使用法

換気の指標として用いられる。正常値は35~45 Torrである。PaCO2は、体内の酸塩基平衡にも関与している。

 

PaCO2<35 Torr 

換気量が増加していることを示し、過換気の状態である。 
原因として、発熱、疼痛、せん妄、感染症代謝性アシドーシスの代償などがある。代謝性アシドーシスとはショックや腎不全、中毒などの際に認められ、体内が酸性に傾いていることを示す。この際、酸性に傾いた体内のpH(ぴーえいち;ぺーはー)を元に戻すために、CO2を体外へ過剰に呼出させるので過換気となる。

 

PaCO2>45 Torr 

換気量が低下していることを示し、低換気の状態である。
原因は大きく2つある。

 

1つは、喘息やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)のような気道が閉塞する病態によりCO2を十分に呼出できないことである。

もう1つは、中枢から神経を通って筋肉に伝わる換気の伝達機構のどこかで障害が生じることによる。具体的には、呼吸中枢を抑制する麻薬中毒が代表例として挙げられる。また、中枢からの信号を伝える神経の障害ではフグ毒中毒のようにテトロドトキシンによる神経遮断、呼吸筋の障害としては筋ジストロフィーが挙げられる。

 

以上のように、PaCO2は換気の状態をみることができ、PaCO2値から換気量の増加あるいは低下を想定することで、その原因を探すきっかけとなる。

執筆: 江角 亮

三重大学医学部附属病院 救命救急センター医員

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