せん妄を起こすのでくすりは使いたくないが,医師から投薬指示が出ている場合。どうしたらよい?
『せん妄のスタンダードケア Q&A100』より転載。
今回は、チームでのせん妄ケアについて解説します。
せん妄を起こすので本当はこのくすりは使いたくないと思っても,医師から投薬指示が出てしまって困っています.
そのような場合,どうしたらよいですか?
まず現状を知ってもらうことが大切です.
当該患者さんにどれだけのせん妄リスク(発症要因)があるのか,そのくすりがどれほどのリスクがあるのか,十分にアセスメントし詳細に報告したうえで,その対策を相談し提案しましょう.
〈目次〉
まずは評価を統一する
せん妄の発症要因は直接因子,誘発因子,準備因子に分類され,これら多因子の関与が,せん妄の評価・治療を複雑化し,理解を困難にしています(『せん妄の原因となる準備因子,誘発因子, 直接因子とは何ですか?』参照).
スクリーニングツール(『せん妄の診断・評価が簡便にできる基準やツールはありませんか?』参照)を用いることにより,経験や個人による評価のばらつきは抑えられ,スタッフ間においてリスクを把握しやすくなります.
病棟薬剤師に相談する
薬剤の評価とその対応策は病棟薬剤師に相談しましょう.せん妄の発症要因のうち,薬剤は直接因子に含まれもっとも重要な原因の1つです.
薬剤性せん妄では,原因薬剤の使用がせん妄を引き起こすことはもちろん,併用薬との薬物間相互作用が原因薬剤の作用を増強することにより,せん妄が出現する場合もあります.
また,高齢者では薬剤の吸収・分布・タンパク結合・肝代謝・腎排泄が変化するため,患者さん個々において薬物動態学的な評価が必要となります1).
せん妄ケアチームに相談する
せん妄ケアチームに相談することも重要なことです.
せん妄ケアチームと病棟スタッフの連携により,環境因子の調整など,当該患者さんにとってよりよい対策が得られるでしょう.
また,精神科のある総合病院であれば,精神科専門医へのコンサルトを依頼しましょう.重症せん妄患者さんの対応だけではなく,せん妄リスクのある薬剤を服用している周術期の患者さんであれば,専門医に術前評価を依頼することも1つの方法です.
memoチームでのせん妄ケア
せん妄は,せん妄ケアチームなど複数の専門職がかかわって取り組まないと解決できません.
医療チームとしての見解を示すことで,その提案は受け入れられやすく,医師のせん妄に対する意識や理解は変わってくるはずです.
[Profile]
山本 晃平 (やまもと こうへい)
千葉大学医学部附属病院薬剤部
石井伊都子 (いしい いつこ)
千葉大学医学部附属病院薬剤部
*所属は掲載時のものです。
本記事は株式会社南江堂の提供により掲載しています。
[出典]『“どうすればよいか?”に答える せん妄のスタンダードケア Q&A100』(編集)酒井郁子、渡邉博幸/2014年3月刊行