消化管の手術ではない場合、翌日まで絶飲食する必要があるの?

『術前・術後ケアのこれって正しい?Q&A100』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。

 

今回は「消化管の手術ではない場合の飲食」に関するQ&Aです。

 

海堀昌樹
関西医科大学外科診療教授
編著 西口幸雄
大阪市立十三市民病院病院長

 

消化管の手術ではない場合、翌日まで絶飲食する必要があるの?

 

手術当日は飲水までとし、本格的な飲水・食事は術翌日からが安全と思われます。

 

〈目次〉

 

消化管以外の手術では術後数時間で本当に食べていい?

全身麻酔からの覚醒が良好なことや疼痛管理が十分に実施されていることに加えて、術後悪心・嘔吐がない、また逆に鎮静状態にないなどの多くの要素が影響します。また、術後患者は嚥下機能が予想以上に低下しているため誤嚥にも注意が必要です。現段階では術当日はせいぜい少量飲水までとし、本格的な飲水・食事は術翌日からが安全と思われます。

 

元来、Fearonら(1)が提唱したERASプロトコルでは患者の全身状態が安定している場合、手術当日に2時間を目標に離床し、その後は毎日6時間程度の離床を行うとしています。また術後4時間で摂食を開始し、術後3~4日で目標とする摂取カロリー、タンパク質量まで増量するとしています。

 

これらの超早期離床や経口摂取を可能とするためには、多職種での術後疼痛管理チームまたはプロトコルが完成されている場合と考えられます。わが国では術直後は外科医が患者の全身管理を担当する場合も少なくなく、チーム医療ができていない場合は、術後数時間での経口摂取は控えたほうがよいと思われます。

 

何を確認すれば飲水・食事を開始できる?

重要なことは、「嚥下機能評価」と「術後悪心・嘔吐(postoperative nausea and vomiting:PONV)の抑制」です(PONV(ポンブ)の対策とは?参照)。嚥下機能が低下した状態で経口摂取を始めると、当然、誤嚥のリスクが高くなります。特に高齢者や気道に問題がある患者へは注意が必要です。また、嚥下機能が手術直後に一時的に低下している患者が予想以上に多いことも認識しなければなりません。

 

嚥下機能が低下している患者へは、ただ単に食事開始を遅らせるだけではなく、食事形状の指示や嚥下促進のリハビリテーションを行うべきでしょう。PONV対策としては、手術中も含めて催吐作用のある薬物はできるだけ控えるべきです。

 

またPONVリスク因子をもつ患者(乗り物酔いの既往、非喫煙者、女性)(PONVの予防策参照)では予防的に制吐作用のある薬物を使用するべきです。ERASプロトコルでは、オンダンセトロン塩酸塩水和物やデキサメタゾンが推奨されていますが、わが国では保険適応の問題もあり使用は難しいです。ステロイドに関してはまだ十分に副作用などが検討されていません。その他、メトクロプラミドやドロペリドールの使用が比較的推奨されています。

 


 


本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

[出典] 『術前・術後ケアのこれって正しい?Q&A100』 (編著)西口幸雄/2014年5月刊行/ 株式会社照林社

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