肺塞栓症は重篤な病態になりやすいけれど、事前に診断できないの?
『術前・術後ケアのこれって正しい?Q&A100』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は「肺血栓塞栓症(PTE)の事前診断」に関するQ&Aです。
清水貞利
大阪市立総合医療センター肝胆膵外科副部長
編著 西口幸雄
大阪市立十三市民病院病院長
肺塞栓症は重篤な病態になりやすいけれど、事前に診断できないの?
D-dimerを測定することにより、DVT(深部静脈血栓症)やPTE(肺血栓塞栓症)の発症を早期に疑うことは可能です。
〈目次〉
DVT症状と血液検査で血栓の有無を診断
肺血栓塞栓症(PTE)症例の多くは下肢の深部静脈血栓症(DVT)から続発するとされており、PTEを予防するには、下肢のDVTの時点で発見することが重要です。
下肢DVTの症状としては、左右差のある浮腫や腫脹、足関節背屈時の下腿痛、下腿の把握痛などがあります(図1)。
また、血液検査においてはFDPやD-dimerが血栓症早期発見に有用であるとされています(1)。FDP、D-dimerはいずれもフィブリン関連マーカーであり、D-dimerは術後10μg/mL以上に上昇すれば、血栓症が疑われるといわれています。
血栓症が疑われたら、下肢超音波検査や造影CT検査を施行し、血栓の有無を診断します。
D-dimerが異常値を認めた場合は、その時点で血栓が認められなかった場合でも、下肢の運動を開始する前には血栓の有無について再検することが望ましいと考えられています。
PTEを発症してしまったら
PTEを発症してしまった場合は早期に診断し、より重篤な病態に進展しないよう治療を開始することも重要です(*)。
術後経過中の呼吸苦(SpO2の低下)や頻呼吸、深呼吸や咳漱、くしゃみで増悪するような胸の痛みなど、何らかの胸部症状を訴えた場合は、常にPTEを念頭におき対応しましょう。
[文献]
- (1)松本剛史,和田英夫:DVT/PE の診断・治療マー カー(フィブリン関連マーカーを中心に).血栓 止血誌 2008;19:22-25.
- (2)循環器病の診断と治療に関するガイドライン.肺 血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断,治療, 予防に関するガイドライン(2009 年改訂版) 2014 年4 月10 日、日本循環器学会HP 閲覧、最 新情報はhttp://www.j-circ.or.jp/guideline/ をご 確認ください。
本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『術前・術後ケアのこれって正しい?Q&A100』 (編著)西口幸雄/2014年5月刊行/ 株式会社照林社