持続吸引ドレーン挿入時、貯留液(血液)がどのくらい増えたら危険?
『術前・術後ケアのこれって正しい?Q&A100』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は「接続吸引ドレーン挿入時の貯留液」に関するQ&Aです。
池田克実
大阪市立総合医療センター乳腺外科担当部長
編著 西口幸雄
大阪市立十三市民病院病院長
一般的には、1時間あたり100mL以上の“血性”排液が続く場合は危険です。
〈目次〉
なぜ“血性”排液は危険?
持続吸引ドレーン(J-VACⓇ ドレナージシステム、SBバックスリムⓇなど、)は、術部での出血の有無を知るための情報(インフォメーション)ドレーンの役割を果たします。
排液の量も重要な情報ですが、排液の性状もきわめて大切な情報です。
通常は、ドレーンの排液は、術直後は血性から淡血性ですが、しだいに淡黄色(漿液性)に変化していくものです。
ドレーンからの排液は、出血だけでなくリンパ液や組織からの滲出液もありますので、1時間あたり100mL以上の排液量であっても血性の場合と淡血性や漿液性の場合では意味合いが異なります。一般的に、血性で100mL/時以上の排液が持続している場合は、術後出血を考慮します(1),(2)。
しかし、体位変換などにより、十分吸引できなかった術部の貯留液が急に出てくる場合もあり、一時的に排液量が増加することもあるので、その量が持続するかどうか、その後の性状(血性が淡くなっていくか)にも留意する必要があります。
術後出血の確認はどのように行う?
術後出血している場合には、凝血塊にてすぐにドレーンが閉塞してしまうこともあります。特にJ-VACⓇドレナージシステムやSBバックスリムⓇは細いので、閉塞しやすい欠点があります。閉塞の場合、ドレーン排液量は、出血量推定の参考にはなりません。
ドレーンが閉塞し、かつ出血が持続している場合には、乳がん術後などでは前胸部、腹部の手術では腹腔内に凝血塊と血液が溢れ、創部の腫脹や疼痛、皮下出血斑(前胸部など体表面の場合)の出現や腹部膨隆、腹痛を生じます。また、出血量に応じ血圧低下、脈拍数の増加、四肢の冷感、顔面蒼白、冷や汗などバイタルサインにも影響が出てきます。
出血の有無は、ドレーン排液量・性状だけでなく、バイタルチェックはもちろんですが、ドレーン挿入部、皮膚の色調、局所の腫脹、膨張の有無、疼痛の増強の有無などを総合して判断することが大切です。
[文献]
本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『術前・術後ケアのこれって正しい?Q&A100』 (編著)西口幸雄/2014年5月刊行/ 株式会社照林社