湯の温度を40℃くらいに設定するのはなぜ?|入浴援助

 

『看護技術のなぜ?ガイドブック』より転載。

 

今回は入浴援助時の温度に関するQ&Aです。

 

大川美千代
群馬県立県民健康科学大学看護学部准教授

 

湯の温度を40℃くらいに設定するのはなぜ?

血圧の急上昇を防ぐために、湯の温度は低めに設定します。夏は39℃くらい、冬は40℃くらいを目安にします。

 

この温度帯は人体内の高温部位である肝臓とほぼ等しく、日本人にとってはややぬるめと感じられます。しかし、温度刺激が少ないために副交感神経が刺激されて末梢神経が拡張し、血圧が下がって心臓への負担が軽くなります。また、リラックス効果によって安眠に導く作用もあります。特に、循環動態が変動しやすい高齢者などは、40℃くらいの温度にしたほうが安全です。

 

なお、40~42℃くらいの湯に入ると、交感神経が刺激されて皮膚の末梢血管が収縮し、収縮時血圧を上昇させます。初期血圧上昇は、湯に入って2分間で20~30mmHgくらいですが、高血圧の場合は50mmHgも上昇する場合があります。その後、静動脈吻合が開いて末梢の抵抗が低くなり、血圧は下がりますが、次第に全身が温まるにつれて再び上昇します。こうした血圧の上昇や降下は、循環器系に大きな負担をかけます。

 

また、寒冷にさらされることによる血圧変動を防ぐために、脱衣室や浴室の室温を調節することも重要です。一般的に、24±2℃くらいが適切です。

 


本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

[出典] 『看護技術のなぜ?ガイドブック』 (監修)大川美千代/2016年3月刊行/ サイオ出版

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