TPF療法(化学療法のポイント)/頭頸部がん

この連載では、抗がん剤のポイントや注意点について解説します。
今回は、頭頸部がん(頭頸部癌)の患者さんに使用する抗がん剤「TPF療法(ドセタキセル+シスプラチン+フルオロウラシル療法)」について、レジメンや副作用、治療成績について紹介します。

 

第2話:『TPF療法(看護・ケアのポイント)/頭頸部がん

TPF療法(ドセタキセル+シスプラチン+フルオロウラシル療法)

 

小野田友男
(岡山大学病院頭頸部がんセンター 耳鼻咽喉・頭頸部外科)

 

TPF療法のポイントA・B・C

  • ポイントA:ドセタキセルの初回投与ではアレルギー症状に注意しよう。アルコールに弱いかどうかを把握することも必要です。
  • ポイントB:シスプラチンは嘔気・嘔吐が強くみられます。投与当日の嘔気と、投与後5~6日目の遅発性の嘔気のコントロールが必要です。
  • ポイントC:ドセタキセルは好中球減少が強くみられることが多いので注意が必要です。

 

〈目次〉

 

TPF療法は頭頸部がんの患者さんに行う抗がん剤治療

FP療法(フルオロウラシル+シスプラチン療法)は、頭頸部がんや食道がんなどの扁平上皮がんに対して行われるファーストライン(初回化学療法)ですが、それにドセタキセル(タキソテール)を加えて効果の増強をねらった療法が、TPF療法(ドセタキセル+シスプラチン+フルオロウラシル療法)です。

 

TPF療法では、ドセタキセル(タキソテール)を1日目に投与しますが、その際、発疹アナフィラキシーショックなどのアレルギー症状に注意が必要です。ドセタキセル(タキソテール)はアルコールが添加物として入っているので、アルコールアレルギーがないかどうか、アルコールに弱いかどうかを把握する必要があります。

 

またTPF療法では、比較的強い好中球減少症がみられます。好中球減少症は、治療開始後7日目から始まり、14日目にかけて強く生じます。G-CSF製剤(フィルグラスチム〈グラン〉など)とともに、感染予防の抗菌薬を投与しながら、改善するのを待ちます。

 

フルオロウラシル(5-FU)は、長時間かけて投与することで高い効果がみられる薬剤なので、5日間かけて持続点滴を行います。

 

TPF療法のポイントA

  • ドセタキセルの初回投与ではアレルギー症状に注意しよう。アルコールに弱いかどうかを把握することも必要です。

 

TPF療法で使用する薬剤

TPF療法で使用する薬剤は、表1のとおりです。

 

 

表1TPF療法で使用する薬剤

TPF療法で使用する薬剤

 

(写真提供:サノフィ株式会社、日本化薬株式会社、協和発酵キリン株式会社)

 

TPF療法のレジメン

1日目(Day 1)にドセタキセル(タキソテール)を投与し、4日目にシスプラチン(ランダ)を投与します。フルオロウラシル(5-FU)は5日間投与を続けます(表2)。

 

 

表2TPF療法のレジメン

TPF療法のレジメン

 

TPF療法で使用する薬剤の投与方法(表3

 

表3TPF療法の投与方法

TPF療法の投与方法

 

生食:生理食塩水

 

*本投与方法は、岡山大学病院で行われているものです(2017年5月現在)。

 

TPF療法の代表的な副作用

シスプラチン(ランダ)は、嘔気や嘔吐が強く生じます。その他、腎機能障害、好中球減少症、難聴などがあります。

 

ドセタキセル(タキソテール)の初回投与では、アナフィラキシーショックが生じることがあるので注意が必要です。

 

また、好中球減少症が投与後5~14日目にかけて強く生じます。脱毛は投与後2週間くらいから始まります。投与を終了後、2か月くらいで髪は生え始めます。

 

TPF療法のポイントB

  • シスプラチンは嘔気・嘔吐が強くみられます。投与当日の嘔気と、投与後5~6日目の遅発性の嘔気のコントロールが必要です。

 

TPF療法のポイントC

  • ドセタキセルは好中球減少が強くみられることが多いので注意が必要です。

 

TPF療法の治療成績

咽頭がん33例に対して、ドセタキセル+シスプラチン+フルオロウラシルによる導入化学療法(TPF療法)を行ったところ、27例(82%)に奏効しました。

 

有害事象は、Grade 3または4の好中球減少が29例(88%)にみられ、G-CSF製剤の投与が行われました。その他、Grade 1または2の腎機能障害が5例(15%)、アナフィラキシーショック(ドセタキセル投与直後の全身発赤)が1例、Grade 2の口内炎が1例、Grade 2の下痢が1例、肝機能障害が1例にみられました。

 

memoがんの治療成績でよくみる奏効率とは?

奏効率とは、治療によってすべての腫瘍が消失する「完全奏効(CR;complete response)」と、ある一定の割合以上に縮小する「部分奏効(PR;partial response)」の確率を合わせたものです。つまり、「奏効率=CR+PR」です。

 

例えば、奏効率80%の治療というのは、「80%の確率で腫瘍が縮小、もしくは消失する治療」ということになります。

 

また、最近、「病勢コントロール率」という言葉をよくにします。これは、奏効率に腫瘍が増大しない「不変(SD;stable disease)」の確率を合わせたものです。つまり、「病勢コントロール率=CR+PR+SD」です。

 

[関連記事]

 


[文 献]

 

  • (1)朝蔭孝宏. 頭頸部癌における導入化学療法. 耳咽喉科臨床 2016; 109(3): 147-54.

 


[監 修]
齋藤信也
岡山大学大学院保健学研究科 教授

 

[編 集]
西森久和
岡山大学病院 血液・腫瘍内科

 

[執 筆]
小野田友男
岡山大学病院頭頸部がんセンター 耳鼻咽喉・頭頸部外科

 


*本連載では、薬剤の厳密な指示・副作用・投与スケジュールなどについて記載されていますが、これらは2017年5月時点のもので、変更される可能性がございます。薬剤の使用にあたっては、製品に添付されている最新の情報を十分にご参照ください。

 

*本連載では、登録商標マーク®の記載はすべて省略しています。

 

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