適正な吸引圧は?
『人工呼吸ケアのすべてがわかる本』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は「適正な吸引圧」に関するQ&Aです。
露木菜緒
一般社団法人Critical Care Research Institute(CCRI)
適正な吸引圧は?
〈目次〉
適正な吸引圧
適正な吸引圧について、現時点での合意は得られていないが、成人は150Torr前後(最大200Torr)、小児は80~120Torr、新生児は60~80Torrが安全域とされる。
低粘稠度の粘液であれば、200Torrまでの吸引圧は不要である。
高圧吸引を行うと、線毛上皮細胞も吸引されてしまい、気道粘膜損傷が生じる。空気を多量に吸引し、無気肺、低酸素血症を助長する。
以下に、吸引圧に影響を及ぼす要素について解説する。なお、吸引圧の設定(屈曲閉鎖)は、挿入前に行う。
吸引カテーテルの種類
1多孔式
多孔式の吸引カテーテルの場合、分泌物がすべての孔に接していれば、吸引圧は高くなる。
分泌物が1孔でも接していないと低吸引圧となるため、吸引カテーテルの先端を回転させて、分泌物と孔を接触させる場合もある。
2単孔式
単孔式の吸引カテーテルの場合は、吸引圧が先端の孔のみにかかるため、吸引カテーテルを回転させる必要はない。
吸引カテーテルの太さ(表1)
表1吸引時の空気量(人工肺を用いて10秒間吸引したときに引かれる空気量の測定結果)
※開放状態:気管チューブと吸引カテーテルの間に隙間があり、吸引圧によって外気が気管チューブ内に入ってくる状態
※密封状態:気管チューブと吸引カテーテルの間の隙間をなくした状態
小泉恵,門脇睦美:研究の動向と問題点.ナーシングトゥデイ1998;13(10):28-32.より引用
吸引カテーテルと人工気道の間に隙間がある場合、外気も吸引されるので、トータルで数十mL程度しか気道内空気は吸引されない。
高吸引圧で、吸引カテーテルと人工気道の間に隙間がなく、長時間にわたって行う場合、気道内空気は大量に吸引される。
[文献]
- (1)Cereda M, Villa F, Colombo E, et al. Closed systemendotracheal suctioning maintains lung volume during volume-controlled mechanical ventilation. Intensive Care Med 2001;27:648-654.
- (2)小泉恵,門脇睦美:研究の動向と問題点.ナーシングトゥデイ1998;13:28-32.
- (3)坂本多衣子,前田里美,笠作祐子他:吸引操作の患者への影響.ICUとCCU1985;9:730.
本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『新・人工呼吸ケアのすべてがわかる本』 (編集)道又元裕/2016年1月刊行/ 照林社