気管切開は、どんなときに行うの?

『人工呼吸ケアのすべてがわかる本』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。

 

今回は「気管切開」に関するQ&Aです。

 

露木菜緒
一般社団法人Critical Care Research Institute(CCRI)

 

気管切開は、どんなときに行うの?

 

気管切開は、気管挿管が長期にわたる(または長期化が見込まれる)場合、自己喀痰が困難な場合、経口気管挿管が困難な場合、頭頸部領域の手術・外傷に付随する場合などに行われます。

 

〈目次〉

 

気管切開の適応

気管切開のメリットを表1に示す。

 

表1気管切開のメリット

 

気管切開のメリット
  • 呼吸仕事量の減少
  • 死腔の減少
  • 気道分泌物の吸引が容易
  • 口腔の清潔
  • 口腔・咽頭・喉頭損傷の減少
  • 経口摂取が可能
  • 活動性の上昇
  • 鎮静・鎮痛薬の減量、中止
  • 患者の不快感の減少
  • チューブ交換が容易
  • 緊急時のアクセスが容易

 

 

1人工呼吸器装着患者の場合

  • 2週間以上の人工呼吸器管理が必要な患者、または長期化が見込まれる患者(死腔や気道抵抗の減少や呼吸仕事量の軽減などが目的)
  • 人工呼吸器離脱困難患者(高度意識障害、重症呼吸不全・神経筋疾患など)
  • 分泌物が多く、頻繁な気管吸引が必要な患者

 

2非人工呼吸器装着患者の場合

  • 上気道閉塞患者
  • 過剰な気道分泌物、出血などによる誤嚥や気道閉塞のリスクがある患者
  • 頭頸部領域の手術・外傷のある患者

 

気管切開の禁忌

  • 緊急気道確保(緊急時は合併症が多く時間も要するため、気管切開ではなく輪状甲状靱帯切開や穿刺を行う)
  • 甲状腺肥大
  • 短頸肥満
  • 気管切開部の手術歴
  • 穿刺部の感染・膿瘍
  • 出血傾向

 


[文献]

  • (1)片岡英幸,北野博也:気管切開術の基本手技と合併症対策.日本気管食道科学会会報2012;63:201-205.
  • (2)水野勇司:さまざまな事故や合併症に注意が必要〜気管切開の管理〜.難病と在宅ケア2011;17:31-34
  • (3)3学会合同呼吸療法認定士認定委員会:3学会合同呼吸療法認定士 第18回認定講習会テキスト.2013:297.

 


本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

[出典] 『新・人工呼吸ケアのすべてがわかる本』 (編集)道又元裕/2016年1月刊行/ 照林社

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