◯mab+FOLFIRI療法(化学療法のポイント)/大腸がん

この連載では、抗がん剤のポイントや注意点について解説します。
今回は、大腸がん(大腸癌)の患者さんに使用する抗がん剤「◯mab+FOLFIRI療法」について、レジメンや副作用、治療成績について紹介します。

 

第2話:『◯mab+FOLFIRI療法(看護・ケアのポイント)/大腸がん』

◯mab+FOLFIRI療法

 

神崎洋光
(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科消化器・肝臓内科学)

 

◯mab+FOLFIRI療法のポイントA・B・C

  • ポイントA:46時間の持続投与のレジメンです。ポートを事前に留置しておくことが必要です。
  • ポイントB:イリノテカンによる消化器系の副作用に注意!
  • ポイントC:イリノテカンによる早期型下痢は予防できます。次のコースに投与する前に、ブスコパンを予防投与することで防ぐこともできます。

 

〈目次〉

 

◯mab+FOLFIRI療法は大腸がんの患者さんに行う抗がん剤治療

◯mab+FOLFIRI(◯マブ+フォルフィリ)療法は、進行・再発の大腸がんに対する抗がん剤治療として使用される薬剤です。

 

〇mabは、分子標的治療薬で、患者さんやがんの性質によって使用される薬剤が変わります。ベバシズマブ(アバスチン)であれば「Bmab」セツキシマブ(アービタックス)であれば「Cmab」パニツムマブ(ベクティビックス)であれば「Pmab」ラムシルマブ(サイラムザ)であれば「Rmab」になります。

 

FOLFIRI療法は、フルオロウラシル(5-FU)、レボホリナート(アイソボリン)、イリノテカン(カンプト)を組み合わせた治療法の名前です。

 

◯mab+FOLFIRI療法で使用する薬剤

◯mab+FOLFIRI療法で使用する薬剤は、表1と、memoにある4種類の分子標的治療薬(◯mab)のなかから1種類を使用します。

 

 

表1◯mab+FOLFIRI療法で使用する薬剤

◯mab+FOLFIRI療法で使用する薬剤

 

(写真提供:協和発酵キリン株式会社、ファイザー株式会社)

 

memo4つの分子標的治療薬の特徴

Bmab:ベバシズマブ(アバスチン)

 

ベバシズマブは、ヒト血管内皮細胞増殖因子(VEGF)を阻害することで血管新生を抑制する効果があります。この薬剤の投与によってがん細胞へ栄養や酸素が送られる血管が減少し、兵糧攻めをするように抗腫瘍効果をもたらします。

 

Cmab:セツキシマブ(アービタックス)

 

セツキシマブは大腸がんの細胞で多くみられる上皮成長因子受容体(EGFR)というタンパク質に結合する抗体薬です。このEGFRにセツキシマブが結合することで、がん細胞は増殖できなくなります。

 

Pmab:パニツムマブ(ベクティビックス)

 

セツキシマブと同じくEGFRに結合する抗体薬です。セツキシマブと異なり、完全にヒトの抗体と同じ成分でできています。セツキシマブの投与方法が毎週に対して、パニツムマブでは2週間に1回の投与で良いです。一方で、皮膚障害は強く出る傾向にあります。

 

Rmab:ラムシルマブ(サイラムザ)

 

ラムシルマブは、ヒト血管内皮細胞増殖因子受容体-2(VEGFR-2)に対する抗体であり、血管新生を阻害する効果があります。この薬剤の投与によって、がん細胞へ栄養や酸素が送られる血管が減少し、兵糧攻めをするように抗腫瘍効果をもたらします。ベバシズマブと同じような効果ですが、治療効果は少し異なります。

 

◯mab+FOLFIRI療法のレジメン

1日目(Day 1)に、フルオロウラシル(5-FU:急速静注、持続点滴)、イリノテカン(カンプト)、レボホリナート(アイソボリン)を投与します。フルオロウラシル(5-FU:持続点滴)は、46時間かけて(2日目)投与します(表2)。また、〇mabのなかで、Cmab(セツキシマブ〈アービタックス〉)だけは毎週投与のため、1日目と8日目にも投与します。

 

 

表2◯mab+FOLFIRI療法のレジメン

◯mab+FOLFIRI療法のレジメン

 

◯mab+FOLFIRI療法で使用する薬剤の投与方法(表3

 

表3◯mab+FOLFIRI療法の投与方法

◯mab+FOLFIRI療法の投与方法

 

生食:生理食塩水

 

*本投与方法は、一般的なレジメンを参考に記載しています(2017年5月現在)。

 

フルオロウラシル(5-FU)は、46時間持続投与するため、一般的には中心静脈ポート(CVポート)を留置して外来で行います。

 

◯mab+FOLFIRI療法のポイントA

  • 46時間の持続投与のレジメンです。ポートを事前に留置しておくことが必要です。

 

◯mab+FOLFIRI療法の代表的な副作用

◯mab+FOLFIRI療法の代表的な副作用は、一般的な抗がん剤の副作用と同様の骨髄抑制や食欲不振、全身倦怠感に加えて、嘔気・嘔吐、下痢、腹痛などの消化器症状が強く出ることがあります。

 

特に、イリノテカン(カンプト)では、重度の下痢を主体とした消化器症状が出ることがあります。重度の下痢は、脱水をきたして全身状態が悪化することがあるため注意しましょう。イリノテカン(カンプト)投与中に腹痛や下痢を生じた際は、速やかにブチルスコポラミン(ブスコパン)を投与することで改善します。また、その他の特徴的な副作用には、脱毛などがあります。

 

急に起こる副作用は、アレルギー反応や嘔気・嘔吐、下痢(早期型)、腹痛などがあります。

 

遅れて出てくる副作用は、骨髄抑制、末梢神経障害、脱毛や下痢(遅発型)などがあります。

 

◯mab+FOLFIRI療法のポイントB

  • イリノテカンによる消化器系の副作用に注意!

 

◯mab+FOLFIRI療法のポイントC

  • イリノテカンによる早期型下痢は予防できます。次のコースに投与する前に、ブスコパンを予防投与することで防ぐこともできます。

 

◯mab+FOLFIRI療法の治療成績

FOLFIRI療法のみで腫瘍が縮小する可能性は約40%です。

 

分子標的治療薬(◯mab)を加えることで、50~60%まで効果を高めることが期待されます。

 

[関連記事]
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[監 修]
齋藤信也
岡山大学大学院保健学研究科 教授

 

[編 集]
西森久和
岡山大学病院 血液・腫瘍内科

 

[執 筆]
神崎洋光
岡山大学大学院医薬学総合研究科消化器・肝臓内科学

 


*本連載では、薬剤の厳密な指示・副作用・投与スケジュールなどについて記載されていますが、これらは2017年5月時点のもので、変更される可能性がございます。薬剤の使用にあたっては、製品に添付されている最新の情報を十分にご参照ください。

 

*本連載では、登録商標マーク®の記載はすべて省略しています。

 

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