内視鏡手術時のドレーンの処置 | ドレーン・カテーテル・チューブ管理
『ドレーン・カテーテル・チューブ管理完全ガイド』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は内視鏡手術時のドレーンの処置について説明します。
片桐敏雄
高島平中央総合病院消化器センター医長
大塚由一郎
東邦大学医学部外科学講座一般・消化器外科学分野講師
金子弘真
東邦大学医学部外科学講座特任教授
Point
〈目次〉
- 内視鏡手術時に行われるドレナージ
- 内視鏡手術時のドレナージ方法
- ドレーン管理の注意点と実際
- -ドレーンの性状
- -ドレーンの排液量
- -術後早期の注意点
- -術翌日からドレーン抜去までの注意点
- -離床時の注意点
内視鏡手術時に行われるドレナージ
内視鏡手術は低侵襲であるため、術翌日からの歩行が可能で、創部の痛みが少ないことが特徴の1つである。術後管理においても早期離床が実現できる。
腹腔鏡手術は、患者の体内にカメラを挿入して詳細な手術を行うため、拡大視効果が得られ、開腹手術と比べ出血量が少ないという特徴がある。
消化器外科領域の手術では、開放式ドレナージを選択している施設は約5~6%と低く、多くは閉鎖式ドレナージを選択している1。
感染予防のため、閉鎖式ドレナージのなかでも陰圧で吸引するドレナージ(低圧持続吸引システム)の使用と、できるだけ早期の抜去が推奨されている2。
腹腔内感染や縫合不全などの合併症を併発すると、ドレーン交換や洗浄などの処置が必要となり、長期にわたりドレーンの留置が必要となる場合もある。
内視鏡手術時のドレナージ方法
ドレーン挿入の原則は、皮膚から目的部位に最短距離でストレートに挿入することである。内視鏡手術ではポート孔を利用できることから、ドレーンを挿入するための創を新たに設けることはほとんどない。この点が、開腹手術との違いである。
術式によってドレーンを留置する部位は異なるが、開腹手術と同様に腹腔内に体液が貯留しやすい部位となる。消化器外科領域別の代表的な術式と基本的なドレーン留置部を図1に示す。
使用するドレーンの種類や挿入する本数に関しては、術式、手術所見などによって変わることがあるため、一定の決まりはない。筆者らの施設では、閉鎖式低圧持続吸引システムによるドレナージを使用している。
大腸癌同時性肝転移に対し、腹腔鏡下S状結腸切除術および肝部分切除術を施行した症例を例に、内視鏡手術の具体的なドレナージ法を概説する(図2)。本術式におけるドレーン挿入は合計2本となった(図3)。
図2内視鏡手術におけるドレナージの例(大腸癌同時性肝転移に対し、腹腔鏡下S状結腸切除術および肝部分切除術を施行)
ドレーン管理の注意点と実際
消化器外科手術は、領域別にきたしやすい術後合併症が異なるため、起こりうる合併症をあらかじめ予想して、表1の点に注意して管理する。
ドレーンに対する患者への説明や教育は非常に重要であり、患者と良好な関係を保ち、ドレーンへの理解と協力を得ることが必要である。
ドレーン管理では排出された体液の性状や量が臨床上大切であり、看護のポイントとして、注意深く観察し記録することで、その変化にいち早く気づくことが重要である。
1ドレーンの性状
ドレーンからの正常な排液の色は、滲出液の混じった「淡血性」あるいは「淡黄色」である。
異常な排液の色には、「濃赤色」「黄色」「灰白色」「白色」「便汁」などがある。
2ドレーンの排液量
排液量が多ければ体液喪失につながるため、バイタルサインにも注意が必要である。また、排液がドレーン挿入部脇から滲出液が漏れてくる場合がある。
排液量のカウントを行い、交換回数などもあわせて排液回収バック内の量に加えて報告する。
ドレナージ不良の場合も同様に、ドレーン挿入部脇から滲出液が漏れることがある。最近では、低圧持続吸引システムによるドレナージを行う機会が多いが、排液バックに容量上限まで排液が貯留したり、排液をカウントする際に持続吸引をかけ忘れるとドレナージが効かなくなる可能性があるため、排液バックの取り扱いに習熟しておく必要がある。
3術後早期の注意点
術直後、特に気をつけなければならない合併症は「術後出血」である。通常は時間とともに色調が薄くなるが、ドレーンから濃赤色(血性)の排液が持続的に流出している場合は、出血を疑うサインである。
バイタルサインとともに排液量の変化をチェックし、明らかな出血がつづく場合には医師と連携を図る。
4術翌日からドレーン抜去までの注意点
術翌日から1週間程度のうちは、特にドレーン排液の「性状の変化」に注意する。
黄色の場合は「胆汁漏」、白色では「リンパ漏」、灰白色では「膵液瘻に伴う感染」などの可能性がある。また淡黄色で排液量が多い場合は、「腹水の流出」を考慮する。消化管吻合を伴う手術の場合に、ドレーンから粘液調の排液や便汁を認めた際は「縫合不全」などを疑う必要がある。
感染を伴うと、排液の色調変化とともに独特の「臭気」を発することがある。
5離床時の注意点
ルートの管理(固定)
ドレーンルートの管理も、看護のうえで重要な役割を占める。ドレーンルートが他の点滴ラインとともにきちんと整理されていると、離床をよりスムースに導く。
術後の離床に伴う体動や汗などが原因で、固定するテープが剥がれやすくなるため、ガーゼ交換時にドレーンが抜けないようにしっかり固定されているかを確認する。
ドレーンは自然に抜けないように皮膚と糸で固定されているが、ドレーン留置が長期にわたる場合は、固定の糸が脱落する場合もあるため、注意が必要である。
腹帯などでドレーンルートが折れ曲がり排液不能になっていることもある。屈曲しないようにテープ固定の位置を変えるように処置する。
スキンケア
開放式ドレーンの場合は、消化液が皮膚に付着するとスキントラブルを起こすことがある。ドレーン周囲に皮膚の発赤が見られた場合には、皮膚保護材をドレーン周囲に貼付する。
排液バックの位置
受動的閉鎖式ドレーンの場合は、ドレーン挿入部より排液バックが低い位置になるようにする。また、排液バックが挿入部より高い位置にあると、排液が腹腔内に逆流する可能性があり、ドレナージ不良や逆行性感染の原因となる。
[引用・参考文献]
- (1)竹末芳生:消化器手術における創閉鎖法と腹腔内ドレーン使用法の標準化.日本外科感染症学会雑誌 2014;11(2):93-101.
- (2)Mangram AJ, Horan TC, Pearson ML et al. Guideline for prevention of surgical site infection, 1999. Hospital Infection Control Practices Advisory Committee. See comment in PubMed Commons belowInfect Control Hosp Epidemiol 1999; 20(4):250-80.
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[出典] 『ドレーン・カテーテル・チューブ管理完全ガイド第一版』 (編著)窪田敬一/2015年7月刊行/ 株式会社照林社