経皮的ドレナージの方法と処置 | ドレーン・カテーテル・チューブ管理
『ドレーン・カテーテル・チューブ管理完全ガイド』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は経皮的ドレナージの方法と処置について説明します。
針原 康
NTT東日本関東病院副院長/外科部長
Point
- 最近は、画像診断装置のガイド下で、非手術的に液体貯留や膿瘍をドレナージする「経皮的ドレナージ」が第一選択となってきた。
- 経皮的ドレナージは、用いる画像診断装置とドレーンのタイプ・挿入法によって、種類が分けられる。
- 合併症として、「出血」「臓器損傷」「腹膜炎」「ドレーン閉塞」「逆行性感染」などに注意する。
〈目次〉
経皮的ドレナージとは
経皮的ドレナージ(percutaneous drainage)とは、手術的にドレーンチューブ(ドレーン)を留置する方法に対して、非手術的に穿刺手技を用いてカテーテルを挿入するドレナージ法を示す言葉である。
以前は、ドレナージといえば、多くは手術的に挿入されていたが、近年は画像診断装置の進歩に伴い、画像診断装置のガイド下に行う穿刺技術が発達し、多くのドレナージが穿刺手技を駆使して経皮的に行われるようになっている。
本稿では、経皮的ドレナージの方法と処置について概説する。
経皮的ドレナージの対象となる病変
近年、超音波診断装置、コンピュータ断層撮影(computed tomography:CT)、磁気共鳴画像法(magnetic resonance imaging:MRI)などの画像診断装置の進歩に伴い、腹腔内、胸腔内、後腹膜腔、実質臓器内の液体貯留や膿瘍の診断が容易にできるようになった。
これらの液体貯留や膿瘍を体外にドレナージする場合、可能であれば、手術とくらべより侵襲の少ない経皮的な穿刺・ドレナージ手技が第一選択として考えられるようになっている。
経皮的ドレナージの適応を表1に示す。
近年、消化器内視鏡下のチューブ挿入術や超音波内視鏡下の穿刺手技の進歩が著しく、経皮的ドレナージの代わりに行われることも増えている。
経皮的ドレナージ法の分類①:ガイド別(表2-①)
経皮的ドレナージは、ガイドにどの画像診断装置を用いるかによって分類される(表2-①)。
1超音波ガイド下穿刺
超音波ガイド下の場合、超音波で目標病変が描出可能であれば、穿刺ラインの選択範囲が広く、針先をリアルタイムで確認でき、またベッドサイドでも施行できる利点がある。X線透視を併用することで、より安全性、確実性を高めることができる。
超音波ガイド下経皮的ドレナージ法は、対象病変の大きさに応じて、次に挙げる方法の中から選択される。
対象病変が大きい場合
胸水穿刺や腹水穿刺など対象病変が大きい場合には、超音波検査により対象病変を確認し、安全かつドレナージ効果の期待できると思われる穿刺部位・方向を決定したうえで行う。
穿刺時には超音波装置は使用せず、フリーハンドで穿刺針を進める。
対象病変が比較的大きい場合
対象病変が比較的大きく、穿刺用アダプターの装着が不要の場合には、超音波検査により穿刺経路を決定したうえで行う。
超音波装置で針先の位置を確認しながら、フリーハンドで穿刺針を進める方法(図1)も選択される。
対象病変が小さい、または深部に位置する場合
経皮経肝胆管ドレナージ(percutaneous transhepatic biliary drainage:PTBD)など、対象病変が小さい場合や深部に位置している場合には、穿刺用アダプターを装着して穿刺する方法(図2)が適当である。穿刺前に対象病変を確認して、安全で適切な穿刺経路を決めることが重要である。
実際の穿刺にあたっては、針先が穿刺ラインに沿って進むことを、リアルタイムにモニターしながら針を進め、目的の部位に穿刺されたことを内容の吸引により確認する。
2CTガイド下穿刺
超音波画像では描出することの困難な空気や骨などで隔てられた対象病変の場合には、CTガイド下の穿刺法(図3)が広く行われる。
CTガイド下穿刺では、体位を工夫し、CTスキャン断面に近い穿刺経路を設定する。穿刺針が目的の部位に到達するまで、穿刺-スキャン-確認の作業を繰り返して、安全を確認しながら針を進める。
3X線透視下穿刺
X線透視はドレーンの入れ替え、位置調整や超音波ガイド下との併用などに広く使用されている。
以前は、経皮的胆汁ドレナージはX線透視だけを使用して行われていた。しかしながら、X線透視は2次元(平面)表示のため、3次元で(立体的に)位置の確認できる超音波ガイド下やCTガイド下と比較すると、手技の難易度が格段に高いため、今日ではほとんど行われることはなくなった。
経皮的ドレナージ法の分類②:ドレーンのタイプと挿入法別(表2-②)
ドレーンのタイプと挿入法による分類としては、静脈留置針を穿刺して、外筒をそのまま用いる場合、トロッカーカテーテルを用いる場合(図4)、中心静脈カテーテルを用いる場合(図5)、ガイドワイヤーを用いてセルジンガー(Seldinger)法で目的の太さのドレナージチューブを留置する場合(図6)などがある。
経皮的ドレナージの合併症
経皮的ドレナージの合併症には、ドレーンの穿刺手技に伴うものと、挿入後の管理の中で生じるものがある(表3)。
1穿刺手技に伴う出血
出血は、穿刺に伴う最も重大な合併症である。出血時間や凝固能は事前にチェックして、高度の凝固障害の症例は対象外とする。
穿刺にあたっては、太い脈管を避けることが重要である。また、穿刺経路を必要以上に拡張しないなど、細心の注意が必要である。
2穿刺経路での臓器損傷
不適切な穿刺経路の設定と手技によるものである。
十分に画像を検討して、安全な穿刺経路を設定する、穿刺針の先端の位置を常に確認しながら針を進めるなど、基本に忠実な手技を心がける必要がある。
3周囲への炎症の波及(腹膜炎など)
経皮経肝胆管ドレナージ(PTCD)などでは、手技の途中、ガイドワイヤーのみの刺入時に、胆汁が穿刺経路を通って腹腔内に漏出して、腹膜炎を起こすことがある。
迅速な操作を心がけるとともに、腹壁の上から肝表面の刺入部を圧迫するなどの配慮が必要である。
4ドレーンの閉塞
ドレーンの挿入後には、ドレナージ量を経時的にチェックする必要がある。閉塞の疑いがあれば、洗浄して再開通を図る。場合によってはカテーテルの入れ替えが必要となることもある。なお、洗浄にあたってはドレーン内の圧が上昇しないように注意を払うことが重要である。
必要に応じて、X線写真にてドレーンの位置に変化のないことを確認する。
***
画像診断の進歩に伴い、経皮的ドレナージは手術的ドレナージに代わる第一選択のドレナージ法として普及してきている。しかしながら、この手技では危険な合併症も起こりうるので、その適応と限界を理解し、施行にあっては十分に熟練した者またはその指導のもとに行うことが重要である。
[引用・参考文献]
- (1)Makuuchi M, Bandai Y, Ito T, et al. Ultrasonically guided percutaneous transhepatic bile drainage:a single-step procedure without cholangiography. Radiology 1980;136(1):165-169.
- (2)万代恭嗣, 他:超音波誘導PTCと超音波誘導PTBD.胆と膵 1980;1:1072-1080.
- (3)伊藤徹, 他:腹腔鏡膿瘍の超音波診断および超音波ドレナージ 法.救急医学 1981;5:45-52.
- (4)藤原良将,久直史:ドレナージのためのCT、超音波ガイド.特集 治療的ドレナージ,臨床外科 1993;48(4):435-442.
- (5)渡邊五郎, 他:超音波経皮経肝胆嚢ドレナージ法.臨床外科 1983;38:595-599.
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[出典] 『ドレーン・カテーテル・チューブ管理完全ガイド第一版』 (編著)窪田敬一/2015年7月刊行/ 株式会社照林社