精子と卵子はどのように出合うの?
『からだの正常・異常ガイドブック』より転載。
今回は受精に関するQ&Aです。
山田幸宏
昭和伊南総合病院健診センター長
精子と卵子はどのように出合うの?
腟はpH4〜5の強い酸性の環境ですから、精子がむき出しのまま放出されると、すぐに死滅してしまいます。しかし、精子はpH7〜8の弱アルカリ性の精液に包まれていますので、射精によって酸性の腟内が急速に中和されていきます。
通常、精子がたまる腟上部のpHは、射精後10秒の間にpH7.2にまで上昇します。その間に精子は、子宮頸管に向けて急いで進みます。
子宮頸管まで達した精子は、ここで新たな障壁に出合います。頸管粘液の粘度が高く、精子がいくら尾部で運動しても、なかなか通過できないのです。しかし、頸管粘液の水分量が増加し、粘稠度が低くなる時期が定期的にあります。それが排卵前後の数日です。
ようやく子宮頸部を通過した精子は、次に子宮のなかを潮の流れに逆らうように進み、卵管へと向かっていきます。
この時、左右にある卵管のどちらに精子が向かいますが、成熟した卵胞から精子を誘引するような物質が出されている卵管へ向かうと考えられています。射精時に2〜3億個もいた精子は、ここまでの段階で200個までに減っています。すなわち、1万分の1の確率です。
ここで、卵子の様子をみてみましょう。成熟した卵子が排卵されると、卵管の端にあるラッパのような形をした部分が波打つようにし、卵子を卵管内に吸い込みます。そして、卵管の蠕動(ぜんどう)と線毛(せんもう)のリズミカルな動きにより、次第に子宮のほうへ運ばれていきます。
卵子が子宮に運ばれるまでに要する時間は、3〜4日です。しかし卵子の寿命は短く、排卵後わずか24時間(12〜36時間)で死んでしまうので、卵子と精子の出会いは排卵後短時間に限られます。出合う場所は卵管膨大部、出合う精子は2〜3億個のうちのたった1個です。
このように、限られた時間と条件がそろってはじめて、卵子と精子が出合い、受精(MEMO)します。
本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『看護のためのからだの正常・異常ガイドブック』 (監修)山田幸宏/2016年2月刊行/ サイオ出版