脳幹はどんな働きをしているの?
『からだの正常・異常ガイドブック』より転載。
今回は「脳幹」に関するQ&Aです。
山田幸宏
昭和伊南総合病院健診センター長
脳幹はどんな働きをしているの?
大脳を支える幹のような形をした部分が脳幹です。成人の脳幹は長さ約7.5cm、太さは親指程度と小さな部分ですが、生命維持に関与する意識・呼吸・循環を調節するなど、脳幹の果たす役割はきわめて重要です。脳死とは脳幹に回復不可能な障害が生じています。
脳幹は、上から間脳、中脳、橋、延髄の部分から構成されています。
中脳には、視覚や聴覚、眼球運動などの中枢があり、音の刺激で眼球を動かしたり身体を動かす反応を担当しています。中脳に含まれる黒質(こくしつ)という部分が変性した状態がパーキンソン病です。
橋(きょう)は、上部の中脳や大脳と下部の延髄以下の部分の連絡路で、三叉(さんさ)神経、顔面神経核、蝸牛(かぎゅう)神経核などがここを通っています。また、呼吸調節にも関係しています。
いちばん下にある延髄には多数の神経核があり、また脊髄につながる神経線維の束もあります。ここには生命維持に必要な呼吸中枢、心臓中枢があります。また、咳、くしゃみ、発声、吸綴(吸引)反射、嚥下、唾液分泌、涙液分泌、発汗などの中枢の神経核もここにあります。
MEMO脳死と植物状態
大脳、小脳、脳幹の脳全体が死滅した状態(全脳死)が脳死です。大脳の機能が失われて小脳、脳幹だけが生きている状態は植物状態です。脳死はヒトの死です。
MEMOパーキンソン病
神経間の情報伝達物質であるドパミンを作る黒質が変性する疾患。運動の調節ができなくなり、ふるえ(振戦<しんせん>)や運動時の筋の抵抗(筋の固縮<こしゅく>)、小刻み歩行などの症状が現れます。
MEMO吸綴(きゅうてつ)反射
生後4か月ごろまでの乳児の口唇、口腔粘膜に触れると、乳児は反射的に吸引運動を行います。これを吸啜反射(吸引反射)といいます。口腔に指を挿入するとか、舌に触わると最も強く現れます。
※編集部注※
当記事は、2017年11月17日に公開した記事を、第2版の内容に合わせ、更新したものです。
本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『看護のためのからだの正常・異常ガイドブック 第2版』 (監修)山田幸宏/2023年8月刊行/ サイオ出版