特発性器質化肺炎の疾患解説
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この【実践編】では、呼吸器内科専門医の筆者が、疾患の解説と、聴診音をもとに聴診のポイントを解説していきます。
ここで紹介する聴診音は、筆者が臨床現場で録音したものです。眼と耳で理解できる解説になっているので、必見・必聴です!
より深い知識を習得したい方は、本文内の「目指せ! エキスパートナース」まで読み込んで下さい。
初学者の方は、聴診の基本を解説した【基礎編】からスタートすると良いでしょう。
今回は、間質性肺炎の一種である「特発性器質化肺炎」について解説します。
皿谷 健
(杏林大学医学部付属病院呼吸器内科臨床教授)
原因はわからないし、抗菌薬も効果がないのは怖い病気ですが、ステロイドが有効で良かったです。
そういえば、特発性器質化肺炎の患者さんには、どんなことを確認すれば良いんですか?
基本的には、咳や発熱といったことから、呼吸器の症状を確認してください。
ここで、特発性器質化肺炎について詳しく紹介します。
〈目次〉
- 特発性間質性肺炎と特発性器質化肺炎
- ・特発性間質性肺炎のなかでも重要な特発性器質化肺炎と特発性肺線維症
- 特発性器質化肺炎の原因と病態生理
- 特発性器質化肺炎の症状
- 特発性器質化肺炎の治療
- 聴診時に気を付けるポイント
- ナースへのワンポイントアドバイス
- Check Point
特発性間質性肺炎と特発性器質化肺炎
『特発性間質性肺炎の疾患解説』でも解説しましたが、間質性肺炎は、その原因によって、さまざまな疾患に分類されます。間質性肺炎のなかで、患者さんが最も多い疾患が、特発性間質性肺炎です。
特発性間質性肺炎のなかでも重要な特発性肺線維症と特発性器質化肺炎
特発性間質性肺炎は、細かく分類すると、いくつかの疾患に分類できます。
難病医学研究財団/難病情報センターのホームページでは、特発性間質性肺炎の詳細な疾患分類が掲載されていますが、ややこしい上に、臨床で遭遇する頻度も少ないものもあります。そのため、看護師の皆さんは、特発性間質性肺炎のなかでも、特発性器質化肺炎と、特発性肺線維症の2つを覚えておけば良いでしょう。
特発性器質化肺炎の原因と病態生理
特発性間質性肺炎のなかには、ステロイドの治療が効果的な疾患があります。その一つが、特発性器質化肺炎です。
「特発性」と名称がつくように、その原因は不明で、抗菌薬は効果がありません。
X線写真では、浸潤影が移動して見られたり、非区域性(気管支で境界される区域とは無関係)に浸潤影が見られることが多いため、これをもとに特発性器質化肺炎として診断されることが多々あります(図1)。
図1変わった浸潤影が見られる特発性器質化肺炎
特発性器質化肺炎の症状
特発性器質化肺炎の患者さんの主な症状は、持続する発熱や、咳嗽が多くあります。
しかし、疾患自体に特異的な症状はありません。そのため、発熱や咳嗽の症状が数週間経過した後、呼吸器内科に紹介されてくることが多いです。
特発性器質化肺炎の治療
特発性器質化肺炎の患者さんの治療法は、ステロイド治療がメインになります。
聴診時に気をつけるポイント
『特発性間質性肺炎の疾患解説』でも解説しましたが、特発性間質性肺炎の患者さんでは、背部の両側肺底部が最も注意すべき聴診部位です。これは、この部位に病変が好発するためです。
しかし、特発性器質化肺炎の患者さんでは、全域をまんべんなく聴取する必要があります。これは、特発性器質化肺炎の病変の多くは胸膜直下に出現しますが、肺のどの部位にも生じる可能性があるためです(図2)。
図2特発性器質化肺炎の患者さんに行うべき聴診の位置
また、病変が軽度で、呼吸音を聴取しにくい場合は、患者さんに大きく吸気してもらうと、「チリチリ」や「パリパリ」といった捻髪音を聴取されることがあります。
ナースへのワンポイントアドバイス
特発性器質化肺炎の患者さんには、数週間前から続く症状に気をつけましょう。特に、咳や痰、発熱といった呼吸器疾患でよく見られる症状については、確認してください
- 特発性器質化肺炎はステロイド治療が効果的。
- 特発性器質化肺炎のX線画像では、浸潤影が移動したり、非区域性に浸潤影が見える。
- 特発性器質化肺炎の患者さんを聴診する場合は、前胸部・背部ともに全域をまんべんなく聴き、捻髪音を確認しよう。
次回は、実際の特発性器質化肺炎の患者さんの聴診音を聴いて、特徴をしっかりと覚えましょう。
[次回]
[執筆者]
皿谷 健
杏林大学医学部付属病院呼吸器内科臨床教授
[監 修](50音順)
喜舎場朝雄
沖縄県立中部病院呼吸器内科部長
工藤翔二
公益財団法人結核予防会理事長、日本医科大学名誉教授、肺音(呼吸音)研究会会長
滝澤 始
杏林大学医学部付属病院呼吸器内科教授
Illustration:田中博志