特発性肺線維症の疾患解説
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この【実践編】では、呼吸器内科専門医の筆者が、疾患の解説と、聴診音をもとに聴診のポイントを解説していきます。
ここで紹介する聴診音は、筆者が臨床現場で録音したものです。眼と耳で理解できる解説になっているので、必見・必聴です!
初学者の方は、聴診の基本を解説した【基礎編】からスタートすると良いでしょう。
今回は、間質性肺炎の一種である「特発性肺線維症」について解説します。
皿谷 健
(杏林大学医学部付属病院呼吸器内科臨床教授)
特発性肺線維症は、特発性間質性肺炎の一種ですが、この疾患も国の難病に指定されています。
だいたい10万人に10人の割合で発症するというのは、少ない感じがしますね。
まぁ、珍しい疾患の一つですからね。
そういえば、この疾患に有効な治療薬を最初に開発したのは、実は日本なんです。
え~~~!? そうなんですか!
難病の薬を開発するなんて、日本はすごいですね。
医療の発展は目覚ましいものがありますからね。
皆さんは、まずは疾患の基礎知識からしっかりとおさえていってください。
〈目次〉
- 特発性間質性肺炎と特発性肺線維症
- ・特発性肺線維症と特発性器質化肺炎は覚えておこう
- 特発性肺線維症の症状
- 特発性肺線維症の治療
- 聴診時に気を付けるポイント
- ナースへのワンポイントアドバイス
- Check Point
特発性間質性肺炎と特発性肺線維症
特発性肺線維症は、国の難病にも指定されている特発性間質性肺炎の一種です。
『特発性間質性肺炎の疾患解説』でも解説しましたが、間質性肺炎は、その原因によって、さまざまな疾患に分類されます。間質性肺炎のなかでも、原因がはっきりしない疾患が特発性間質性肺炎です。特発性間質性肺炎のなかでも、最も頻度が高く(約50%)、最も難治性の疾患が、特発性肺線維症です。
特発性肺線維症と特発性器質化肺炎は覚えておこう
特発性間質性肺炎は、細かく分類すると、いくつかの疾患に分類できます。
難病医学研究財団/難病情報センターのホームページでは、特発性間質性肺炎の詳細な疾患分類が掲載されていますが、ややこしい上に、臨床で遭遇する頻度が少ないものもあります。そのため、看護師の皆さんは、特発性間質性肺炎のなかでも、特発性肺線維症と、特発性器質化肺炎の2つを覚えておけば良いでしょう。
特発性肺線維症の原因と病態生理
特発性肺線維症は、およそ10万人に10人の頻度で発症します。
診断のポイントは、X線を撮った際、肺胞に蜂の巣のような形態をした蜂巣肺(ほうそうはい)が見られるかどうかです(図1)。
図1蜂巣肺のイメージ(右肺の場合)
蜂巣肺が見られれば、特発性肺線維症と診断されます(1)。
特発性肺線維症の症状
特発性肺線維症は、徐々に進行する労作時呼吸困難や、咳嗽を主訴とする疾患です。この症状は、年単位でゆっくりと進行(悪化)していきます。
安静時より、労作時での呼吸困難が強い場合、一度は疑うべき疾患です。
特発性肺線維症の治療
特発性肺線維症の治療は、薬物療法です。最近では、抗線維化薬のピルフェニドン(日本で開発)や、ニンテダニブ(海外で開発)などの新しい治療薬が開発され、注目を集めています。
聴診時に気をつけるポイント
『特発性間質性肺炎の疾患解説』でも解説しましたが、特発性肺線維症の患者さんでは、背部の両側肺底部が最も注意すべき聴診部位です。この部位に病変が好発するため、前胸部・背部ともに、下肺野を聴診しましょう(図2)。
図2特発性肺線維症の患者さんに行うべき聴診の位置
また、病変が軽度で、呼吸音を聴取しにくい場合は、患者さんに大きく吸気してもらうと、「チリチリ」や「パリパリ」といった捻髪音が聴こえやすくなることがあります。
ナースへのワンポイントアドバイス
特発性間質性肺炎は、特に労作時の呼吸困難だけが顕著な症例があります。そのため、患者さんには、「いつ(どういうときに)苦しくなるのか?」を聞きましょう。
また、喫煙歴の有無も必ず確認しましょう。これは、近年、間質性肺炎と肺気腫が混在する「気腫合併肺線維症」という呼び名が定着しつつあるほど、タバコとの関係性が注目されているからです。
- 特発性間質性肺炎のなかでも、特発性肺線維症と特発性器質化肺炎は重要。
- 特発性肺線維症は、肺胞が蜂の巣のようになる病気で、治療法は抗線維化薬による薬物療法。
- 特発性肺線維症の患者さんを聴診する場合は、前胸部・背部ともに、下肺野を中心に捻髪音を確認しよう。
[執筆者]
皿谷 健
杏林大学医学部付属病院呼吸器内科臨床教授
[監 修](50音順)
喜舎場朝雄
沖縄県立中部病院呼吸器内科部長
工藤翔二
公益財団法人結核予防会理事長、日本医科大学名誉教授、肺音(呼吸音)研究会会長
滝澤 始
杏林大学医学部付属病院呼吸器内科教授
Illustration:田中博志