普段服用している睡眠薬は術前日も服用していいの?
『術前・術後ケアのこれって正しい?Q&A100』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は「術前の睡眠薬の服用」に関するQ&Aです。
豊山広勝
大阪市立総合医療センター麻酔科副部長
編著 西口幸雄
大阪市立十三市民病院病院長
普段服用している睡眠薬は 術前日も服用していいの?
はい。消化管などの通過障害などに より薬剤の内服や吸収が困難、 禁忌な症例以外ではよいと思います。
〈目次〉
できるだけ患者の日常に近い環境を整える
患者にとって手術とは、精神的、肉体的に非日常的な経験です。医療者がとるべき最善策は、患者の精神的、肉体的コンディションを平静に保持することです。普段服用している睡眠薬で副作用(昼間の倦怠感、健忘といった認知作用、転倒など)を認めないと判断すれば、通常の内服量で十分でしょう。
睡眠薬(表1)は、GABA受容体に作用し睡眠時の緊張や不安を取り除き、寝つきを改善する作用があります。患者に対して、術前日も日常生活のリズムを崩させないことが重要です。手術室入室時、麻酔導入前に必ず前夜の睡眠状態を聴取し、意識レベルを確認します。患者から睡眠薬の内服で快眠できたとの返事を聞くことが非常に多く、有効であると考えます。
異変がないか常に注意する
麻酔覚醒時に、高齢者の症例で想定外の覚醒遅延を経験することがあります。当日の麻酔の補助前投薬、前日の眠剤を含めて把握に努め、ベンゾジアゼピン系の薬剤が投与されていた場合は、フルマゼニル(拮抗薬)を使用することも方法の1つです。
もし、瞳孔不同や上下肢の動きの左右差を認めれば、脳梗塞などの発症を疑い、画像検査を含めて脳神経外科のコンサルトを依頼する必要も考慮しなければなりません。
消化管の通過障害(上部、下部)が存在する患者では、睡眠薬などの経口薬はその吸収が期待できず、嘔気や嘔吐などを誘発する可能性があるので使用は避けるべきです。
また、脳神経外科患者などで意識レベルが低下している症例では、誤嚥などを誘発する可能性が高まるため、睡眠薬の投与は禁忌と考えます。
本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『術前・術後ケアのこれって正しい?Q&A100』 (編著)西口幸雄/2014年5月刊行/ 株式会社照林社