胃が消化酵素で消化されないのはなぜ?
『からだの正常・異常ガイドブック』より転載。
[前回]
今回は「胃壁が胃液によるダメージを受けない理由」について解説します。
山田幸宏
昭和伊南総合病院健診センター長
胃が消化酵素で消化されないのはなぜ?
胃から分泌される胃液の成分は、塩酸、消化酵素(ペプシン)、内因子、粘液などです。
1回の食事で約500~700mLの胃液が分泌され、1日量は1,500~2,500mLに達します。胃液は塩酸を含んでいるので強い酸性を示し、pHは1.0~1.5です。また、胃液の主な消化酵素であるペプシンはタンパク質を分解する働きをもちます。
胃液がこれだけ強い酸性であり、かつタンパク質分解酵素が分泌されていながら、胃壁が胃液による傷害を受けないのは、胃壁の表面をおおう粘液のためです。この粘液は噴門腺から分泌され、塩酸や消化酵素から胃を守っています。
胃の防御機構である粘液に、防御機能を上回る攻撃因子が加わると、粘膜がただれて消化性潰瘍(しょうかせいかよう)が生じます。はじめのうちは粘膜層だけがただれますが、潰瘍が進行するにつれて粘膜下層、固有筋層にまで達し、重症化すると胃壁に孔が開きます(穿孔<せんこう>)。
MEMO消化性潰瘍(しょうかせいかいよう)
塩酸やタンパク質消化酵素であるペプシンにより、胃や十二指腸の粘膜がただれること。潰瘍の攻撃因子としてはヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)が最も強い因子であり、その他は、胃酸、アルコール、活性酸素、薬剤、ストレスなどです。防御因子と攻撃因子の平衡が崩れると、消化性潰瘍が発生します。
※編集部注※
当記事は、2016年9月1日に公開した記事を、第2版の内容に合わせ、更新したものです。
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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『看護のためのからだの正常・異常ガイドブック』 (監修)山田幸宏/2016年2月刊行/ サイオ出版