自律神経とホルモンはどのように連動しているの?
『からだの正常・異常ガイドブック』より転載。
今回は「自律神経とホルモン」に関するQ&Aです。
山田幸宏
昭和伊南総合病院健診センター長
自律神経とホルモンはどのように連動しているの?
身体のなかでは自律神経とホルモンが常に連動しながら、互いに協力し合って働いています。この両者の目的は、身体という1つの社会が円滑に機能できるように環境を整えることです。
この働きを具体的に知るために、血圧が急に低下した場合の反応を例にとって解説します。
出血などによって血圧が急に低下した状態というのは、血液の循環が不足し、あらゆる組織や細胞を生存の危険にさらすことになります。こうした状況で真っ先に働くのが神経系の経路です。
まず、大動脈弓と頸動脈洞、腎臓にある受容器により、血圧の低下が感知されます。すると、血圧が低下しているという情報が延髄の血管運動中枢に伝わり、血管運動中枢は交感神経に働きかけて心臓の収縮力を高め、心拍数を上げるように指令を出します。
同時に、手足などの末梢血管を収縮させる指令も出されます。すると、脳や心臓などの生命維持に欠かせない器官に、優先的に血液が送られるようになります。
また交感神経は、副腎髄質に働きかけてノルアドレナリンやアドレナリンを分泌させ、細動脈を収縮させます(「副腎髄質から分泌されるホルモンは何?」参照)。
このような機序で血管の収縮を促し、血圧を上昇させますが、これは緊急応答です。神経系に引き続き、内分泌系が出番となります。
血圧の低下を感知する受容器の1つに腎臓があります。腎臓に情報が伝わると、腎臓の輸入細動脈にある傍糸球体細胞から、レニンという酵素活性のあるホルモンが分泌されます。
レニンは腎臓の遠位尿細管でのナトリウム再吸収を促進し、それによって同時に水の再吸収が促進され、血液量が増加します。
血液量が増えるということは、血管壁にかかる圧(血圧)が上がるということですから、これによって血流の維持が可能になります(「副腎皮質ホルモンと血圧の関係」参照)。
MEMO大動脈弓と頸動脈洞
大動脈弓は全身に血液を送る際の最初の経路で、頸動脈洞は血圧を監視する圧受容器があります。どちらも血液循環の異常を感知するために重要な受容器です。
※編集部注※
当記事は、2018年1月18日に公開した記事を、第2版の内容に合わせ、更新したものです。
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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『看護のためのからだの正常・異常ガイドブック 第2版』 (監修)山田幸宏/2023年8月刊行/ サイオ出版