卵巣ホルモン|内分泌
看護師のための生理学の解説書『図解ワンポイント生理学』より。
今回は、卵巣ホルモンについて解説します。
内田勝雄
山形県立保健医療大学名誉教授
Summary
1. エストロゲンは、排卵および子宮収縮を促進させる。2. プロゲステロンは、排卵および子宮収縮を抑制させる。
3. 排卵前のエストロゲンのピークは、LHサージを起こして排卵を導く。
4. 排卵後のエストロゲンのピークは、プロゲステロンの受容体を増やす。
卵巣ホルモンとは
卵巣ホルモンは、卵胞ホルモン(follicular hormone、〔エストロゲン estrogen〕)と黄体ホルモン(corpus luteum hormone、〔プロゲステロン progesterone〕である。
エストロゲンとプロゲステロンは、排卵 (ovulation)および子宮収縮(uterine contraction)に関して互いに対照的な生理作用を示す(表1)。
表1卵巣ホルモン
プロゲステロンは排卵を抑制するので、排卵前には分泌されない。排卵後のプロゲステロン分泌は基礎体温の上昇をもたらし、排卵日の推定になる。
このように両者は対照的な生理作用を示すが、排卵後にはエストロゲンがプロゲステロンの受容体を増やして、プロゲステロンを働きやすくする下地をつくる。
この効果をプライミング効果(priming effect)という(priming には下塗りという意味がある)。
エストロゲンは排卵前にも分泌のピークをもち、これはLHサージ(LH surge)を起こす働きがある(図1)。
図1月経周期におけるホルモンの分泌
エストロゲンの2つのピークの生理作用をまとめると表2のようになる。
表2エストロゲンの2つのピーク
NursingEyeプロゲステロン分泌
妊娠(pregnancy)が成立すればプロゲステロンは引き続き分泌され、排卵および子宮収縮を抑制し、妊娠を継続させる。しかし、妊娠2~3か月になると卵巣から分泌されるプロゲステロン量が低下する。
卵巣性プロゲステロンの減少を補うように胎盤性プロゲステロンが分泌されるが、胎盤(placenta)が完成するのは妊娠4か月頃で、まだ不十分である。両者ともに低値であるこの妊娠2~3か月は、プロゲステロンによる子宮収縮抑制作用が低下し、流産(abortion)の危険性が高い時期である。
そこで、この時期にヒト絨毛性ゴナドトロピン(human chorionic gonadotropin、hCG)が大量に分泌される。この時期hCGは尿中にも大量に現れるので、尿による妊娠判断に用いられる。
※編集部注※
当記事は、2017年2月26日に公開した記事を、第2版の内容に合わせ、更新したものです。
本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『図解ワンポイント 生理学 第2版』 (著者)片野由美、内田勝雄/2024年7月刊行/ サイオ出版