膵臓ホルモン|内分泌
看護師のための生理学の解説書『図解ワンポイント生理学』より。
今回は、膵臓ホルモンについて解説します。
内田勝雄
山形県立保健医療大学名誉教授
〈目次〉
Summary
- 1. 膵臓のホルモンにはインスリン、グルカゴンおよびソマトスタチンがある。
- 2. インスリンには血糖低下、グルカゴンには血糖上昇がある。
- 3. ソマトスタチンは、インスリンおよびグルカゴンの分泌を抑制する。
3つの膵臓ホルモン
膵臓のランゲルハンス島からは、インスリン(insulin)、グルカゴン(glucagon)およびソマトスタチン(somatostatin)が分泌される(表1)。
表1膵臓ホルモン
ソマトスタチンは、膵臓の他に視床下部でも分泌され、脳腸ホルモンの一種である(「脳腸ホルモン」参照)。
視床下部のソマトスタチンは成長ホルモンの分泌を抑制する(「抑制ホルモン」参照)。
ギリシャ語で somatostatin の somato は身体、stat は一定を意味し、in は促進させる物質の意味なので、somatostatin は成長を停止させる物質ということになる。実際、ソマトスタチンは成長ホルモンの分泌を抑制するが、その他あらゆるホルモンの分泌を抑制するといってもよい。
インスリンの分泌
血糖が上昇するとランゲルハンス島B細胞の細胞膜にあるグルコース・トランスポーター GLUT2 によりグルコースが細胞内に入る。解糖系、TCA回路、電子伝達系でATPが産生されるとATP感受性K+チャネルを閉じる。その結果、K+の流出が阻害されるので脱分極が起こり、電位依存性Ca2+チャネルが開く。流入したCa2+によりインスリンが分泌される(図1)。
図1膵臓ランゲルハンス島B細胞におけるインスリンの分泌
経口糖尿病薬のスルホニル尿素剤(SU剤)もATP感受性K+チャネルを閉じるのでインスリンの分泌を促進させる(「無症候性虚血疾患」参照)。SU剤としては、グリベンクラミド(glibenclamide)などがある。
※編集部注※
当記事は公開時点で、表1の記載に一部誤りがございました。
2024年11月5日に、正しい情報に修正しました。修正の上、お詫び申し上げます。
(誤)D(γ)
(正)D(δ)
当記事は、2017年2月24日に公開した記事を、第2版の内容に合わせ、更新したものです。
本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『図解ワンポイント 生理学 第2版』 (著者)片野由美、内田勝雄/2024年7月刊行/ サイオ出版