排尿の神経支配|尿の生成と排泄

看護師のための生理学の解説書『図解ワンポイント生理学』より。

 

[前回の内容]

腎臓の酸分泌機構|尿の生成と排泄

 

今回は、排尿の神経支配について解説します。

 

内田勝雄
山形県立保健医療大学名誉教授

 

Summary

  • 1. 蓄尿時には下腹神経(交感神経)の働きで排尿筋が弛緩、内尿道括約筋が収縮する。
  • 2. 排尿時には骨盤神経(副交感神経)の働きで排尿筋が収縮、内尿道括約筋は弛緩する。
  • 3. 外尿道括約筋は体性神経支配の随意筋なので一時的に排尿を停止することができる。

 

〈目次〉

 

排尿の神経支配

膀胱(urinary bladder)は、平滑筋(smooth muscle)からなる袋状の器官で、容量は成人で300~500mLである。膀胱内に尿が150~300mLたまると尿意(micturition desire)を感じる。

 

膀胱の平滑筋である排尿筋(urinary detrusor)と内尿道括約筋(inner urethral sphincter)は、自律神経の骨盤神経(pelvic nerve)および下腹神経(hypogastric nerve)によって支配される。排尿筋は、消化管の平滑筋に見られる輪状筋(inner circular layer)や縦走筋(outer longitudinallayer)のような明確な層構造は認められず、したがって、消化管のような蠕動(ぜんどう)運動(peristalsis)は起こらない。

 

膀胱には、内臓筋としては例外的な体性神経(somatic nerve)の陰部神経(pudendal nerve)に支配される外尿道括約筋(outer urethral sphincter)がある。体性神経支配なので外尿道括約筋は随意筋(voluntary muscle)で、横紋筋(striated muscle)である。

 

これら3つの筋の神経支配をまとめると図1のようになる。

 

図1排尿の神経支配

排尿の神経支配

 

蓄尿時には下腹神経の支配で排尿筋が弛緩し、膀胱に尿がたまりやすくなっている。同じ神経で内尿道括約筋は収縮し、尿の排泄は止まっている。

 

骨盤神経が働くと排尿筋が収縮し、内尿道括約筋は弛緩するので尿が排泄される。このとき、外尿道括約筋は随意筋なので意志により一時的に排尿を停止することができる。

 

NursingEye

尿失禁(urinary incontinence)でよくみられるのが腹圧性尿失禁(stress incontinence)である。くしゃみ、笑い、跳躍、重いものをもったときなどのように急に腹圧が加わったときに、不随意に尿が漏れる状態である。女性で起こりやすい。

 

排尿と排便の神経支配の比較

排便の神経支配は、排尿筋に相当するものがないことを除けば排尿の神経支配に似ている。

 

内尿道括約筋および外尿道括約筋に相当するのが、それぞれ内肛門括約筋(internal analsphincter)および外肛門括約筋(external anal sphincter)である。

 

※編集部注※

当記事は、2016年12月30日に公開した記事を、第2版の内容に合わせ、更新したものです。

 

[次回]

腎不全|尿の生成と排泄

 

⇒〔ワンポイント生理学〕記事一覧を見る

 


本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

[出典] 『図解ワンポイント 生理学 第2版』 (著者)片野由美、内田勝雄/2024年7月刊行/ サイオ出版

SNSシェア

看護ケアトップへ