聴力検査|耳鼻咽喉科の検査
『看護に生かす検査マニュアル』より転載。
今回は、聴力検査について解説します。
高木 康
昭和大学医学部教授
〈目次〉
聴覚とは
20〜2万ヘルツ(Hz)の音振動に対する感覚を聴覚という。音波は外耳道から鼓膜へと伝えられる。その振動が耳小骨を介して内耳のリンパの振動をひき起こし、蝸牛の基底膜上にある音波の受容器であるラセン器を刺激することで、脳へと伝わる。
聴力とは、音の強さに対する聴覚の感受性をいう。聴力検査は、聴覚の状態、レベルを検査するものである。
聴力検査の目的
聴力障害の程度、重症度、その発症部位、性質を知り、疾患の予後判定、治療の選定、判断を行う目的がある。
聴力検査の実際
音叉を用いた聴力検査法
- ベッドサイド、救急外来などのオージオメーターを使用できない場面で有効とされる。
1)Weber(ウェーバー)法
- 音叉を前頭部、頭頂部、下顎先端部などに当てて、聴こえる音がどちら側に偏るかを調べる方法。
- 片側の伝音性難聴があれば患側に偏って聴こえる。
- 片側の感音性難聴があれば健側に偏って聴こえる。
2)Rinne(リンネ)法
- 音叉を、①耳にかざし(気導)、②乳様突起に当てる(骨導)。これを交互に行い、気導・骨導のどちらが大きく、長く聴こえるかを比較する方法。
- 正常では気導音の聴取が良いとされている。
純音検査法
- 聴力検査の最も基本的な検査で、一般に聴力検査というと、純音検査を指している。
1)気導聴力検査
- 気導とは、外耳道、鼓膜、耳小骨経由で音が内耳に伝えられる経路をいう。
- ①一側耳ごとに行う。
- ②検査周波数:125Hzから8000Hzまでの測定を行う。
- ③1000Hzから始め、2000Hz→4000Hz→8000Hzと順次高い周波数を測定する。
- ④再び1000Hzに戻って、再度1000Hzを測定したあと、500Hz→250Hz→125Hzの順で低い周波数を測定する。
- ⑤正常者の聴力レベルは±15dBとされている。
2)骨導聴力検査
- 骨導とは、頭蓋骨を通し内耳に音が伝えられる経路をいう。
- ①手順は気導聴力検査と同様である。
- ②検査周波数:250Hzから4000Hzまでの測定を行う。
3)オージオグラム
- オージオメーターの結果を図にしたものをオージオグラムという。
- 気導聴力は、右耳を○、左耳を×で記載する。
- 骨導聴力は、右耳を右開きカッコ([)、左耳を左開きカッコ(])で記載する。
- 図4は、右耳気導聴力は低下しているが、骨導聴力は正常に保たれており、右耳の伝音性難聴といえる。
聴性脳幹反応(ABR:auditory brainstem response)
- 乳児や意識障害患者など、自覚的聴力検査が施行できない被検者に有効とされている検査法。
- 他覚的検査として利用されるほかに、聴神経腫瘍の診断、後迷路性難聴の診断、脳幹障害の部位診断、脳死判定など神経学的検査に用いられる。
聴力検査前後の看護の手順
<オージオメーターを用いた純音検査>
患者への説明
- ①聴力障害を有する者、高齢者などでは理解力などを判断し、分かりやすく説明する。必要に応じて、検査前に練習を行い、正確にできることを確認する。
- ②気導受話器を当てるときは受話器の中央が外耳道入口部に正しく当たるようにし、隙間ができないように説明する(図2、3)。
- ③骨導受話器(図4)を当てるときは、耳介後ろの乳様突起の外耳道の高さに当てるようにする。またこのとき、耳介に触れたり、毛髪の上に当てたり、斜めに当てたりしないように注意する。
検査前の処置
準備するもの
- ①防音室
- ②オージオメーター(JIS規格を満たし、正しく較正されたもの)
聴力検査において注意すべきこと
- オージオグラムは、検査者の熟練度によって信頼性に差が出るので、検査者の署名を入れるようにする。
本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『新訂版 看護に生かす検査マニュアル 第2版』 (編著)高木康/2015年3月刊行/ サイオ出版