穿刺液検査|検体検査

『看護に生かす検査マニュアル』より転載。
今回は、穿刺液検査について解説します。

 

高木 康
昭和大学医学部教授

 

〈目次〉

穿刺液検査とはどんな検査か

穿刺液検査とは生体内の腔内に貯留した液を穿刺して採取し、種々の性状を検査して診断に役立てる検査である。穿刺液には胸水、腹水、心嚢液、関節液、卵巣嚢液などがある。外観、pH、比重、リバルタ反応、蛋白、糖、細菌、微生物、細胞などを検査する。

 

穿刺液検査の目的

  • 細胞学的検査、細菌学的検査は病気の確定診断のために行う。
  • 一般的性状、生化学的検査は、穿刺液が滲出液か濾出液かを区別するために行う(表1)。
  • 滲出液:炎症の際にその滲出機転により貯留した液体をいい、比較的濃厚で細胞成分、蛋白質、線維成分が多く含まれている。
  • 濾出液:炎症以外の原因、例えばうっ血、変性、水血症、浮腫などにより濾出した液体をいい、すべての成分が少ない。

表1滲出液と濾出液の鑑別

滲出液と濾出液の鑑別

 

穿刺液の採取

胸水採取法

  • 2mLまたは5mL注射器に23〜24針をつけたものを用いる。
  • 穿刺部位は、前腋窩線第5肋間、中腋窩線第6肋間、後腋窩線第7肋間、後腋窩線と肩甲線との中間第8肋間、肩甲線第9肋間を選ぶ。

 

腹水採取法

  • 穿刺には注射器に23〜24針をつけたものを用いる。
  • 穿刺部位は一般にMonro-Richterの線(腋窩と左腸骨前上棘を結ぶ線)の中央(Monro点)、またはその外方を選ぶ。

 

穿刺液検査の実際

一般的性状

  • 外観:色調(淡黄色、黄色、赤色、血性、緑色など)、清濁(透明、不透明のほか粒状物、微細混濁、結晶の有無)、沈殿、凝固物粗大混濁の有無、臭気、液の性状(漿液性、粘液性、膿性、乳び性)などを観察し、記載する。
  • 濾出性の穿刺液は、濁りがなく淡黄色である。
  • 臭気は細菌感染(特に嫌気性菌)のある場合に強く、悪性腫瘍で細菌感染している場合、強い腐敗臭がある。

1)比重

  • 穿刺直後に屈折計、比重計で測定する。

2)リバルタ(Rivalta)反応

  • 200mLのメスシリンダーに水を200mL入れ、酢酸を3~4滴滴下し転倒混和後(数分間放置)、これに穿刺液を1滴液面近くから静かに滴下する。
  • 黒色背景で観察し、濃厚な白濁が速やかに下降し、明らかにメスシリンダーの管底まで白濁が到達した場合は陽性、白濁が下降の途中で消失すれば陰性である。

〈注意〉

 

  • 総蛋白が2.5g/dL以下では陰性になるが、必ずしも蛋白量と並行しない。
  • ヘパリンを含む穿刺液では偽陽性となることがある。

 

生化学検査

1)蛋白の定量

  • 血清蛋白計を用いて屈折率から蛋白量を読み取る(図1)。
  • 正確な濃度を知りたい場合はキングスベリー・クラーク法などにより比色定量する。

図1屈折計

屈折計

 

<判定>

 

  • 蛋白濃度が4g/dL以上の場合は炎症性、2.5g/dL以下の場合は非炎症性(水血症、うっ血、血管壁の変性など)の原因が考えられる。

2)糖質

  • 濾出液では血漿グルコース濃度と近似することが多い。
  • 滲出液では細菌や炎症細胞による解糖作用により低値になる。

3)その他の生化学、免疫血清検査

  • 疾患鑑別の補助診断として行われる。
  1. LDH(乳酸脱水素酵素):滲出液では、特に癌性胸膜炎、癌性腹膜炎では高値となる。
  2. アミラーゼ:急性、慢性の膵炎、膵癌に伴う疾患で高値となる。
  3. ADA(アデノシンデアミナーゼ)結核性胸水では高値。癌性胸膜炎では高値にならない。
  4. 腫瘍マーカー:腫瘍マーカー(CEA)は、腫瘍がなくても高値となるので細胞診を併用する必要がある。

 

細胞学的検査

  • 穿刺液採取後、速やかに遠心して得た沈渣をMay-Giemsa(図2)、Papanicolaou染色(図3)をして鏡検する。
  • 主に胸水、腹水中の腫瘍細胞の病理学的検索として行われる。

図2腺癌細胞(腹水)May-Giemsa染色

腺癌細胞(腹水)May-Giemsa染色

 

図3腺癌細胞(腹水)Papanicolaou染色

腺癌細胞(腹水)Papanicolaou染色

 

細菌学的検査

  • 無菌的に穿刺した穿刺液を塗抹、染色、鏡検する。
  • 時に培養検査が行われる。

 

穿刺液検査の穿刺液の処理と保存

  1. 滅菌試験管に採取する。
  2. 放置するとフィブリンの析出、細菌の増殖、細胞の変性が起こるので、なるべく速く検査室に提出する。
  3. やむを得ない場合は抗凝固剤(クエン酸ナトリウム、EDTA、ヘパリンなど)を加えて氷室保存する。

穿刺液検査で注意すべきこと

  • どこから穿刺したか、穿刺液の種類(腹水、胸水、関節液、卵巣嚢液など)を把握しておく。
  • 各検査項目の必要量を知っておく。

 

略語

 

  • ADA:adenosine deaminase(アデノシンデアミナーゼ)
  • CEA:carcinoembryonic antigen(癌胎児性抗原)
  • LDH:lactate dehydrogenase(乳酸脱水素酵素)

 


本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

[出典] 『新訂版 看護に生かす検査マニュアル 第2版』 (編著)高木康/2015年3月刊行/ サイオ出版

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