赤沈、CRP|検体検査(血液検査)
『看護に生かす検査マニュアル』より転載。
今回は、赤沈、CRP検査について解説します。
高木 康
昭和大学医学部教授
〈目次〉
赤沈、CRP検査とはどんな検査か
生体内で起こっている炎症反応を血清中のCRP(C反応性蛋白、C-reactiveprotein)、赤沈(赤血球沈降速度、erythrocytesedimentationrate、ESR)により検査をする。
赤沈、CRP検査の目的
赤沈は赤血球の沈降する速度を見る検査で、フィブリノゲン、補体などの急性相反応物質や免疫グロブリンの増加を反映することから、慢性炎症、やや経過した急性炎症の活動性を把握できる(表1)。
CRPは、肺炎双球菌のC多糖体と反応する蛋白で、急性炎症や組織崩壊があるときに血中に増加する(表2)。
赤沈、CRP検査の方法
赤沈
国際標準法であるウェスターグレン(Westergren)法を示す。
- ①静脈から採血した血液1.6mL(4容)に対し、3.8%クエン酸ナトリウム0.4mL(1容)の割合で正確に混合し、十分に転倒混和する。
- ②ウェスターグレン管に血液を吸い上げ、0の位置まで満たす。
- ③専用の固定台に垂直に固定する。
- ④1時間後に沈降した赤血球層の境界をウェスターグレン管の目盛りから読み取る。これを赤沈1時間値とする。
<正常値>(1時間値)
男性:2〜10mm/時 女性:3〜15mm/時
- 上記の値より大きくなる場合は促進とする。0〜1mm/時は遅延とする。
CRP
1)測定法
毛細管法による定性法、免疫比濁法による定量法、ラテックス凝集法やEIA法による高感度微量法がある。
2)基準値
定性法では陰性、定量法では0.2mg/dL以下。
赤沈、CRP検査の準備するもの
- 採血道具一式
- 赤沈以外の検査は血清で測定する。
赤沈
- 抗凝固剤:3.8%クエン酸ナトリウム
- 赤沈管:ウェスターグレン管(内径2.55mm、長さ300mm、目盛り200mm)。使い捨てのできるプラスチック製のものもある。
- 固定台:赤沈専用の固定台
CRP
- 定性法:毛細管、抗血清
- 定量法:自動分析機、抗体を含む試薬
赤沈、CRP検査において注意すべきこと
赤沈
- 抗凝固剤との混合比は正確に、血液4容:クエン酸ナトリウム1容にすること。抗凝固剤が多いと赤沈は見かけ上貧血となり、促進する。
- 赤沈値は高温で促進し、低温では遅延する。このため測定時の室温を記載する。
- ウェスターグレン管は固定台に垂直に保つ。管が傾いていると、赤沈値は促進する。これは赤血球層が管壁の一方を伝わって速く滑り落ちるためである。5度の傾斜で顕著となり、傾斜の度合いに比例して沈降速度が速くなる。固定台のなかには管をセットする際に垂直になるように留め金がついているものもある。
- 採血後はなるべく早期に測定をすること(2時間以内)。放置時間が長いと、赤沈値は遅延する。
- 赤沈管内に検体を入れたとき、気泡の混入がないことを確認する。
- 貧血が存在するときは、血漿粘度が低下して赤血球の沈降速度が高まり、赤沈は見かけ上促進する。
CRP
- 病変が生ずると、血中に増加し始め、2〜3日でピークとなった後、回復すると24時間以内で減少または消失する。
- 炎症の大きさに比例して高値となる。
- 炎症が鎮静化すると低下し、活動性を反映する。
赤沈、CRP検査に関するQ&A
Q1.赤沈測定の必要性はありますか?CRPの測定のみでよいのでは?
A.現在、炎症マーカーとしてはCRPの利用のほうが多く、多因子によって検査結果が影響される赤沈の有用性を問われることがよくあります。
しかし、関節リウマチの診療においては、今日でも必須項目として赤沈があげられています。これは古くから関節リウマチの診療で赤沈が用いられているためと、CRPは低濃度での測定では検出感度の限界があり、病態と患者の訴えと合致しないことが多いためです。これが関節リウマチの疾患活動性の指標として赤沈が優れている理由で、現在でも必須項目としてモニタリングされています。
本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『新訂版 看護に生かす検査マニュアル 第2版』 (編著)高木康/2015年3月刊行/ サイオ出版