退職するとき・面接のとき 看護師の「退職理由」~例文と伝え方
看護師さんの「退職理由」はどう伝えればいいのでしょうか。円満退職&転職成功につながる退職理由の伝え方と例文を紹介します。
目次
退職するとき|退職理由の伝え方・例文
円満退職のための退職理由・伝え方
退職交渉を円満に進めるために、退職理由の伝え方は次の3つのポイントを意識しましょう。
1ポジティブな退職理由を探そう
退職の意志を伝える際、ネガティブな退職理由をずらずら並べるのはNGです。
職場の人間関係、仕事の忙しさやしんどさ、給料への不満などが退職の大きなきっかけだったかもしれません。
しかし「もともとの希望だった○○科を経験したい」「もっと成長できる環境でがんばりたい」などのポジティブな気持ちもあるはず。
まずは、自分の中にある「前向きな退職理由」を見つけましょう。
2ネガティブな退職理由は言い換えよう
不平不満をストレートに言うのはNG。どうしてもネガティブな退職理由に触れる必要がある場合も、ポジティブな表現に言い換えましょう。
「病棟の人間関係が複雑で、私も努力してきたのですが、もっと前向きに看護に集中できる環境でがんばりたいと思います」
など、自分なりに努力をしたこと、前向きな退職であることが感じられる退職理由がベターです。
3嘘をつくリスクを知ろう
退職理由で嘘をつくのは、おすすめできません。
もしもバレたときには、退職交渉がかえって難航する恐れがあります。
なかなか退職が受理されない病院に勤めていると、「配偶者の転勤」や「親の介護」など認められやすい退職理由を話したい…と考えるかもしれませんが、嘘をつくリスクは慎重に考えるべきでしょう。
円満退職のための退職理由・例文
退職交渉の場面では、本音に近い退職理由を話すのもアリですが、その伝え方には注意が必要です。
よくある退職理由の例文とポイントを解説します。
例文
(スキルアップ・キャリアアップ)
△△の患者さんを受け持たせていただく中で、この領域のスペシャリストとして知識やスキルを磨いていきたいと思うようになりました。
いずれ●●の認定看護師の資格取得も目指したく、より専門性の高い環境に身を置くため、退職させていただきたいと思います。
例文
(他分野・他領域への関心)
以前から緩和ケアに興味がありました。
こちらで経験させていただいたことを生かし、次は患者さん・ご家族の最期の時間を支える看護を学びたいと思い、緩和ケア病棟のある病院に転職を考えています。
目指すものを具体的に示すこと、それは今の病院では実現できないことを伝えるのがポイントです。
前向きな退職理由ですが、ぼんやりと「スキルアップしたいから」だけだと、「なんとなく言っているだけだな…」と見透かされてしまいます。
院内の異動などでも実現できそうな内容では、異動を打診されて引き止められるなど、退職交渉がスムーズに進まない可能性があります。
例文
以前から体調が思わしくなく、○○と診断されました。
現状では業務の継続が難しく、治療に専念するため退職させていただきたいと思います。
体調不良や病気が退職理由の場合、そのことを正直に伝えて構いません。
具体的な診断結果があれば、それも併せて伝えます。
「いったん休職してはどうか」と引き止められた場合、退職の意思が固まっているなら「かえってご迷惑をおかけするので」とはっきり断ります。
例文
このたび結婚することになりました。仕事を続けることも考えたのですが、家庭に入って家族を支えたいという気持ちが強く、退職させていただきたいと思います。
結婚による退職は、個人や家庭の事情として比較的、理解されやすい理由です。
結婚しても辞めない看護師さんも多いので、仕事との両立を促されるかもしれませんが、退職の意思が固いことを伝えます。
例文
(育児)
時短勤務や夜勤免除などのご配慮をいただき、いつもありがとうございます。
ですが、どうしても体力が続かず、あらためて考えてみた結果、子どもが小さいうちはやはり育児に専念しようという思いが強く、退職させていただきたいと思っております。
例文
(親の介護)
遠方で暮らす父が脳梗塞で倒れ、介護が必要になりました。
近隣に身内もおりませんので、私が同居して面倒を見たく、退職させていただきたいと考えております。
出産・育児・介護といった家庭の事情は、受け入れられやすい退職理由です。
正直に伝えて良いでしょう。
子育てを理由に働き方に配慮をしてもらっていた場合は、感謝の気持ちとともに「育児と仕事を両立するのは難しかった」と素直に伝えます。
例文
病棟の人間関係が複雑で、チームで仕事をしていく上で困難を感じています。
私なりに努力してきましたが、これを機に自分を見つめ直した結果、以前から興味のあった○○領域にチャレンジしたいという思いが強くなり、退職させていただきたいと考えています。
人間関係の不満を感情的にぶつけるのはNGです。
ですが、退職理由のひとつに挙げる程度なら、それほど問題ではありません。
面談する上司は、職場の人間関係を普段から見ています。人間関係による退職があるのも想定内です。
ただし、人間関係「だけ」を退職理由にするのは良くありません。
「異動させるから」「ペアやチームを変更するから」と引き止めの材料になり、退職の理由がなくなってしまいます。
人間関係について触れるときは、その病院にない診療科へのチャレンジなど「現在の職場では実現できない前向きな退職理由」を一緒に組み合わせるのがポイントです。
例文
長時間労働が続いていたこともあって、あらためて自分の看護や働き方を見つめ直したのですが、以前から関心のあった緩和ケアに携わりたいという思いが強くなりました。
これまで教えていただいた知識や技術を糧に新たな領域にチャレンジしたく、退職させていただきたいと思います。
多忙や待遇への不満を退職理由として話すのは避けましょう。
残業や夜勤を減らす・給料をアップするなどの改善策が提示され、辞めにくくなります。
また、改善も一時的な処置にとどまったり、「改善してあげたのだから、もっと頑張れ」とプレッシャーがかかったり、ほかの同僚とギスギスしたりと、結局は働きにくくなるケースが多く見られます。
どうしても触れる場合は、「働き方を見つめ直すきっかけ」程度にとどめ、ほかのポジティブな理由と組み合わせます。
できれば別の理由を挙げたほうが無難です。
看護観が合わない、業務内容ややり方が納得できないという不満は、退職理由としてはやや弱い印象が否めません。
「あなたの視点が偏っている」と責められたり、納得するまで面談が繰り返されたりしがちです。
退職届の提出や退職時の挨拶など、退職に向けて準備しておくべきことはほかにもあります。下記の記事では、退職までの流れややるべきことをまとめていますので、参考にしてみてください。
面接のとき|退職理由の伝え方・例文
転職成功のための退職理由・伝え方
転職の面接で退職理由を聞かれても、必ずしも本音で答える必要はありません。
次の3つのポイントを踏まえ、「前向きな転職であること」を伝えましょう。
1「志望動機」として言い換えよう
退職理由は言い換えれば「転職したいと思った理由」、つまり志望動機と表裏一体です。
「現職・前職では◯◯を経験してきましたが、さらに専門的なスキルを磨ける環境で働きたく、貴院を志望しました」
のように、「なぜ退職しようと思ったのですか?」と聞かれたら、前向きな志望動機につなげて答えます。
「前職・現職では経験できなかった看護に貴院で取り組みたい」と意欲的な姿勢をアピールしましょう。
志望動機を伝えた後に退職理由を聞かれた場合、「先ほどお話ししたこととも重なりますが」と、あらためて志望動機を答えればOKです。
2人間関係や待遇への不満などはNG
面接の場面で、前職に関するネガティブな話は絶対にNGです。
退職交渉ではある程度の本音は構いませんが、面接ではマイナスの印象にしかなりません。
志望動機につながるポジティブな退職理由を答えましょう。
しかし、面接官によっては、
- 職場の人間関係で困ったことはありませんでしたか?
- 上司とのトラブルなどはありましたか?
といった質問で探ってくることも。
その際は、「確かに周囲で小さなトラブルはありましたが、私自身は大きなトラブルに巻き込まれた事はありません」など、前向きな印象になるようにサラリとかわしましょう。
3転職回数が複数なら「一貫性」に配慮しよう
転職回数が複数ある方は、直近の職場の退職理由だけでなく、これまでの経歴全般について聞かれることがあります。
それぞれの退職理由や経歴に一貫性があることを伝えられると良いでしょう。
たとえば、
1:総合病院のICUからスタート
2:超急性期のケアを深く学びたいと、大学病院の救命救急センターに転職
3:病棟の経験も幅広く積む必要があると考えて、急性期病院の循環器内科病棟に転職
4:もっと長いスパンで患者さんのケアに携わりたく、回復期病院の貴院を志望
…など、あなたの経歴が1つのストーリーでつながると、説得力がアップします。
転職成功のための退職理由・例文
例文
(スキルアップ・キャリアップ)
前職では△△の患者さんを受け持たせていただく中で、この領域のスペシャリストとして知識やスキルを磨いていきたいと思うようになりました。
いずれ●●の認定看護師の資格取得も目指したく、この領域の専門病院である貴院で経験を積みたいと思っております。
例文
(他分野・他領域への関心)
以前から緩和ケアに興味がありましたが、前職では緩和ケア病棟がなく、専門的に深く学べる機会がなかなかありませんでした。
前職での委員会活動が一区切りついたこともあり、早くから緩和ケアに取り組まれている貴院で、新たな成長を目指したいと思います。
スキルアップ・キャリアアップ、他分野・他領域への関心は、志望動機とつなげて答えやすい退職理由です。
「前職・現職では経験できなかった看護に貴院で取り組みたい」と前向きな姿勢をアピールできます。
自分のやりたいことを掘り下げたうえで、希望先の病院の特色とも矛盾していないか、病院のホームページなどで確認しましょう。
志望動機を伝えた後に退職理由を聞かれた場合は「先ほどお話ししたこととも重なりますが」と、あらためて伝えます。
ただ、「NICUを経験したい」「●●を学びたい」など、限定的な希望をアピールしすぎるのは要注意。「希望科への配属を約束できない」と採用を見送られる可能性があります。
「将来的には●●に興味がありますが、まずはジェネラリストとして幅広く経験したい」などと、希望の実現に余裕をもたせて伝えるのがおすすめです。
例文
私は●●といった看護観を持って働いてきましたが、前職では、業務に対する姿勢が私と周りの皆さんで違う点もありました。
前職からも多くを学ばせていただいたのですが、これまでとは違う看護観の下でも経験を積みたいと考えていたところ、貴院のホームページで○○○とあるのを拝見し、私の目指したい看護だと共感いたしました。
退職理由として看護観や業務内容のミスマッチを伝える場合、自分の看護観や前職の看護観をきちんと言葉にできるようにしておきましょう。
希望先の看護観もホームページなどでよく調べ、矛盾しないように伝えます。
「貴院でこんな看護がしたいのです」と志望動機に絡めて話すのがポイントです。
例文
結婚を機に一度は退職しましたが、いずれまた看護師として復帰したいとずっと考えていました。
新しい生活も落ち着き、夫の協力も得られたので、前職の経験を生かせる貴院で働かせていただきたいと思っております。
結婚で退職した後に復職する場合、また働けるようになった理由を説明します。
配偶者の転勤についていく形で辞めた方は、「当面、転勤の可能性はないと思います」という点も忘れずに。
数年以内に再び転勤する可能性があるようなら、あらかじめ打ち明けておくほうが入職後のトラブルを避けられます。
また、妊娠や出産の予定を質問されることがあります。
本来なら尋ねるべきではない項目なのですが、看護師は女性の多い職場ということもあり、実際の面接では聞かれるケースも少なくないようです。
もし聞かれたら「しばらくは予定していません」「1~2年は予定していません」などと答えるのが良いでしょう。
例文
(出産・育児)
出産・育児で職場を離れましたが、いずれまた看護師として復帰したいとずっと考えていました。
子育ても一段落したため、前職の経験を生かせる貴院を志望いたしました。
夫も復職を応援してくれており、一日も早くブランクを取り戻し、腰を据えて働きたいと思っております。
例文
(親の介護)
父が脳梗塞で倒れて介護が必要になり、退職しました。その後のリハビリが順調で介護サービスも利用しており、復職が可能になりました。
現在は父の状態も落ち着いており、何かあった際には兄家族が対応してくれますので、業務に支障はありません。
家族を介護した経験も生かして貴院に貢献できたらと思っております。
出産・育児・介護といった家庭の事情で退職した場合は、また働けるようになった理由を説明します。
面接官は「業務に支障がないか」「今後も同じ理由で退職する可能性があるか」を知りたいので、退職に至った状況はクリアされたこと、長く働けることをアピールします。
例文
前職では長時間勤務が続いたことで体調を崩してしまい、退職しました。
その後きちんと療養し、現在は健康状態に問題なく、業務に支障をきたすようなことはありません。
健康管理や業務管理には十分留意して長く働きたいと思います。
退職理由が体調不良や病気の場合、面接ではできれば他の退職理由を伝えた方が安全です。
こうした退職理由は面接官から「またすぐに辞めてしまうのでは?」と思われかねないからです。
不自然に隠す必要はありませんが、あえて自分から話す必要はないでしょう。
話の流れなどでどうしても伝えなければならない場合、ポイントは「現在は業務に支障がない」とはっきり伝えることです。
面接官は「長く働いてくれるのか」「精神的に弱いところがないか」という点を気にしています。
今は問題なく働けるとアピールすることが大切です。
例文
前職の急性期病院では、どうしても一人一人の患者さんとかかわる期間が短く、慌ただしく退院を迎えていました。
回復期の貴院では、受け持ち患者数は増えると思いますが、より長いスパンで患者さんに向き合い、在宅復帰を支えられると思いました。
忙しさや待遇への不満といった退職理由は、面接で言うのは避けたほうがベターです。
「仕事に対する意欲が低い」「権利意識が強すぎる」と、マイナスな印象を与えてしまいます。
ただ楽をしたいだけと思われないように、前向きな志望動機に言い換えます。
また、「今の病院は忙しいので、もっとゆっくり患者さんと向き合いたい」は言いがちですが、実は「ゆっくり向き合う」は使わないほうが無難な言葉。
「のんびり楽に働きたい」と受け取られるリスクが高く、「うちの病院も忙しいですけど」と返されてしまいます。
「より長いスパンで患者さんを支えたい」などに言い換えましょう。
転職の面接では、人間関係のトラブルを退職理由として伝えるのは避けましょう。
「本人にも非があったのでは?」「周りとうまくやっていけない人だ」とマイナスの印象を与えてしまいます。
人間関係には触れず、別のポジティブな理由を話しましょう。
しかし、面接官が人間関係を気にするタイプの場合、前職での人間関係を質問してくることがあります。
どうしても人間関係に触れなければならないときは、例文のように、個人ではなく職場全体の問題だったこと、人間関係が退職理由ではないことを伝え、前向きな印象になるように締めくくります。
例文
<人間関係について質問されたら>
前職は人間関係が複雑で、それを理由に退職する同僚も多く出てしまう職場でした。
私自身は大きな問題に巻き込まれたことはありません。
より前向きに、チームで看護に取り組める環境でがんばりたいと思っています。
1~2年目や試用期間で辞めるときの退職理由のポイント
1年目や2年目、あるいは転職したばかりで在職期間が短くても、どうしても仕事や職場の環境が合わず、退職せざるを得ないことはあります。
そんなとき気になるのが「働き始めて間もないのに、退職を認めてもらえるだろうか」「転職に不利になるのでは…」ということ。
けれども毎年、一定の新卒ナースが離職していますし、第二新卒を受け入れている病院も多くあります。
ただし、短い期間で辞めるときの退職理由の伝え方には注意点があります。
注意点1:嘘はつかない
短い期間で辞めるとなれば、「人間関係が合わない」「仕事についていけない、キツい」「心身ともに疲れた」など、ネガティブな退職理由がほとんどでしょう。
それは、退職の意思を告げられる側も、転職の面接をする側も織り込み済みです。
嘘をついて取り繕ったり隠したりするのは、かえってマイナスになりかねません。
注意点2:素直な態度で&他者を責めない
退職の意思を伝える場面でも、転職の面接の場面でも、「つらいのは、どこも同じだよ」「あなたにも改善すべきところがあったのでは?」と言われてしまうかもしれません。
それに対して「いえ、ここの環境や先輩方の指導が良くないのです」「私は悪くなかったと思っています」などと言うのはNG。
特に面接の場面では、「他責性が強く、人の話を聞かない。周囲と良好な関係が築けない人だ」と判断されてしまいます。
短期間で辞めた人の面接では、
- 周囲とコミュニケーションが取れる人か
- 仕事への意欲はあるか
- 今度は長く働いてくれるのか
が見られています。
たとえ本音では「自分は悪くない」と思っていたとしても、自分にも非があったことを認め、前向きに努力できる人間であることをアピールするほうが得策です。
また、後ろめたい気持ちから、面接の場面でつい、うつむきがちになるかもしれませんが、しっかり顔を上げて臨みましょう。
「コミュニケーションに問題がある人ではないんだな」という印象を持ってもらうことが大切です。
例文
(退職するとき)
先輩方にも相談に乗っていただき、自分としても努力を重ねてきましたが、どうしても続けていくことが難しく、退職させていただきたいと思います。
お世話になった皆様には申し訳ないのですが、今後の長い看護師人生を考えてみて、自分に合う所で看護師を続けていくほうが良いと思いました。
例文
(面接のとき)
自分でも早い退職だったと反省しております。
病棟の異動を願い出るなどもしましたが難しく、短期での退職となってしまいました。
この反省を踏まえ、今後は早め早めに周囲に相談し、多少つらいことがあっても踏ん張って、長く働き続けたいと思っております。