退職金について考える看護師のイラスト

職場を辞めるときにもらえる「退職金」。その制度の概要や、もらい方について詳しく知らないという人は多いのではないでしょうか?

看護師の退職金制度と、勤続年数や病院・施設ごとの退職金の相場について紹介します。

目次

看護師の退職金制度

看護師の場合、退職金制度はどのようになっているのでしょうか?

制度の概要や、受け取るタイミングについて紹介します。

職場によって退職金の有無や条件が異なる

看護師が退職時に退職金をもらえるかどうかは、勤務先によって異なります

退職金制度は法律などで定められているものではありません。そのため、退職時に退職金を支払うかどうかは職場ごとに決められており、支給条件や金額も異なります。

厚生労働省のデータによると、医療・福祉業界で退職金を支給している職場は87.3%。およそ9割の職場で支給されていることになります。ただし、これは医療・福祉業界全体のデータであり、看護師だけのデータではないので注意してください。

※参考:厚生労働省「平成30年就労条件総合調査」

退職金制度は就業規則から確認できる

自分が勤める職場に退職金制度があるかどうかは、就業規則から確認することができます

労働基準法では「常時10人以上の労働者がいる」場合、就業規則の作成が義務づけられています。退職金制度を用意している場合は、その対象者や退職金の額の算出方法、支払日などが書かれているはずなので、詳細は就業規則からチェックしましょう。

一方、スタッフが10人未満の小さなクリニックなどでは就業規則がなく、「そもそも退職金制度を用意していない」「支給の判断が院長の一存で決まる」といったケースもあります。職場に退職金制度があるのかどうかを知りたい場合は、院長に直接尋ねるのがよいでしょう。

退職金はいつもらえる?

退職金には主に3つの種類があり、受け取れるタイミングが異なります。

【退職金のもらい方】1. 退職一時金。退職してすぐ。2. 退職年金。定年後に分割で。3. 退職金前払い。給与に含まれている。

それぞれについて詳しく解説します。

1退職してすぐもらえる「退職一時金」

1つ目は「退職一時金」としてもらう方法です。退職一時金制度とは、退職してすぐに病院から全額が一度に支給される制度のことです。

退職した月やその翌月などに、給与の支払いに使われていた口座に振り込まれることが多いようです。

2定年後に分割でもらえる「退職年金」

2つ目は「退職年金」としてもらう方法です。

基本的には定年後に分割で受け取ることになり、受け取る期間の長さは自分で選ぶことができます。退職してすぐにまとまったお金が手元に入るわけではないので、注意しましょう。

退職年金として受け取れる企業年金制度は、大きく分けて2パターンあります。

  • 確定給付企業年金(DB)
  • 企業型確定拠出年金(企業DC)

「確定給付企業年金(DB)」は、病院が一定の掛け金を外部の信託銀行などに積み立て、管理・運用する仕組みです。定年後の年金として受け取るのが基本ですが、退職のタイミングで一時金として受け取れるケースもあります。

一方で「企業型確定拠出年金(企業DC)」は、病院が積み立てた掛け金を、従業員自らが管理・運用する仕組みです。受け取りは定年後となります。

3給与に含まれている「退職金前払い」

3つ目は「退職金前払い」という方法です。退職時に支給するのではなく、毎月の給与に「前払い退職手当」を上乗せして支給する制度です。

退職金前払い制度を取っているところは多くありませんが、導入している病院では、給与水準が比較的高い可能性があります。

【勤続年数別】看護師の退職金の相場

退職金は勤続年数に応じて支給額が増えるのが一般的です。

ここでは、勤続年数ごとに看護師の退職金の相場を紹介します。

【看護師の退職金の相場】看護師3年目:30万円前後/看護師5年目:50万円前後/看護師10年目:250万~300万円前後/看護師20年目:450万~600万円前後

看護師3年目…30万円前後が相場

看護師3年目の退職金の相場は、30万円前後と言われています。おおよそ給料1カ月分が目安となります。

ただし、退職金の支給条件を「勤続3年以上」とし、丸3年に満たない退職は支給ナシとしている職場も珍しくないようです。

看護師5年目…50万円前後が相場

看護師5年目の退職金の相場は、50万円前後と言われています。少ない場合は3年目と大きく変わらず、30万円前後という職場も。

新卒で入職していれば、5年目でプリセプターやメンターといった役職を担当する人もいるでしょう。看護師としても一人前となり、職場への貢献度も高くなるため、規模が大きい病院では70万~100万円前後もらえることもあるようです。

看護師10年目…250万~300万円前後が相場

看護師10年目の退職金の相場は、250万~300万円前後。年次を重ねて給料も上がるため、5年目よりもぐっともらえる額が増えます。

また、退職金の計算方法によっては「勤続10年」を節目に加算額があったり、支給割合の増え幅が大きくなったりすることもあります。

30代になり、主任などの役職についている場合は、相場よりも多くもらえることも。その一方で、産休・育休や休職を経験した場合は通算の在職期間が短くなるため、相場より少なくなる可能性が高いでしょう。

看護師20年目…450万~600万円が相場

看護師20年目の退職金の相場は、450万~600万円前後です。

40代を迎え、ベテランの域になります。貢献度や役職の有無によっても、受け取れる金額に差が出やすい時期となっています。

【病院・施設別】看護師の退職金の相場

看護師の退職金は、病院や施設の種類によっても異なります。

ここでは、看護師の退職金の相場を4つの病院・施設ごとに紹介します。

民間病院・クリニック

民間病院やクリニックで退職金制度があるかどうかは、職場によって異なりますが、退職金の相場は看護師3年目では30万円前後看護師5年目では50万円前後と言われています。

退職金の計算パターンは、大きく分けて3つあります。

  1. 基本給ベース
    …例:20万円(基本給)×1.3(一定の係数)
  2. 固定金額ベース
    …例:10万円(固定金額)×5年(勤続年数)
  3. 勤続年数ベース
    …例:5年で100万円、10年で200万円 など

上記のとおり、基本給や勤続年数をもとに算出されるため、長く勤めれば勤めるほど多くの退職金がもらえる仕組みとなっています。

公立病院、自治体の保健・福祉施設

公立病院や自治体の保健・福祉施設に勤める看護師は、地方公務員の扱いになります。

主な勤務地は、以下のとおりです。

  • 県立病院・市立病院
  • 各自治体の保健所や保健センター
  • 公立の看護学校
  • 公立の保育園や幼稚園
  • 地域包括ケアセンター

地方公務員の場合、退職金の相場は看護師3年目では35万円前後看護師5年目では63万円前後となります。

地方公務員の退職金は、退職時の給料月額に一定の支給率をかけた「基本額」と、等級に基づいた「調整額」で算出されます。

制度の詳細は地方自治体ごとに定められていますが、基本的には国家公務員の退職金のルールに準じたものが適用されています。

地方公務員の退職金の目安は、以下のとおりです。

【地方公務員の退職金の目安】自己都合で退職した場合 勤続年数(退職日給料月額・職員区分)別の支給額。3年(23万円の場合):約34万6千円。5年(25万円の場合):約62万7千円。10年(30万円・等級3級の場合):約21万7千円(内訳…基本額150万円6千円+調整額65万1千円)。20年(35万円・等級3級の場合):約75万5千円(内訳…基本額688万円4千円+調整額65万1千円)。※看護roo!編集部にて概算(千円未満は切り捨て)。※出典:人事院「退職手当の支給」。※自己都合退職者の場合、勤続9年以下は調整額が支給されない。 勤続10年以上24年以下は調整額が半額になる。

国立病院機構

国立病院機構に勤める場合、退職金の算出方法や相場は公立病院とほぼ変わらず、看護師3年目では35万円前後看護師5年目では63万円前後となります。

国立病院は2004年に「国立病院機構行政法人」として法人化されています。そこで勤める看護師は「準公務員(みなし公務員)」となり、公務員と同等の扱いを受けています。

法人化されましたが、長年続けてきた退職金制度を急遽変更することは難しいため、退職金の算出方法や支給条件は当時の制度に準じています。

※参考:独立行政法人国立病院機構「職員退職手当規程」

官公庁(国家公務員)

官公庁で働く看護師は、国家公務員に該当します。

主に下記で働く看護師が、国家公務員としてみなされます。

  • 自衛隊病院
  • 宮内庁病院
  • 国立ハンセン病療養所
  • 医療刑務所

内閣人事局のデータ(2021年度)によると、国家公務員の退職金の相場は入職5年未満で24万円前後5~9年目では87万円前後となっています。

国家公務員の退職金制度は「国家公務員退職手当法」で定められていて、退職金の額は「基本額+調整額」で算出されます。

国家公務員(常勤職員)の勤続年数ごとの退職金の平均は、以下のとおりです。

【2021年度国家公務員の退職手当】勤続年数別の自己都合退職の平均支給額。5年未満:23万7千円/5~9年:87万1千円/10~14年:273万5千円/15~19年:509万6千円/20~24年:898万2千円。※出典:内閣人事局「退職手当の支給状況(令和3年度)」 ※常勤職員の場合

看護師の退職金にまつわる注意点

職場の退職手続きにおいて「退職金」はどうしても二の次になりがち。

退職時に「もっと早く知っておけば」と後悔しないように、看護師の退職金にまつわる注意点を紹介します。

【看護師の退職金にまつわる注意点】退職年金は次の職場に引き継げる可能性がある。できるだけ多くもらうためには退職時期に注意。

退職年金は次の職場に引き継げる可能性がある

職場が退職年金制度を導入していた場合、退職金として積み立てたものを転職先に引き継ぐことができます。

積み立てた資産を引き継げるかどうかは、いままで加入していた退職年金の制度の種類と、転職先が加入している制度によって異なります。同等の制度がなければ、個人で加入できる「iDeco(個人型確定拠出年金)」に引き継ぐ必要があります。

詳しくは、加入していた退職年金の運営管理会社や、転職先の総務に相談してみましょう。

※参考:厚生労働省「年金資産の持ち運び(ポータビリティ)」

できるだけ多くもらうためには退職時期に注意

退職金の支給方法は職場によって異なりますが、基本的には勤続年数によって支給対象者や支給割合が決まっています。そのため「もう少しだけ長く勤めていれば、退職金が多くもらえたのに…」ということも。

注意すべき退職のタイミングの例は、以下のとおりです。

  1. 年次の区切り
    …支給額がアップする
  2. 勤続3年目
    …支給対象外から支給対象になる
  3. 勤続10年目
    …金額の増え幅が大きい

1年次の区切り

看護師の退職金は、退職時の給料の額や勤続年数から算出するのが一般的です。

年度の途中で辞めてしまうよりも、年次が上がったタイミングで退職したほうが、昇給などで給料が増えたり、通算の勤続年数が長くなったりするため、より多くの退職金をもらえるでしょう。

2勤続3年目

退職金の支給条件を「勤続3年以上」にしている職場も少なくありません。そのため、3年目の途中で辞めると、退職金を受け取れずに損をしてしまうことがあります。

本当に今すぐ辞めるのか、退職金がもらえるまでもう少し頑張ってみるのか、慎重に判断しましょう。

3勤続10年目

勤続10年をひとつの区切りとして、退職金の額や支給率がぐっと高くなる職場もあります。また、公務員看護師が自己都合で退職する場合、勤続10年未満は加算額(調整額)がなく、基本額のみが退職金として支給されます。

「あと数カ月頑張れば、より多くもらえたのに」と後悔しないように、退職のタイミングには注意しましょう。

Point!

看護師が退職する時に気をつけたいこと

いざ辞めるというときには、職場との関係が円満なまま退職したいものですよね。

看護師が退職するまでの基本的な流れと、円満退職をするためのポイントを確認しておきましょう。

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