在宅領域で「日勤のみ」「土日休み」で働ける職場の一つ、訪問診療

看護師の役割仕事内容のほか、メリット・デメリット年収など、働き方のリアルを紹介します。

訪問先で診療を行う医師と看護師のイラスト

目次

訪問診療における看護師の役割・仕事内容

訪問診療とは、さまざまな理由から通院が難しい・在宅療養を望む患者さんに向けた医療サービスのひとつ。

利用者は末期がんなどで終末期ケアが必要な方や、心不全や腎不全で症状の悪化を繰り返す方などが多く、担当の医師が定期的に自宅や施設に訪問し、診療や療養上の相談・指導を行います。

訪問看護は看護師が1人で訪問するのに対し、訪問診療の看護師は医師に同行し、診療の補助や必要なケアを担当します。

訪問診療の看護師の主な役割・仕事内容

  • 医師の診療補助・カルテ記入
  • バイタルチェック、採血や注射・点滴
  • 尿カテーテルや胃瘻の交換、吸引や褥瘡処置
  • 療養環境の観察や整備、患者・家族へのアドバイス
  • 診療スケジュールの管理・調整
  • ケアマネジャーや訪問看護師、病院との情報共有
  • 電話対応や物品の発注・在庫管理

…など

訪問時には療養環境の観察や患者・家族との会話を通じて情報収集を行い、看護師ならではの視点から、ときには今後の治療方針について医師とディスカッションするケースもあります。

事務仕事や連携業務も多い

クリニックによっては、事務仕事や連携業務の多くを看護師が担うのも、訪問診療の特徴です。

診療スケジュールの管理物品の準備をはじめ、在宅療養を続ける上で必要な情報について、ケアマネジャーや訪問看護師、病院との連携・調整業務を行うこともあります。

クリニック(事業所)でPCを操作する看護師のイラスト

キャリアアドバイザー

訪問診療における看護師の業務範囲は、クリニックが力を入れている疾患・病状や、スタッフの人数などによっても異なります。

気になるクリニックが見つかったら、診療の方針や内容について、求人情報公式のホームページなどからよく調べてみましょう。

訪問診療で働く看護師の1日のスケジュール

訪問診療で働く看護師の、1日のスケジュール例を紹介します。

【9:00】出勤・ミーティング

朝のミーティングでは、その日の診療スケジュールの確認や事務連絡などを行います。

【9:30】出発

車の前に立つ訪問診療の医師と看護師のイラスト

移動手段は車がキホン。ドライバーが別でいるクリニックもあれば、看護師が運転するクリニックもあります。

移動中は医師と情報共有や相談をしたり、カルテ記入や電話対応をしたりするケースも。

【10:00】午前中の診療開始

午前・午後で5~8件ずつ訪問するのが一般的。1件あたりの滞在時間は10~30分程度と、訪問看護に比べると短めです。

【12:30】休憩

通常は一度クリニックに戻りますが、移動中の車内や出先のお店で食事をすることも。

【13:30】午後の診療開始

訪問先の玄関で挨拶する医師と看護師のイラスト

クリニックによっては、ひとつの介護施設の入居者さんをまとめて診療することも。

【17:00】クリニックへ戻る

クリニックに戻り、カルテ記入ケアマネジャーへの連絡など、事務仕事を行います。

翌日の訪問に向け、物品の片付けや補充も行います。

【18:00】ミーティング・終業

キャリアアドバイザー

オンコール対応があるクリニックもありますが、電話口での対応だけで済むことが多く、往診が必要な場合も医師のみで訪問するのが一般的です。

心配な場合は面接などでオンコールの有無や頻度、対応の流れなどを質問してみましょう。

往診との違いは?

訪問診療と往診には、大きく「計画的か予定外か」という違いがあります。

どちらも患者さんの住まいに医師が赴くという意味では同じですが、あらかじめ立てられた診療計画に基づき、医師が定期的に訪問する訪問診療に対し、往診は突発的に診療が必要になった患者さんに対して、予定外に行う診療を指します。

ただ、訪問診療において訪問・診療することを往診と呼んでいるクリニックも多いようです。

訪問診療で働く看護師の年収・給料はいくら?

訪問診療の看護師の平均年収:400~480万円(※地域差があります)

訪問診療で働く看護師の年収は400万~480万円ほど。在宅医療のニーズが高まるにつれ、訪問診療の看護師の給料も上昇傾向にあります。

ただ、訪問看護と違って首都圏でも500万円を超えることは稀。訪問診療では看護師の同行が義務ではないことが影響しているようです。

とはいえ、同じく日勤のみで働けるクリニックやデイサービスなどでは400万円に届かないことも多いため、その中では高水準と言えるでしょう。

また、看護師の年収は地域差によるところも大きく、一般的には都市部ほど高くなる傾向があります。

訪問診療で働く看護師のメリット・デメリット

訪問診療の看護師として働くときの、メリットとデメリットを紹介します。

訪問診療で働く看護師のメリット

訪問診療で働く看護師のメリット…1:日勤のみでも給与水準高め、2:医師との距離が近く安心感がある、3:個別性の高いケアができる

1日勤のみでも給与水準高め

訪問診療の給与水準は、夜勤がない働き方の中では比較的高めです。

さらに土日・祝日休みのクリニックも多いため、家族や友人との予定も合わせやすく、家庭やプライベートとの両立を図りやすいでしょう。

2医師との距離が近く安心感がある

訪問診療では訪問時、常に医師がいるため、指示をその場で仰げる安心感があるのも大きなメリット。

わからないことや気付いたことなどについて、タイムリーに報告・相談できます。

3個別性の高いケアができる

訪問診療では、患者さんの住む自宅や施設が診療の場になります。

そのため、病院に比べて患者さんの希望や生活スタイルに合わせた、個別性の高いケアを実践しやすいでしょう。

訪問診療で働く看護師のデメリット

訪問診療で働く看護師のデメリット…1:ケア以外の業務が負担に感じることも、2:オンコール対応があることも、3:医師との相性が仕事に影響しやすい

1ケア以外の業務が負担に感じることも

訪問診療では事務仕事や連携業務を看護師が担うクリニックも多いため、それを負担に感じてしまう看護師さんもいるようです。

ケアについても、1件あたりの滞在時間が短く、基本的には医師が対応するため「思ったより患者さんとじっくり関われない」という声も。

2オンコール対応があることも

看護師が出動することはほとんどないものの、オンコール対応のあるクリニックも少なくありません

「ファーストコールは看護師が出る」というルールになっているクリニックもあるため、「せっかくの休日なのに気が休まらない…」と感じる看護師さんもいるようです。

3医師との相性が仕事に影響しやすい

訪問診療では訪問時や移動中など、1日のうち多くの時間を医師とともに過ごします。

そのため、医師との相性によっては、仕事がしづらいと感じることもあるようです。

訪問診療に向いているのはどんな看護師?

訪問診療の看護師がオススメな人

  • 在宅医療に興味がある
  • 1人でケアする訪問看護は不安
  • 個別性の高いケアに興味がある
  • 日勤のみ・土日休みで働きたい
  • 事務仕事が苦にならない

…など

訪問診療は医師に同行するという働き方のため、在宅医療に興味があるものの、訪問看護のように1人でケアをするのは不安という方に向いているでしょう。

また、訪問診療では患者さんやご家族の本音や不安に寄り添いながら、長期的な関係を築いていくことが求められます。そのため、個別性の高いケアに興味がある方にとってはやりがいを感じられる職場でしょう。

くわえて、夜勤がなく土日休みの職場が多いため、生活リズムを整えたい方や、子育て中の方にもオススメ。

さらに、カルテ記入はもちろん、書類作成やケアマネジャー、訪問看護師への連絡などの業務も多いため、事務仕事やPCスキルが苦にならない方にもピッタリです。

在宅酸素療法を受ける高齢者のイラスト

訪問診療に転職するには?ポイントや志望動機の書き方

訪問診療への転職を考えている看護師さんに向けて、求人数選考で見られているポイント志望動機の書き方などを解説します。

訪問診療への転職はこんな感じ!

訪問診療への転職には、下記のような特徴があります。

訪問診療への転職はこんな感じ…1:訪問診療の求人は少なめ、2:内科系の臨床経験が3年以上あると◎、3:コミュニケーション能力も大切

1訪問診療の求人数は少なめ

訪問診療の同行看護師の求人数は、訪問看護師に比べると少なめです。

訪問診療クリニックの数自体があまり多くないことに加え、訪問診療では看護師の同行が義務付けられているわけではないからです。

そのため、限られた求人に応募者が集まり、採用倍率は高い傾向があります。

ただし、訪問診療のニーズは年々高まっているため、今後求人数が増えていく可能性は十分にあるでしょう。

2内科系の臨床経験が3年以上あると◎

訪問診療に転職する場合、内科系の臨床経験が3年以上あると、採用されやすいでしょう。

訪問診療での業務には「医師の指示のもと、その場でテキパキと処置を行う」「訪問看護師やケアマネジャーとの連携業務も必要」といった特徴があります。

また、患者さんには内科系の疾患を抱えた方が多いため、内科系での臨床経験が3年以上あると、評価してもらいやすくなるのです。

キャリアアドバイザー

クリニックによっては看護師が車を運転するため、運転免許を持っていることが採用条件になっているところもあります。

PCスキルや多職種連携の経験も、アピールにつながるでしょう。

3コミュニケーション能力も大切

訪問診療クリニックの選考では、人柄やコミュニケーション能力も見られています

訪問診療では常に医師と行動をともにするため、医師と問題なくコミュニケーションが取れるかどうかは大切なポイントになります。

また、病院以上に患者さんやご家族の要望をよく聞き、その人らしさを大切にしたケアが求められるため、打ち解けやすく聞き上手な人柄だと印象が良くなるでしょう。

キャリアアドバイザー

クリニックによっては、面接のタイミングで同行の体験があるところもあります。身構える必要はありませんが、訪問先では挨拶や笑顔を忘れないようにしましょう。

地域医療のイラスト

訪問診療に転職するときの志望動機

訪問診療に転職するときの志望動機では、訪問診療や在宅領域に興味を持ったきっかけや経緯について、自分なりのエピソードを語りましょう

訪問診療や訪問看護などの在宅領域は、患者さんの生活やその人らしさがポイントになるため、そうした看護に惹かれている点を強調すると良いでしょう。

例文

二次救急の総合病院で、循環器内科の経験を3年積みました。

入退院を繰り返す患者さんも多く、ご本人はもちろん、ご家族の方の負担も大きくなってしまうことに課題を感じ、いつしか在宅医療の重要性を考えるようになりました。

中でも貴院は、患者さんやご家族との対話を大切にされていて、一人一人の生活や人生に寄り添った治療やケアをされていると伺い、大変魅力に感じております。

在宅医療の分野は未経験ですが、病棟経験で培った医療的スキルやコミュニケーション能力を生かしながら、1日でも早く戦力になれるよう努める所存です。

(251字)

志望動機の書き方や例文については、下記の記事も参考にしてみてください。

キャリアアドバイザー

夜勤なし」「土日休み」の職場をお探しなら、訪問看護やクリニック、デイサービスや保育園など、選択肢は他にもたくさんあります

下記の記事ではそれぞれの職場の特徴働き方年収相場などを紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

ナースの職場、こんなにたくさん!看護師のおしごと図鑑

看護師の転職ガイド 転職活動がぐっと楽になる便利なガイド