感染管理認定看護師とは?資格の取得方法や学校、試験対策を解説
感染管理認定看護師は、院内感染から患者さんや医療スタッフを守るために、感染症に関する高度な知識を備えた認定看護師です。
この記事では、感染管理認定看護師になる方法やカリキュラムを受けられる学校、資格取得後の仕事内容、取得のメリットについて解説します。
目次
感染管理認定看護師とは?
感染管理認定看護師は、病院・施設内の患者さんや医療スタッフの感染を予防、または抑えるための高度な知識・スキルを持つ看護師です。
2021年からは、感染管理認定看護師の資格に、特定行為研修なども組み込んだB課程という新たなカリキュラムがスタートされました。それ以前にあったカリキュラムはA課程と呼ばれています。
現在、感染管理認定看護師資格のA課程は3,091人、B課程は548人(2023年12月)が取得しており、最も取得人数が多い認定看護分野になっています。
感染管理認定看護師に求められる役割とは
認定看護師になると、「実践」「指導」「相談」の3つの役割が求められます。
日本看護協会は、認定看護師の役割を次のように定義しています。
これを感染管理認定看護師に当てはめると、どのようになるでしょうか。具体的に解説します。
感染管理認定看護師の役割①「実践」
「実践」は、病院や施設の感染管理の状況を調べた上で、感染を予防する、感染の広がりを抑える、といった取り組みを行うことです。
病院内のサーベイランスを行い、耐性菌の発生状況や院内感染の原因などを明らかにして、その状況に合った感染管理プログラムやシステムを構築します。
感染管理認定看護師の役割②「指導」
「指導」は、病院・施設のスタッフに対して感染管理の考え方や方法をレクチャーすることです。
感染対策のマニュアルを作成し、ほかの看護師に実際の対応方法やマニュアル活用の仕方をレクチャーしたり、勉強会を行ったりします。
感染管理認定看護師の役割③「相談」
「相談」は、院内の感染管理について医師、薬剤師などの多職種間でコンサルテーションを行ったり、院内のスタッフの感染管理をサポートしたりすることです。
感染管理は病院全体で取り組む必要があり、さまざまな職種のスタッフとともに対策の計画や環境・制度づくりを行います。
感染症看護専門看護師との違い
名前がよく似ている資格に「感染症看護専門看護師」があります。感染症看護認定看護師との大きな違いは、求められる役割です。
専門看護師に求められる役割は、認定看護師よりも幅広く、実践・相談・調整・倫理調整・教育・研究などが挙げられます。
例えば「研究」は、過去の事例や感染管理を実践しているスタッフからの話をもとに感染対策のメソッドを導く、といった役割を指します。
このように、所属する病院の感染管理だけでなく、感染管理分野の発展のために貢献したい方に向いている資格です。病院や施設のほかにも、大学などの教育現場で活用している人が多くいます。
感染症看護専門看護師の詳しい活動内容については以下で説明しています。
感染管理認定看護師になるには?
感染管理認定看護師になるまでの流れや、通う学校などを解説します。
感染管理認定看護師になるまでの流れ
認定看護師資格を取得するまでには4つのステップがあります。
上の図の「実務経験」というのは、病院・施設の感染対策委員会やリンクナース会などでの活動実績が3年以上あり、自分で行った感染管理により改善につながったケースが1例以上あることです。
また、医療関連の感染サーベイランスを実施するときの流れを理解していること、現職で感染管理に関する業務を行っていることも望まれています。
感染管理認定看護師のカリキュラムを受けられる学校は?
認定看護師を取得するには、指定された教育機関で、A課程・B課程のそれぞれで決められたカリキュラムに沿って学習する必要があります。
感染管理分野の対象学校は、認定看護分野の中で最も多くなっており、以下の都道府県の学校で開校されています。
A課程の対象学校(2024年4月時点の学校所在地)
- 北海道
- 神奈川県
B課程の対象学校(2024年4月時点の学校所在地)
- 福島県
- 栃木県
- 群馬県
- 埼玉県
- 東京都
- 山梨県
- 新潟県
- 福井県
- 長野県
- 静岡県
- 三重県
- 京都府
- 兵庫県
- 島根県
- 岡山県
- 山口県
- 徳島県
- 香川県
- 高知県
- 福岡県
また、A課程とB課程の主な違いは、専門性の高い知識や技術を習得できる研修制度である「特定行為研修」があるかないかです。
開校する学校の詳細や、具体的なカリキュラムについては以下のリンクをご確認ください。
A課程
B課程
A課程
B課程
感染管理認定看護師の試験内容は?合格率は?
認定審査の試験内容は、例年以下のように設定されています。
- 試験時間:100分
- 会場:都道府県ごとの所定の会場
- 試験形式:筆記試験(マークシート方式・四肢択一式)
- 問題数:計40問(150点満点)
- 合格率:日本看護協会からの発表はなし
難易度は易しくはないようです。合格率の公式発表はありませんが、入学試験の準備や800時間の教育課程での学習などがあるため、相当量の学習は必要でしょう。
認定審査では「認定看護師教育基準カリキュラム」に沿った基礎知識を中心に出題されます。カリキュラムをしっかり受講して、試験に備えましょう。
感染管理認定看護師の資格取得の時間・費用
感染管理認定看護師の資格を取る場合、どれくらいの時間や費用がかかるのかを解説します。
感染管理認定看護師の資格取得までにかかる時間
感染管理認定看護師の資格取得までには、約2年かかります。
表資格取得までのスケジュール例
時期 | できごと |
---|---|
4月 | 入学、共通科目開始 |
4月上旬 | e-ラーニングでの授業開始 |
8月 | 演習・実習 |
翌年2月 | 修了試験 |
10月 | 認定審査 |
12月 | 認定審査の合格発表、認定看護師認定証交付・登録 |
また、教育機関に通っている間の約1年間は、休職や一時的な退職を考える必要がありそうです。
病院によっては、認定看護師取得のための休職の受け入れや、勤務扱いとして対応してくれるところもあります。受験を考える際は、ご自身の病院の制度などについて事前に確認しておきましょう。
小感染管理認定看護師の資格取得に必要な費用
認定看護師になるには、教育機関の入学金と授業料、認定審査を受けるための検定料など総額で130万円程度かかります。
表認定看護師の資格取得にかかる費用の例
項目 | 金額 |
---|---|
入学試験の受験料 | 5万円 |
入学金 | 10万円 |
受講料 | 105万円 |
認定審査の受験料 | 5万円 |
認定料 | 5万円 |
さらに、ここに数万円の教材費と、遠方の学校に通う場合は引っ越し費用や通学のための交通費なども発生します。
費用の工面は、日本看護協会による「認定看護師教育課程奨学金」などを活用することも、選択肢の一つです。詳しくは、日本看護協会のホームページを確認しましょう。
また、勤務先の病院で補助制度を設けているケースもあります。自分の勤務先の制度を確認してみてもよいですね。
感染管理認定看護師の仕事内容
感染管理認定看護師の仕事は、病院・施設で働くスタッフや入院・通院する患者さんを感染から守ることです。
サーベイランスや院内ラウンドを実施し、院内感染の発生箇所や原因などを調べたり、耐性菌の状況を監視したりします。
調査・監視したデータをもとに、院内の感染リスクを抑えるための感染管理システムを考え、実行します。
マニュアル作成や勉強会の実施等を通じ、ほかのスタッフが感染管理を行えるようにすることも認定看護師の仕事です。
また、他職種と連携して感染管理のレベルを上げていくことも求められます。「こういう場面ではどんな感染対策をするのが良い?」といった相談に対して、院内の感染管理チームや医師などとともに、感染管理の方法を考えることもあります。
感染管理認定看護師になるメリットとは
感染管理認定看護師の資格を持っているとスキル面などでメリットがあります。
スキルアップにつながる
感染管理認定看護師の資格の勉強を通じて、感染管理の知識が身に付き、スキルアップにつながります。
感染管理は対応内容の幅が広く、さまざまな分野の知識が必要となります。
学校では、疫学・微生物学・感染症学などの専門知識を学び、サーベイランスなどで集めたデータを分析し、感染対策方法を考える・実行するスキルが身に付きます。
院内の感染管理レベルを上げられる
感染管理認定看護師としての知識・スキルを現場で発揮することで、病院や施設の感染管理レベルを上げることができます。
感染管理は自分ひとりがスキルを上げるだけでは、院内全体の感染リスクを下げることは難しく、ほかのスタッフのスキル向上や、管理システムの構築が必要です。
認定看護師になると、感染管理の底上げを図るために勉強会の主催をしたり、感染対策のリーダーシップを取ったり、といった活動がしやすくなります。
このように資格で培った専門知識や知名度などを利用してチームや院内を巻き込んだ感染対策がしやすくなるのが魅力と言えるでしょう。
昇給がある場合もある
感染管理認定看護師の取得により手当が付いたり、昇給があったりして、給料がアップする場合もあります。
病院や施設によって異なるため、気になる場合は認定看護師の資格取得による昇給制度があるのかなど調べてみても良いでしょう。
まとめ
感染管理認定看護師は、患者さんはもちろん、看護師さんやほかの医療スタッフを感染から守るための、知識・スキルを身に付けられる資格です。
病院内の感染管理のレベルを上げたい、患者さんやほかの看護師さんが安心して病院を利用できる環境をつくりたい、といった方は、取得を検討してみても良いでしょう。
執筆:看護roo!編集部
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