腎不全看護認定看護師になるには?取得の方法や費用、メリットなどを解説

看護師が取りたい資格図鑑『腎不全看護認定看護師』の記事のMV

腎不全看護認定看護師は、透析が必要な患者さんや腎臓病を持つ患者さんに対して、高いレベルの看護ケアを提供できる資格です。

 

この記事では、腎不全看護認定看護師の資格の取り方必要な費用・時間取得するメリットについて解説します。

 

 

 

腎不全看護認定看護師とは

腎不全看護認定看護師は、腎不全の患者さんに対して、日常生活における療養指導透析看護において高いレベルの看護ケアを提供できる資格です。

 

もともとは「透析看護認定看護師」という名称でしたが、腎不全に対して、透析以外の療養指導なども含む幅広い領域に対応する資格とするため、2019年に「腎不全看護認定看護師」と改められました。

 

病院やクリニックの透析室などを中心に、「透析看護認定看護師」は273人、「腎不全看護認定看護師」は50人の方がそれぞれ資格を取得しています(2023年末)。

 

 

腎不全看護認定看護師の役割とは

認定看護師」には「実践」「指導」「相談」の3つの役割があります。

 

日本看護協会は、認定看護師の役割を次のように定義しています。

 

認定看護師の役割を表した図版。1実践、2指導、3相談がある

出典:日本看護協会「認定看護師」

 

腎不全看護認定看護師の役割①「実践」

「実践」は、患者さんやそのご家族に対して、より良い看護ケアを行うことです。

 

透析が必要な患者さんには、安全で苦痛を軽減するための透析サポートを行います。また、患者さんの自己管理についての相談や指導も「実践」の一つです。

 

腎臓病の相談をする患者さんと医療者のイラスト

 

 

腎不全看護認定看護師の役割②「指導」

「指導」は、病棟やクリニックの看護師さんに、看護ケアの知識や実践方法を教えることです。

 

透析・腎不全の治療に携わる看護師さんに対して勉強会を開いたり、看護学生を受け入れてレクチャーしたり、といった活動を指します。

 

 

腎不全看護認定看護師の役割③「相談」

「相談」は、病棟・クリニックの治療に関わるさまざまな職種のスタッフとともに、より良いケアを考えることです。

 

管理栄養士など、他職種と連携して、患者さんがより良い治療生活を送ることができる体制の構築などを行います。

 

 

「透析看護認定看護師」は将来なくなる?

腎臓病看護認定看護師の名称変更前の資格である「透析看護認定看護師」は2026年に教育が終了認定審査も2029年に終了します。

 

透析導入後の看護ケアだけでなく、透析予防にも視点を置く必要があるという理由からです。

 

教育が終了するだけで、透析看護認定看護師の資格は今後も有効です。一方、新規で資格を取得する場合は、透析看護認定看護師のカリキュラムを受講できる学校がないことから、腎不全看護認定看護師のカリキュラムを受講することになります

 

「腎不全看護認定看護師」の学習内容には、透析看護の知識に加え、予防や合併症の早期発見など、腎臓病全般の知識が問われます。さらに、薬剤投与や透析管理などの特定行為研修も追加されています。

 

 

腎不全看護認定看護師になるには?

腎不全看護認定看護師になるためには、どのような勉強や手続きが必要なのでしょうか。資格取得までの流れ通う学校合格率などを解説します。

 

腎不全看護認定看護師になるまでの流れ

認定看護師資格を取得するまでには4つのステップがあります。

 

 

腎不全看護認定看護師になるためには、普段から腎不全患者さんの看護に携わり、透析についての知識や技術が必要となります。

 

 

腎不全看護認定看護師のカリキュラムを受けられる学校は?

認定看護師を取得するには、指定された教育機関で、決められたカリキュラムに沿って学習する必要があります。

 

なお、2024年度は「透析看護認定看護師」の授業を受けられる学校はありません。「腎不全看護認定看護師」のみ受け付けしています。

 

対象学校(2024年4月時点)

東京都:昭和大学 認定看護師教育センター

出典:日本看護協会「認定看護師教育機関別の開講状況・定員数一覧(特定行為研修を組み込んでいる教育機関:B課程認定看護師教育機関)

 

腎不全看護認定看護師の学習ができる学校は1校しかないため、資格取得を目指す人は、現在の仕事の調整や引っ越しなどを検討する必要がありそうです。

 

なお、具体的なカリキュラムについて、詳しくは日本看護協会のWebサイトを確認しましょう。

 

 

腎不全看護認定看護師試験の内容や合格率は?

認定審査の試験内容は、例年以下のように設定されています。

 

  • 試験時間:100分
  • 会場:各都道府県に設置
  • 試験形式:マークシートで四肢択一形式
  • 問題数:計40問(150点満点)
  • 合格率:日本看護協会からの発表はなし

参考:日本看護協会「2024年度 認定の手引き

 

合格率は公式の発表はありません。入学試験の準備や800時間の教育課程での学習などがあるため、相当量の学習は必要となります。

 

認定審査では「認定看護師教育基準カリキュラム」に沿った基礎知識を中心に出題されます。カリキュラムをしっかり受講して、試験に備えましょう。

 

 

腎不全看護認定看護師の資格取得にかかる費用・時間

腎不全看護認定看護師の資格を取る場合、次のような費用・時間がかかります。

 

資格取得までにかかる費用

腎不全看護認定看護師になるための費用は、学校への入学から資格取得までで120万円程度かかります。

 

認定看護師の資格取得にかかる費用の例

項目 金額
入学試験の受験料 5万円
入学金 5万円
受講料 100万円前後
認定審査の受験料 5万円
認定料 5万円

 

さらに、ここに数万円の教材費や引っ越し費用などがかかりますので、事前にどのくらいかかるのか見積もりを立てておくとよいでしょう。

 

全て自分で負担するのが難しい場合は、日本看護協会による「認定看護師教育課程奨学金」などを活用することも、選択肢の一つです。詳しくは、日本看護協会のWebサイトを確認しましょう。

 

 

また、勤務先の病院で補助制度を設けているケースもあります。自分の勤務先の制度を確認してみてもよいですね。

 

 

資格取得に必要な時間

腎不全看護認定看護師の資格取得までには、1年半以上かかります

 

資格取得までのスケジュール例

時期 できごと
6月 入学
6月~9月 共通科目の学習
9月~12月 区分別科目・専門科目の学習
翌年1月~2月 実習
3月  修了試験
10月 認定審査
12月 合否判定通知
翌々年2月 認定証通知

参考:昭和大学「年間スケジュール(B課程・認定看護師教育センター)

 

教育機関の入学から修了試験までおよそ1年間の受講期間があり、その後受験や認定登録に半年ほどかかります。

 

学校に通う期間は、退職や休職が必要な場合もあります。

 

病院によっては、認定看護師取得のために、進んで休職を受け入れてくれたり、勤務扱いにしてくれたりするところもあるため、自身の病院の制度などについて、事前に確認しておきましょう。

 

 

腎不全認定看護師の仕事内容は?

腎不全看護認定看護師は、学習を通じて身に付けた知識・スキルを生かして、透析療法の提案や療養指導の場面などでより質の高い看護ケアを行います

 

透析や療養指導はチームで行うため、同僚や後輩の看護師のほか、臨床工学技士や管理栄養士など他職種とも密に連携しながら患者さんの療養をサポートします。

 

また、認定看護師は、多職種との連携を取りながら、ケアチーム全体でリーダーシップを発揮する役割が求められており、今後もその活躍を期待されています。

 

 

腎不全看護認定看護師になるメリットとは

腎不全看護認定看護師になるメリットは、次の通りです。

 

 

1スキルアップにつながる

腎不全の病態に応じた治療法や患者さんへの適切な食事・薬物・運動療法を学ぶため、患者さんに質の高いケアを提供できます

 

「腎臓病の進行を抑えて、患者さんのQOLを維持する」
「病態や患者さんの特性に応じて、効果的で苦痛が少ない治療法を一緒に考える」
「病変に早期に気付き、下肢切断を回避する」

 

といったようなケアをより高いレベルで実践できるようになります。

 

 

2キャリアアップにつながる

腎不全看護認定看護師は、病院内での勉強会の実施も役割の一つであり、看護だけでなく教える立場としての経験も積むことができます

 

チーム医療や地域連携の経験も積むことができ、腎不全看護のスペシャリストとしてのキャリアを確固としたものにできるでしょう。

 

 

3昇給がある場合もある

腎不全看護認定看護師になると給料アップにつながる場合があります

 

病院やクリニックによって異なりますが、認定看護師に対する資格手当や、資格取得をすることで昇給につながることがあります。所属の病院の制度を確認してみましょう。

 

 

腎不全看護に役立つそのほかの資格

腎不全看護のスキルを高めたい、より良いケアができるようになりたい看護師さんには、次のような資格取得もおすすめです。

 

 

腎臓病療養指導士

慢性腎臓病の患者さんについて、最適な療養指導や多職種連携の方法を学べる資格です。

 

病状のステージに応じた生活習慣の指導、食事や栄養、薬の服用方法のアドバイスなど、患者さんの療養生活を全面的にサポートしやすくなる資格です。

 

取得に必要な条件

  • 看護師として3年以上の経験
  • 講習会への参加
  • 一定時間以上の療養指導業務の経験
  • 対象の施設での研修、症例要約の提出
  • 筆記試験での合格

 

 

 

透析技術認定士

透析業務における専門的な知識・スキルを学べる資格です。

 

透析機器の操作や透析患者さんのケア(穿刺や抜針、シャント管理など)など、透析治療に関わることを詳しく学ぶことができます

 

取得に必要な条件

  • 一定の年数以上の透析療法の実務経験
  • 講習会への参加
  • 認定試験での合格

 

 

慢性腎臓病療養指導看護師

慢性腎臓病患者さんに質の高い看護ケアを提供することを目的とした資格です。

 

「慢性腎臓病療養指導士」は管理栄養士や薬剤師も受験が可能で、多職種の面から腎臓病を学べる一方で、こちらは看護の視点から腎臓病を詳しく学べます

 

「腎不全看護認定看護師」と役割や資格制度の方向性は似ていますが、教育機関への通学の必要はなく、費用や取得までの時間の面で資格取得までの道のりはやさしめです。

 

 

取得に必要な条件

  • 日本腎不全看護学会の会員歴が3年以上
  • 一定の年数以上の慢性腎臓病患者さんへの看護経験
  • 慢性腎臓病に関する看護実践のレポート提出
  • 認定審査での合格

 

 

まとめ

腎不全看護認定看護師は、腎臓病患者さんに専門的な知識を生かして透析のサポートや病気の進行を抑える看護ケアを提供できます。

 

腎臓病の患者さんに対して、長期的にいきいきと生活するための看護を提供したい方におすすめの資格です。

 

執筆:看護roo!編集部

 

 

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