緩和ケア認定看護師になるには?役割や仕事内容についても解説
緩和ケア認定看護師は、ガンをはじめとした痛みを伴うあらゆる疾患・症状において、患者さんの心身の苦痛を緩和させるためのケアを提供する認定看護師資格の一つです。
この記事では、緩和ケア認定看護師の役割や試験の流れ、学校、仕事内容などを解説します。
目次
緩和ケア認定看護師とは
緩和ケア認定看護師は、認定看護師資格の一つです。
患者さん一人ひとりに寄り添い、その人の痛みの緩和に適したケアは何かを判断・実践できる看護師として、ほかの看護師さんへの指導なども担います。
2020年に、看護分野の「がん性疼痛」と「緩和ケア」が統合され、「緩和ケア認定看護師」となりました。
緩和ケア認定看護師は、現在までに206名取得しています。
緩和ケア認定看護師の役割
「認定看護師」には「実践」「指導」「相談」の3つの役割があります。
日本看護協会は、認定看護師の役割を次のように定義しています。
緩和ケア認定看護師に求められる役割はどのような内容なのでしょうか。詳しく解説していきます。
緩和ケア認定看護師の役割①「実践」
「実践」は、高度な知識と技術を生かして患者さんに質の高いケアを提供することです。
患者さんの身体の痛みや精神的な苦痛を和らげ、その人らしく生きられるようにサポートします。患者さんだけでなく、そのご家族の喪失感や悲しみに寄り添い、メンタルケアを行うことも「実践」にあたります。
緩和ケア認定看護師の役割②「指導」
「指導」は、ほかの看護師さんへ、最適なケアの仕方や症状の判断のポイントなどを指導することです。
患者さんがより快適に療養できるための必要なケアや、痛みを和らげるために最適な処置は何であるかを、ほかの看護師さんにレクチャーします。
緩和ケア認定看護師の役割③「相談」
看護師さんや薬剤師さんと協力して、適切な看護ケアを検討することが「相談」です。
患者さんの症状を見て、使用する薬剤は何が良いかや、痛みを緩和するためにどのような方法が適しているかなど、他職種を巻き込んでコンサルテ―ションします。
緩和ケア認定看護師になるには
緩和ケア認定看護師の資格を取るためには、教育機関への入学や認定審査の受験をしなければいけません。資格取得の流れや、取得に必要な準備などについて解説します。
緩和ケア認定看護師になるまでの流れ
認定看護師資格を取得するまでには4つのステップがあります。
緩和ケア認定看護師の資格を取るためには、日頃から緩和ケアが必要な患者さんと関わることが重要です。
例えば、がんセンターなどの急性期医療施設での勤務経験や、終末期医療を必要とする患者さんと関わる病棟や在宅ケアの場で働く経験などが必要となります。
緩和ケア認定看護師になるための学校や学習内容は?
緩和ケア認定看護師の授業を開講している学校は、2024年4月時点で3カ所あります。
- 岩手医科大学付属病院高度看護研修センター(岩手)
- 静岡県立静岡がんセンター認定看護師教育課程(静岡)
- 久留米大学認定看護師教育センター(福岡)
最新の教育機関の募集状況については日本看護協会のサイトで確認しましょう。
緩和ケアに関する認定看護師の分野には、「がん性疼痛看護」もあります。しかし、がん性疼痛看護は2026年に教育が終了するため、これから資格取得を目指す場合は、「緩和ケア」となります。
教育機関では、痛みを伴う疾患の症状や、薬物治療についての専門知識など、緩和ケアに関する知識のほかに、ケアマネジャーや薬剤師など多職種との連携を進めるためのコンサルテーションの方法や、後輩指導の方法や指導内容の考え方なども学びます。
詳しくは緩和ケア分野の「認定看護師教育基準カリキュラム」を確認してください。
緩和ケア認定看護師の試験内容や難易度は?
認定審査の試験内容は、例年以下のように設定されています。
- 試験時間:100分
- 会場:各都道府県に設置
- 試験形式:マークシートで四肢択一形式
- 問題数:計40問(150点満点)
- 合格率:日本看護協会からの発表はなし
難易度は、易しいレベルではないようです。
日本看護協会による、合格者数や合格率についての発表はありません。
ただ、入学試験の準備や800時間の教育機関での学習などがあるため、相当量の学習は必要でしょう。認定看護師の受験者の中には「国家試験のときより勉強した」という声もありました。
認定審査では「認定看護師教育基準カリキュラム」に沿った基礎知識を中心に出題されます。カリキュラムをしっかり受講して、試験に備えましょう。
緩和ケア認定看護師になるためにかかる費用と時間
緩和ケア認定看護師の資格を取る場合、どれくらいの費用と時間がかかるのかを解説します。
資格取得にかかる費用
緩和ケア認定看護師になるには、教育機関の入学金と授業料、認定審査を受けるための検定料など総額で120万程度かかります。
表認定看護師の資格取得にかかる費用の例
項目 | 金額 |
---|---|
入学試験の受験料 | 5万円 |
入学金 | 5万5000円 |
受講料 | 99万円 |
認定審査の受験料 | 5万円 |
認定料 | 5万円 |
費用の工面は、日本看護協会による「認定看護師教育課程奨学金」などを活用することも、選択肢の一つです。詳しくは、日本看護協会のホームページを確認しましょう。
また勤務先の病院で補助制度を設けているケースもあるため、自分の勤務先の制度を確認しましょう。
資格取得にかかる時間
緩和ケア認定看護師の資格取得までには、約2年かかります。
表資格取得までのスケジュール例
時期 | できごと |
---|---|
4月 | 入学・カリキュラム開講 |
5月 | 共通科目開始 |
8月 | 特定行為研修、区分別科目開始 |
9月 | 専門科目開始 |
12月 | 実習 |
翌年2月~3月 | 統合演習、修了試験、修了式 |
10月 | 認定審査 |
12月 | 合否判定通知 |
翌々年2月 | 認定証通知 |
学校での学習は792時間を予定されており、それを4月から翌3月まで1年かけて学習します。その後受験や認定登録をするため、2年近い時間が必要です。
学習の状況によってはさらにかかる場合もあり、一時的な休職や退職も考える必要がありそうです。
病院によっては、認定看護師取得のために、休職を受け入れてくれたり、勤務扱いにしてくれたりするところもあります。
受験を考える際は自身が所属する病院・施設の制度などについて、事前に確認しておきましょう。
緩和ケア認定看護師の仕事内容や働く場所は?
緩和ケア認定看護師は、より高いスキルを持って患者さんに緩和ケアを提供します。痛みや苦痛を取り除く方法や、その人らしく自宅で過ごすために必要な治療は何であるか、専門的な知識と技術を生かして考えられるようになります。
また、より高度な緩和ケアや在宅医療について、学習会の企画やセミナー講師の役割を任され、ほかの看護師さんへの指導を行う機会も増えるでしょう。
医師や薬剤師、ケアマネジャーなどと連携して、終末期を過ごす患者さんにとって、最適なケアは何であるかを考えることも、緩和ケア認定看護師の仕事です。
緩和ケア認定看護師の働く場所は、ホスピスや緩和ケア病棟などもあれば、がんセンターなどの専門医療機関もあります。近年は在宅での治療を選択する患者さんも増えてきて、緩和ケア認定看護師として在宅ケアに携わるケースもあります。
まとめ
緩和ケア認定看護師は、患者さんの心身の痛みや苦痛を和らげ、その人らしく生きられるように質の高いケアを提供する役割があります。
緩和ケアを必要とする患者さんと関わる中で、「よりよいケアの仕方を考えたい」と模索している方や、「よりよい緩和ケアを病棟全体に広めたい」という方におすすめの資格です。
執筆:看護roo!編集部
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