訪問看護の認定看護師になるには?費用や学校、取得のメリットを解説

看護師が取りたい資格図鑑の「在宅ケア認定看護師(訪問看護)」の記事のMV

 

在宅ケア認定看護師は、訪問看護のスペシャリストととして在宅療養をする方へのケアや、退院を目指す方のリハビリ支援などを行います。

 

この記事では、在宅ケア認定看護師役割資格を取るまでの流れ、資格を取るために必要な学習、取得にかかる時間、費用などを解説します。

 

 

 

多くの訪問看護師が取得する「在宅ケア認定看護師」とは

在宅ケア認定看護師は、認定看護師資格の一つです。

 

訪問看護認定看護師もありますが、2019年に在宅ケア認定看護師が新設され、現在は在宅ケア認定看護師が増えてきています。2023年時点で、訪問看護認定看護師は677人。在宅ケア認定看護師は82人です。

 

病院で患者さんの退院支援に関わる看護師さんや、訪問看護ステーションに所属して働く看護師さんなどがよく取得しています。

 

訪問看護のイラスト

 

在宅ケア認定看護師の役割

「認定看護師」には「実践」「指導」「相談」の3つの役割があります。

 

日本看護協会は、認定看護師の役割を次のように定義しています。

 

認定看護師の役割を表した図版。1実践、2指導、3相談がある

出典:日本看護協会「認定看護師

 

在宅ケア認定看護師に求められる役割はどのような内容なのでしょうか。詳しく解説していきます。

 

 

在宅ケア認定看護師の役割①「実践」

「実践」は、在宅で看護を受ける利用者さんやそのご家族に質の高いケアを提供することです。

 

在宅療養を行う利用者さんへの看護処置や生活環境の改善によるQOL向上、退院に向けてのリハビリテーションの支援などを行います。

 

 

在宅ケア認定看護師の役割②「指導」

「指導」は、ほかの看護師さんに訪問看護の考え方や、在宅ケアの方法をレクチャーすることです。

 

患者さんの状態や症状から適切な処置・ケアを判断する方法、利用者さんの希望する在宅生活を送れるようなケアの仕方を指導・アドバイスします。

 

 

在宅ケア認定看護師の役割③「相談」

ほかの看護師さんや医師、薬剤師などと協力して、ケアの仕方や処置の方法を考えるのも認定看護師の役割です。

 

生活支援の方法、エンドオブライフケアの考え方など、在宅ケアで直面する課題について、多職種の中で認定看護師が中心となって解決策を考えます

 

 

「訪問看護認定看護師」は2026年に教育が終了

訪問看護に携わる看護師さん向けの認定看護分野には、「訪問看護認定看護師」もあります。

 

しかし、2026年には教育が終了し、以降は訪問看護認定看護師になることはできなくなります(すでに資格のある人は継続して訪問看護認定看護師を名乗ることができます)。

 

代わりに2019年に登場したのが、「在宅ケア認定看護師」です。

 

在宅ケア認定看護師は、訪問看護に携わる認定看護師としての役割も拡充されたうえ、特定行為研修として、ろう孔管理や創傷管理などの分野も学びます。

 

 

在宅ケア認定看護師になるには

在宅ケア認定看護師になるためには、どのような勉強や手続きが必要なのでしょうか。資格取得までの流れや通う学校、かかる時間や費用を解説します。

 

 

在宅ケア認定看護師の資格を取るまでの流れ

認定看護師資格を取得するまでには4つのステップがあります。

 

 

実務経験には、普段から在宅ケアの看護に携わり、在宅医療についての知識や技術を持っていることが重視されます。

 

 

在宅ケア認定看護師のカリキュラムを受けられる学校

在宅ケア認定看護師の授業は、過去に徳島県の「徳島大学大学院医歯薬学研究部看護リカレント教育センター」で開講していました。

 

開講しない年もあるため、次年度の募集は日本看護協会のWebサイトで確認しましょう。

 

在宅ケア認定看護師の学習ができる教育機関は多くありません。資格取得を目指す人は、現在の仕事の調整や引っ越しなどを検討する必要がありそうです。

 

 

在宅ケア認定看護師の試験内容や難易度

認定審査の試験内容は、例年以下のように設定されています。

 

  • 試験時間:100分
  • 会場:各都道府県に設置
  • 試験形式:マークシートで四肢択一形式
  • 問題数:計40問(150点満点)
  • 合格率:日本看護協会からの発表はなし

参考:日本看護協会「2024年度 認定の手引き

 

難易度は、易しいレベルではないようです。

 

合格率は公式からの発表はありません。

 

ただ、入学試験の準備や800時間の教育課程での学習などがあるため、相当量の学習は必要でしょう。認定看護師の受験者の中には「国家試験のときより勉強した」という声もありました。

 

認定審査では「認定看護師教育基準カリキュラム」に沿った基礎知識を中心に出題されます。カリキュラムをしっかり受講して、試験に備えましょう。

 

 

在宅ケア認定看護師の資格取得にかかる費用と時間

在宅ケア認定看護師の資格を取る場合、どれくらいの費用時間がかかるのかを解説します。

 

 

資格取得にかかる費用

在宅ケア認定看護師になるには、教育機関の入学金と授業料、認定審査を受けるための検定料など総額で100万円程度かかります。

 

認定看護師の資格取得にかかる費用の例

項目 金額
入学試験の受験料 5万円
入学金 5万5000円
受講料 99万円
認定審査の受験料 5万円
認定料 5万円

参考:徳島大学大学院医歯薬学研究部看護リカレント教育センター「看護師特定行為研修・認定看護師教育課程(感染管理分野)令和6年度入学試験概要

 

上記は感染管理認定看護師の費用例ですが、在宅ケア認定看護師の費用についても同程度と考えられます。

 

費用の工面は、日本看護協会による「認定看護師教育課程奨学金」などを活用することも、選択肢の一つです。詳しくは、日本看護協会のホームページを確認しましょう。

 

 

また、勤務先の病院で補助制度を設けているケースもあります。自分の勤務先の制度を確認してみてもよいですね。

 

 

資格取得にかかる時間

在宅ケア認定看護師の資格取得までには、約2年かかります

 

資格取得までのスケジュール例

時期 できごと
4月 入学・カリキュラム開講、共通科目開始
5月 専門科目開始
7月 特定行為研修、区分別科目開始
10月~12月 実習
翌年1月~3月  統合演習、修了試験、修了式
10月 認定審査
12月 合否判定通知
翌々年2月 認定証通知

参考:徳島大学大学院医歯薬学研究部看護リカレント教育センター「認定看護師教育課程

 

学校での学習は807時間が予定されており、これを4月から翌3月まで1年かけて学習します。その後受験や認定登録をするため、2年近い時間が必要です。

 

人によってはさらにかかる場合もあり、一時的な休職や退職も考える必要がありそうです。

 

病院や訪問看護ステーションによっては、認定看護師取得のために、休職を受け入れてくれたり、勤務扱いにしてくれたりするところもあります。

 

受験を考える際は自身が所属する病院・施設の制度などについて、事前に確認しておきましょう。

 

 

在宅ケア認定看護師の資格を取るメリット

在宅ケア認定看護師の資格を持っているとスキル面などでメリットがあります。

 

在宅ケア認定看護師になるメリットを表した図版。1在宅ケアの質が上がる、2スキルアップにつながる

 

1在宅ケアの質が上がる

在宅ケア認定看護師の勉強をすることで、利用者さんやそのご家族の生活の質(QOL)を維持・向上させるケアを考え、高い技術と知識を持って提供できるようになります

 

認定看護師は、「相談」のスキルとして、多職種連携の方法論も学べます

 

時にはケアマネジャーなどと連携して利用者さんのケアに当たることの多い訪問看護師にはよいスキルアップの機会になるでしょう。

 

難しい病気や障害があったとしても、住み慣れた自宅で利用者さんご自身が希望する生活を送ってもらえると、それだけでも訪問看護のやりがいにつながります。

 

 

2キャリアアップにつながる

在宅ケア認定看護師になることは、キャリアアップにつながります

 

訪問看護でよりいっそう活躍できるようになるのはもちろん、地域連携室などで働く退院支援看護師や地域包括支援センターなど在宅ケアとのつながりの深い職場で、重宝される存在になれるでしょう。

 

高齢化に加え、制度として病棟から在宅療養や住み慣れた自宅での看取りにシフトしていく中で、在宅ケア認定看護師のニーズは今後も増えていくものと思われます。

 

 

3昇給につながる場合もある

訪問看護ステーションや病院によって異なりますが、認定看護師の資格をもっていることで手当がつき、給料がアップする場合もあります

 

手当は5000円~1万円のところが多いほか、「昇給」という形で給料アップをするところもあるようです。

 

 

在宅ケア認定看護師の仕事内容や働く場所は?

在宅ケア認定看護師は、特に部下や後輩指導で果たす役割が大きいです。

 

訪問看護は基本的に一人でケアを提供するため、普段は部下・後輩の仕事ぶりを観察することができません。

 

そのため、病棟勤務の場合と比べ、OJTでの付き添いや業務に関する部下・後輩からの相談は、より一層貴重な機会となります。

 

そうした機会をより効果的に活用するために、認定看護師で学んだチームマネジメントやリーダーシップの知見が生かされます。

 

続いて働く場所ですが、在宅ケア認定看護師は、訪問看護ステーションに所属するケースが一番多いようです。

 

病院や診療所に所属している場合、退院支援室で働くケースもあります。また中には大学に所属して講師として働いている方もおり、幅広いステージで活躍しています。

 

 

まとめ

在宅ケア認定看護師は、現在、訪問看護に携わっている人、訪問看護ステーションで働くことに興味がある人在宅医療に関心がある人にとって、高度な知識と技術が身につけられる資格です。

 

そうした領域でキャリアアップを目指している人は、取得を検討しても良いかもしれません。

 

執筆:看護roo!編集部

 

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