廃止or継続?本当はどうなる、准看護師制度の行方

 

准看護師は廃止する――医療現場で働く人なら、この話をにしたことがあるのではないでしょうか。実際に神奈川県では、2013年度をもって「准看護師の養成を停止」しています。では本当に、准看護師は廃止されるのでしょうか?准看護師廃止の動きについての疑問をまとめました。

 

廃止or継続?本当はどうなる、准看護師制度の行方|看護師専用Webマガジン【ステキナース研究所】

 

そもそも戦後の看護婦不足の時代に、できるだけ短期間に最低限の看護技術を身につけて、医療現場の即戦力となるよう作られたのが准看護師です。国家資格である看護師に対して、准看護師は都道府県知事の認可であり、大きく異なります。

 

その成り立ちから、准看護師の制度をめぐっては、医師会と看護協会の根深い対立があり、一筋縄ではいきません。

 

廃止が“悲願”の日看協 国も一本化の方針

日本看護協会は、准看護師の廃止が“悲願”です。看護師の専門性の高まりや、地位向上のためには資格の統一が必要との立場で、2000年には廃止のための総決起集会を開いて200万人を超す署名を集めるなど、強気の姿勢をくずしません。

 

これに対して、大病院に看護師を奪われ、自力での確保が難しい中小病院や診療所では、現場の即戦力であり、かつ人件費も抑えられる准看護師がいなくなっては死活問題です。そのため、診療所や中小病院の開業医などが中心の医師会は、准看護師の廃止に根本から反対しているのです。

 

国の検討会が1996年にまとめた報告書では、「21世紀初頭の早い段階をめどに看護婦養成制度の統合に努める」と記され、看護師に一本化する方針が打ち出されています。

 

すでに働いている准看護師の身分がなくなるわけではない

それではすでに准看護師として働いている人達は、今後どうなっていくのでしょうか。仮に、冒頭で紹介した神奈川県のように、准看護師の新規養成をストップする自治体が増えたとしても、すでに働いている准看護師の身分がはく奪されたり、働けなくなったりするわけではありません。神奈川県の事例でも、停止したのはあくまで“新規養成”であり、准看護師制度そのものを廃止するには、保健師助産師看護師法の改正が必要だからです。

 

一方で大きな流れとしては、看護師への移行を支援する動きは、ますます加速していくことが予想されます。現在、10年以上の経験を持つ准看護師は、2年間の通信課程を受けることで看護師への道が開かれています。

 

日看協では通信課程に進学する准看護師をサポートするために、学費補助などとして無利息の奨学金も貸与しています。また神奈川県でも、准看護師養成学校への支援を打ち切る一方で、看護師養成学校への支援策を検討するとしています。

 

実際は横ばい 病院から介護へシフト

それでは、実際に准看護師は減っているのでしょうか?看護師数が1990年の40万人から2012年には100万人と倍以上に増えているのに対し、准看護師は35万人前後で横ばいです。

 

廃止or継続?本当はどうなる、准看護師制度の行方―看護師と准看護師の人数推移|看護師専用Webマガジン【ステキナース研究所】

出典:日本看護協会出版会「平成25年 看護関係統計資料集」

 

とはいえ、その内情は大きく様変わりしています。准看護師は活躍の場を病院から診療所、さらには介護保険施設へと移しているのです。

 

病院で働く准看護師は減り続け、直近の調査では全体の4割まで落ち込んでいます。これに対して介護保険施設などで働く人は増えていて、2010年度には約16%を占め、なかでも居宅系サービスではここ10年で3倍近くに増えています。

 

40代以降の准看護師が急増中 7割が40歳以上

超高齢化が進む日本では、介護分野で働く看護師が圧倒的にたりません。たりない人手を埋めるには准看護師に頼らざるを得ないのです。

 

働く側からみても准看護師は人気です。最近の特徴としては、20代の若手が減っている一方で、社会人経験者や子育てが一段落した人など、40代以降の准看護師が急増中。今や准看護師の7割は40代以上が占めています。

 

自民党議員が准看護師の養成で動き

廃止とも継続ともならず、なんとも宙ぶらりんな状態が続いている准看護師制度ですが、ここへ来て自民党国会議員による「地域を支える看護職員養成促進議員連盟」が発足するなど、新たな展開を見せています。

 

日本医師会の政治連盟である日本医師連盟は、民主党政権下で一時混乱はあったものの、長年にわたり自民党の支持を打ち出してきました。議連の事務局長を務める赤枝恒雄議員も、もともと診療所の開業医で、地区の医師会会長などを経て自民党から出馬し、衆議院議員となった人物です。

 

議連では、大量の後期高齢者がでる2025年にむけた看護職確保策として、急性期病院で働く看護師と、介護現場を中心に働く准看護師の機能分化を訴え、准看護師の養成を継続すべきとしています。

 

必要なのは「一本化」かそれとも「すみわけ」か

日看協がいうように看護師に一本化すべきか、議連のいうように機能分化によるすみわけをするべきかは、議論のわかれるところでしょう。いずれにしても表面的な地位向上や採算のみにとらわれた議論をしても意味がありません。患者の混乱や、現場で働く看護職員に負担の少ない形で、制度作りを進めていってくれることを願ってやみません。

 

 

(参考)

厚労省 就業保健師・助産師・看護師・准看護師の年齢階級別年次推移

神奈川県「准看護師養成停止に関する県の考え方」

日本看護協会出版会「平成25年 看護関係統計資料集」

 

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