「あっ、感染症を勉強できてる!」これならいけると思わせる1冊|ヤンデル書房(11)

Twitterで人気のヤンデル先生が「本屋の店主」になって看護師のみんなにおすすめの本を紹介します。YouTube「SNS医療のカタチONLINE」も絶賛配信中!

 

文:ヤンデル(病理医)

イラストレーション:ネモトマ

 

ヤンデル書房~看護師だけのヒミツの本屋

Vol.11 絵でわかる感染症 with もやしもん

 

こんにちは。

だいぶ過ごしやすくなってきましたね。

店の中も、暑くもなく寒くもない、ちょうどいい感じです。最近は心なしか、じっくり時間をかけて本を選ばれる方の数が増えてきた気がします。

 

書店で本を選ぶ良さは、ぱっとめくってみて、「あ、良さそうだ」と自分で実感してから本を買えることだと思うんですよね。

 

たとえばこの本は、手に取った方の多くが実際に買って行かれます。「これならいける!」と思わせる何かがあるんでしょう。

 

『絵でわかる感染症 with もやしもん』(講談社)

 

ナースも避けては通れない感染症学

題材は、感染症

……そう聞くととたんに、

 

「わっ、ダメ! むずかしそう!」

とか、

「私たちはそこまで知らなくていいんじゃ……」

といった表情を浮かべる方もいらっしゃいます(笑)。お気持ちはとてもよくわかります。

 

思うに、この世の中には、「わかりやすく書かれた感染症の教科書」というのはほとんどありません。

 

ぶっちゃけ、感染症学をカンタンに説明するなんて、普通は無理なんですよ

 

ところがこの本。ぱらりとめくって「はじめに」を読むと、冒頭に驚きのフレーズが。

 

「一般向けの感染症の本」

 

えっ、医学書じゃなくて、一般向けなの?

 

驚いて出版社を見ると、「講談社」と書いてある。医書出版社じゃないんです。

 

「ばいきんやウイルスの話」は、多くの国民が興味をもつテーマです。現実には新型コロナウイルス感染症が猛威を振るっていますし、インフルエンザや溶連菌、乳児や小児のワクチンなど、いつも話題に事欠きません。

 

となると、ナースの皆さんも避けては通れない。

 

おっかなびっくりページをめくれば、ベストセラーの菌マンガ「もやしもん」の解説マンガが。

『絵でわかる感染症』p.5「はじめに」マンガ引用

「感染症のわかりやすいお話を更にユルユルにします」

「イワケンのお話は実にわかりやすいのですが、そこはお医者さん、筆がのってくると専門的な用語も増えるというもの」

「そこを我々が、そこそこの割合でカバー」

 

ここまで背中を押されれば、ためらいがちだった「感染症学」の扉を、少し開いてみようかな、という気にもなると思うのです。

 

“ポケモン図鑑”と“NHKスペシャル”のコンボ!

さて、本書はパラパラ読むと、美麗なマンガと文字とのバランスが程良くてうれしい印象ですが、じっくり読み込むと、すごいことに気づきます。

 

内容がものすごく濃くて、しかも章によっていろいろ工夫が凝らしてあるんです。

 

 

第2章の「抗菌薬を理解しよう」と

第4章の「微生物からアプローチする感染症」の項は、例えるならば「図鑑」。

 

「ポケモン図鑑」を見ている気分。

 

多くの抗菌薬や微生物がカタログのように順番に出てきます。横文字だらけで眠ってしまいそうなときにも、マンガがイメージを膨らませる手伝いをしてくれます。

 

ただし、勉強し始めたばかりの若いナースの皆さんにとって、「図鑑」を片っ端からめくって抗菌薬や微生物の名前を暗記するのは少々しんどいかもしれません。

 

ポケモンの名前を全部言えるかな、みたいなテーマソングもありませんし

 

「感染症の話を勉強しよう」と思って買った本が、もし完全に菌やウイルスや薬の「図鑑」だけだったら……結局は「暗記モノ」だと思うと……気が重いですよね。

 

ところが、本書には、「図鑑」の要素だけではなく、図鑑に出てくるものたちが、実際の現場でどのように見えるかを語る「NHKスペシャル」的な章があるんです。

 

第3章「症候からアプローチする感染症」。ここが本当にすばらしい!

 

菌やウイルスは草むらから出てこない

「図鑑」として語られた微生物は、ポケモンが草むらから出てくるように、実際の現場で直接観察できるわけではありません。

 

私たちの目に見えるのは、微生物そのものではなく……

 

発熱、呼吸器症状、腹部症状、皮疹(ぶつぶつ)、リンパ節腫脹、痛み

 

といった、「症状」です。

 

これら症状の説明が、第3章にしっかり書いてある。

 

たとえば、

 

 

「急性で全身のリンパ節が腫れている場合、その大多数はウイルス感染だけれど、急性でどこか(1箇所)『だけ』のリンパ節が腫れているならばそれは細菌感染のことが多い」

 

 

とか、

 

 

腹痛はあるけれど下痢がないときには、腸炎だとは限らなくて実際には泌尿器科系や婦人科系の別の病気のことがあるから、安易に急性胃腸炎と診断してはいけない」

 

 

とか。とても実践的です。

 

なにより「あっ、感染症を勉強できている!」という実感が湧きます。

 

 

わたしたちは実践に役立つ知識が欲しい

医者は感染症を診ると、「原因の微生物に対して治療をしよう」という気になりがちです。だから、抗菌薬や微生物の名前を暗記する。

 

けれどもナースや患者さんからすると、

 

「バイキンの名前とか薬の種類とかいいから、とにかくこの症状をなんとかしなきゃ/してくれ!」

 

って考えると思います。その声に答えてくれるのが、第3章です。

 

「学問も大事かも知れないけど、実践に役立つ知識がほしいなあ」という、現場のナースにうってつけなんです。

 

個人の感想ですが、本書はまず第3章を読むとおもしろいかもしれません。そのあと第1章に戻って読み進める。すると、「この本を理解したら、患者さんのためになるな」ということが実感できると思います。

 

途中、内容が難しいなと思ったら、すかさずマンガがサポートしてくれますよ。

 

「そんなことより踊らへんか」ってね。

 

 

ヤンデル書房 店主

病理医ヤンデル(市原真/いちはら・しん

1978年生まれ。2003年北海道大学医学部卒、国立がんセンター中央病院(現国立がん研究センター中央病院)、札幌厚生病院病理診断科。現在、同科主任部長。医学博士。病理専門医。著書に『症状を知り、病気を探る』(照林社)、『いち病理医の「リアル」』(丸善出版)、『病理医ヤンデルのおおまじめなひとりごと』(大和書房)など。Twitterブログnoteなどで発信中。良い本を人におすすめするのが大好き。

 

絵でわかる感染症 with もやしもん

■著者:岩田健太郎

■絵 :石川雅之

■発行:講談社(2015/01/10)

■判型:A5判、239ページ

■定価:本体2,200円+税

■ISBN-13: 978-4061547759

 

編集/烏美紀子(看護roo!編集部)

 

 

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