イチからわかるHPVワクチン|ナースが知っておきたい5つのこと

(画像:HPVワクチン啓発プロジェクト「みんパピ!」)

 

日本では“接種率ほぼゼロ”の状態が続いているHPVワクチン(子宮頸がんワクチン)

 

ところが、このところ、

 

「この状況を変えよう!」

「HPVワクチンについてもっと知ろう!」

 

というムードがじわじわ盛り上がってきているんです。

 

そこで、この波を巻き起こしているプロジェクトみんパピ!のドクターたちに、今、ナースが知っておきたいHPVワクチンについて教えてもらいます!

 

 

ナースのみなさんも仲間になってほしい!

今回、HPVワクチンについて教えてくれるのは、こちら「みんパピ!」メンバーの先生方です。

回答する医師3人の画像。稲葉可奈子医師(みんパピ!代表理事、産婦人科医)、木下喬弘医師(みんパピ!副代表、公衆衛生)、今西洋介医師(みんパピ!小児科チーム医師)

 

みんパピ!ってなに?

 

「みんパピ!みんなで知ろうHPVプロジェクト」は、子宮頸がんをはじめとするHPV(ヒトパピローマウイルス)感染症について正しく知ってもらおうと2020年8月にスタートしたプロジェクトです。

 

みんパピ!が目指すのは、

 

「特に関心がない人でもHPVワクチンを知っている世界」

 

HPVワクチンをわかりやすく学べる総合サイトの運営はもちろん、電車や駅の広告で大規模に広報する・非医療イベントとコラボするなどの計画で、「普通に街中でHPVワクチンの情報を目にする状況」をつくろうとしています。

みんパピ!の活動目標の説明図

活動資金を募ったクラウドファンディングは開始から1日半で目標の1300万円を達成。その後も支援は増え続けている(画像:みんパピ!)

 

産婦人科の医師だけでなく、小児科、公衆衛生、弁護士など多分野のメンバーがチームを組んでいるのも特徴で、専門家たちの本気の活動に応援が続々と集まっています。

 

稲葉先生(みんパピ!代表理事、産婦人科医)

HPVワクチンは定期接種であるにもかかわらず、正しい情報が届かないために接種の機会を逃している子がたくさんいる。

 

もう見過ごしてはいられません。

 

看護師のみなさんにも一緒に取り組む仲間になってほしいです。

 

それでは、ナースが知っておきたいHPVワクチンのポイントを確認していきましょう。

 

 

HPVワクチンQ&A~知っておきたい5つのこと

 

HPVワクチンってどんなワクチン?

 

稲葉先生(産婦人科)

HPV(ヒトパピローマウイルス)の感染を防ぐワクチンです。

HPVは子宮頸がんをはじめ、中咽頭がん、肛門がんなど、男性もかかるがんの原因になるウイルスです。

HPVは身の回りにありふれたウイルスです。

 

主に性交渉で感染しますが、性交経験があれば、男性も女性も誰でも一度は感染したことがあると言えるほどです。

 

HPVには種類がたくさんありますが、中には、がんの原因になるHPVもあります(ハイリスクHPV)。

 

ハイリスクHPVは子宮頸がん中咽頭がん陰茎がん肛門がん膣がん外陰がんなどを引き起こします。

 

ほかに尖圭コンジローマの原因となるHPVもあります。

 

HPVワクチンは、このHPVへの感染を防ぎ、HPVが原因となる疾患(HPV感染症)を予防することができるワクチンです。

 

Point
  • HPVワクチンはHPV(ヒトパピローマウイルス)の感染を防ぐ
  • HPVは誰でも感染する可能性あり
  • 子宮頸がんだけでなく、男性もかかるがん(中咽頭がん、陰茎がんなど)も予防できる

 

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HPVワクチンは誰がいつ接種を受けるの? HPVワクチンの種類は?

 

稲葉先生(産婦人科)

HPVワクチンの定期接種(無料)の対象は「小6~高1の女子」。接種回数は3回です。

 

定期接種のHPVワクチンには2種類あります(2価ワクチン、4価ワクチン)。

 

小学6年~高校1年の女子は、無料でHPVワクチンが打てます

 

※2価ワクチンは2種類のヒトパピローマウイルス、4価ワクチンは4種類のヒトパピローマウイルスの感染を防ぎます。

 

どちらのワクチンも3回接種するのに6カ月かかります。3回とも無料で接種するには「高校1年の9月」までに1回目を終えることが必要です。

 

定期接種を受けるときの手順・接種方法などはこちらを参考にしてみてください。

 

また、より予防効果の高い9価ワクチンが、日本でも2020年7月に承認されました

 

9種類のヒトパピローマウイルス感染を防ぎ、子宮頸がんを90%以上予防できるとされます(2価、4価では約50~70%)。

 

ただ、現時点では9価ワクチンは定期接種ワクチンではないので、9価ワクチンを希望する場合は自費(3回で約10万円)となります。

 

Point
  • HPVワクチンの定期接種(無料)は「小6~高1の女子」で3回打つ
  • 9価ワクチンを希望する場合は自費(約10万円)

 

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HPVワクチンの副反応は? 安全性に問題はないの?

 

木下先生(公衆衛生)

HPVワクチンは安全性が確認されたワクチンです。

一時期メディアで報道された症状は、HPVワクチンとの因果関係は認められません。

 

今西先生(小児科)

思春期には、心の不安定さが身体の症状として現れることが非常によくあります。

 

世界中のさまざまな研究で、HPVワクチンは安全であることがわかっています

 

世界保健機関(WHO)もたびたび「安全性に問題はない」と発表しています。

 

日本では、HPVワクチンの副反応ではないかと心配された症状が報道され、接種が止まってしまいましたが、その後の大規模な調査(名古屋スタディ)で、HPVワクチンとの因果関係は否定されました

 

HPVワクチンが特別に重い副反応を引き起こすわけではありません

 

一方で、思春期は(HPVワクチン接種とは関係なく)心の不安定さが身体症状として現れやすい年代です。また、この年代の女性に多い疾患(多発性硬化症など)もあります。

 

HPVワクチン接種後に体調不良を訴える患者さんに対しては、医師や看護師がその症状を否定したりせず、信頼関係をベースにした対応を心がけることが大切です。

 

Point
  • HPVワクチンは安全なワクチン
  • 副反応と心配された症状とワクチンとの因果関係は認められない
  • 思春期に多く見られる多様な症状に配慮を

 

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HPVワクチンの接種率はどのくらい?

 

木下先生(公衆衛生)

日本のHPVワクチン接種率は0.6%です(2020年、WHO)。

世界では接種率70~80%の国も多い中、日本だけが極端に低くなっています。

 

日本では2010年からHPVワクチンが普及し、一時、接種率は70%ほどにまで高まりました。

 

しかし、その後、積極的な接種勧奨が中止になってからは、接種率は1%未満に下がっています

 

※2010年11月に公費助成の対象(任意接種)となり、2013年4月に定期接種化。2013年6月からは積極的な接種勧奨が中止されています。

 

 

一方で、世界では多くの国でHPVワクチンの接種が進んでいます。

 

世界と日本のHPVワクチン接種率グラフ

(画像:みんパピ!)

 

オーストラリアなど接種率の高い国では、すでにその効果が見え始めていて、子宮頸がんを撲滅できるという予測が立っています。

 

また、世界的には「男子のHPVワクチン定期接種」も主流になりつつあります。

 

このままでは将来、日本だけが「子宮頸がんから命を守れない国」になってしまいます。正しい情報を届け、接種率が回復することが大切です。

 

Point
  • 日本のHPVワクチン接種率は1%未満
  • 世界ではHPVワクチン接種が広がっている
  • 高い接種率で「子宮頸がんの撲滅」が見えてきた国もある

 

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わたしたち看護師にできることって、ありますか?

 

稲葉先生(産婦人科)

HPVワクチンについて正しい理解を持って接種を勧めてほしいなと思います。

 

HPVワクチンを接種した看護師さんが「私も打ったよ」とお話ししてくれるのもいいですよね。

 

木下先生(公衆衛生)

間違った医療情報も多くある中で「医療者の言葉」の信頼性は高い。

 

看護師さん一人一人がHPVワクチンについて理解することで、この問題は大きく前に進むと思っています。

 

今西先生(小児科)

小児科医や婦人科医が、外来の短い時間の中で説明するには限界もあります。

 

看護師さんがHPVワクチンのリーフレットを手渡したり、「小6になったらHPVワクチンの定期接種がありますよ」とお知らせしたりしてくれるだけでも効果があると思います。

 

HPVワクチンは今も定期接種であり、小6~高1の女子は無料で打てるのですが、「そもそもHPVワクチンについて知らない」という方がかなり多いのが現状です

 

対象者への個別のお知らせを再開した自治体もありますが、それだけでは、副反応への根強い不安を払拭するには足りません。かかりつけ医など、信頼できる医療者から説明を受けることがやっぱり有効だなと感じています。

 

一方で、対象となる女子が婦人科を受診する機会は多くありません。

 

小児科は、2種混合ワクチンの2期接種(12歳前後)のタイミングでHPVワクチンについて説明することができますが、医師が必ずしも詳しくなかったり、時間の余裕がなかったり…。

 

こうした中、より患者さんに近い看護師さんがHPVワクチンについて理解し、正しく伝えてくれたら大きな力になります

 

詳しく説明するのはムズカシイと思ったら、みんパピ!のサイトを紹介いただくのもいいかもしれません。

 

「子宮頸がんをはじめとするHPV感染症はHPVワクチンで予防する」を当たり前にしていきましょう!

 

 

看護roo!編集部 烏美紀子(@karasumikiko

 

 

(参考)

みんパピ!みんなで知ろうHPVプロジェクト

子宮頸がんとHPVワクチンに関する正しい理解のために(日本産科婦人科学会)

ヒトパピローマウイルス感染症(HPVワクチン)(厚生労働省)

Safety of HPV vaccines(WHO)

Safety update of HPV vaccines(2017.7)(WHO)

Global Advisory Committee on Vaccine safety Statement on Safety of HPV vaccines 17 December 2015(WHO)

Papillomavirus Res. 2018;5:96-103.

 

 

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