「認定看護師」の資格制度、結局どうなるの?|日看協・担当理事の独占インタビュー
2018年、認定看護師の資格制度を見直し、カリキュラムに特定行為研修を組み込む方針が発表されました。
一時は、認定看護師がなくなるのではとの誤解もあり、騒然となりましたが、2018年11月に日本看護協会が現行制度の認定看護師の更新審査はこれまで通り行う方針を示したことで、ひとまず落ち着いたようにみえます。
しかし、「結局どうなるのかよくわからない」という声も依然としてあります。
日本看護協会常任理事の荒木暁子さんに、認定看護師の資格制度が今後どうなるのか聞いてみました。
認定看護師の資格制度見直しのこれまでの経緯(看護roo!編集部で作成)
現行資格でずっと更新可能とした経緯について教えてください。
当初は、新たな認定看護師制度を再構築するにあたり、ある程度の期間を区切って新しい制度へ完全に移行することを検討していました。
しかし、ご承知のように、2018年8月にパブリックコメントを募集したところ、賛否両論ありました。制度の移行を推進するためには期間を区切るべきだという賛成意見がある一方で、一度取得した資格が失効することに対する反対意見もありました。
その反対意見を踏まえ検討し直した結果、期間を区切るのではなく、移行支援をより強化していくことで新たな認定看護師制度の推進をはかっていこうという結論になりました。
現行制度ですでに資格を取得していて、そのままずっと更新したい場合、これまでと同様、5年に1回の更新審査を受ければ資格を保持できます。
認定看護師の資格を保持するパターン(看護roo!編集部で作成)
新たな制度の認定看護師資格への移行支援を強化されるとのことですが、その具体的な内容は決まっていますか?
現在、具体策を詰めているところです。
移行支援に関する要望で一番多かったのが、特定行為研修を受講する際の費用の負担軽減でしたので、無利子の奨学金などを含めて検討中です。
また、特定行為研修を受けやすくするために、いずれの特定行為研修指定研修機関でも、いずれの区分の履修でもよいとしました。つまり、本会以外が運営している特定行為研修指定研修機関で受けても構わないということです。
ただ、どの認定分野でも活用できますので、「栄養及び水分管理にかかる薬剤投与関連」の区分の受講は推奨しています。この区分は新制度での教育カリキュラムにはすべての認定分野に盛り込む予定です。
これから資格を取得する場合、いずれの認定看護師教育を受けるべきか迷うとの声もありますが…
ご自身やご所属施設の状況を踏まえて、選択していただきたいです。
受講を検討されている分野やお住まいの地域によっても状況が異なりますので、悩んだときは本会の看護研修学校認定看護師制度再構築準備室までご相談ください(ky-saikochiku[at]nurse.or.jp ※[at]は@に置き換えてください。)。
新たな制度の教育は、特定行為研修を盛り込むため、受講期間が長くなることを心配する声が多く聞かれていますが、単純にこれまでの認定看護師教育に特定行為研修を上乗せするわけではなく、特定行為研修との重なり部分を考慮して、受講期間ができるだけ長くならないようにカリキュラムを検討しています。
あくまで検討段階ですが、eラーニングを組み合わせ、集合教育は6カ月におさまるように考えています。総教育時間数は現行で600~800時間のところを、特定行為研修を含めて800時間前半になる予定です。
新教育の変更案(日本看護協会にヒアリングの上、看護roo!編集部で作成)
特定行為研修を組み込む意図や、新しい教育カリキュラムについて教えてください。
特定行為研修を組み込むことで、臨床推論や病態判断力がつき、大きく3つの効果を期待しています。
- 患者や利用者への適時・適切なサービス提供
- 病院にとどまらず、あらゆる場でのニーズへの対応
- 医師をはじめとした他職種との対話力の向上
すでに本会から特定行為研修を修了した認定看護師が300人近くいますが、これまで「今できれば」「もう少しできれば」とジレンマを感じていた場面で対応することが可能となり、看護がさらに充実したとの声が届いてきています。
たとえば、「呼吸器(気道確保に係るもの)関連」や「呼吸器(人工呼吸療法に係るもの)関連」などの特定行為区分の研修を修了した集中ケア認定看護師が日中に大動脈解離の緊急手術を受けた患者さんに介入したケース。
その病院では、以前は、夜間、指示通りルーティンで鎮痛剤を投与し、人工呼吸器の設定を確認するだけで、次の日の朝から医師の指示に沿って抜管準備に向けて少しずつウィニングをしていき、昼頃または夕方に医師が訪室するタイミングで抜管していました。
それが、夜間、麻酔が切れたタイミングで状態を説明し、鎮痛剤を投与しながら痛みをコントロールし、呼吸を促していき、呼吸状態の回復に合わせた人工呼吸器の微調整を迅速に行えるようになったことで、朝の医師の訪室時には抜管が可能になったといいます。
朝、抜管できると、午前中にICUで抜管後の様子を見た上で、安定した状態で日中に一般病床に転床できますし、呼吸器の装着時間が短くなり、せん妄を避けられるなどのメリットもあります。
ほかにも、訪問看護師への褥瘡ケアのアドバイスや、高齢者施設へのラウンドで抗菌薬の適正使用や脱水対策で重症化予防をするなど、活動の場を地域へ広げている特定行為研修を修了した認定看護師が出てきています。
同じ認定看護師の中に、特定行為研修を修了した人とそうでない人がいることで混乱しませんか?
混乱する懸念もあって、移行を強力に推進していこうと考えていましたが、結果的に併走することになりました。
すでに、医療機関によっては、特定行為研修を修了した看護師を「特定看護師」と呼んだり、ユニフォームを変えたりバッチを付けたりと、さまざまな工夫がされていると聞いています。
その動きを止めるものではありませんが、わかりにくさを解消するために、特定行為研修を修了した認定看護師は「特定認定看護師」という呼称を名乗ってよいと本会の考えをお示ししました。
資格の正式名称ではありませんが、現行制度の認定看護師と新たな制度の認定看護師を区別する必要があると現場で判断された場合に使っていただければという趣旨です。
新しい認定看護師の制度が成功するためには、日本看護協会や認定看護師だけががんばるのではなく、教育機関や看護管理者なども含めすべての看護職が「この制度を活用することで、看護師が活躍していく場を広げる」と考えて取り組んでいただくことが大事だと思っています。
わからないことやご意見があれば、本会の看護研修学校認定看護師制度再構築準備室まで連絡ください(ky-saikochiku[at]nurse.or.jp ※[at]は@に置き換えてください。)。
***
2019年2月1日現在、認定看護師の登録者数は1万9631人に上ります。
スキルアップしたい看護師の多くが取得を考える認定看護師だけに、制度の見直しが看護業界全体に与えるインパクトは大きなものがあります。
今後の動向に注目してきたいと思います。
看護roo!編集部 坂本朝子(@st_kangoroo)
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▷新・認定看護師教育、初年度に開講するのは8カ所|看護roo!ニュース
(参考)
認定看護師制度の再構築(日本看護協会)
特定行為に係る研修制度の活用の推進(日本看護協会)
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