ポケモンGOの医療現場・看護師への影響まとめ

ついに日本にもポケモンGOが上陸し社会現象になっていますが、医療現場への影響はどうでしょうか。

 

病院内でプレイすることで接触事故や感染症のリスクが高まったり、関係者以外が立ち入ったりと、既に問題が多数挙がっています。逆に良い例では、海外ではリハビリ意欲が低下している子どもたちのリハビリにポケモンGOを取り入れ、効果が出ているそうです。

 

そこで今回は、大人気のポケモンGOが医療現場に及ぼす影響についてまとめてみます。

 

 

【目次】

 

 

ポケモンGOの医療現場でのリスク

スマホで医療機器に影響が出るのは本当なのか?

ひとつめのリスクは、「スマートフォン使用による医療機器への影響」です。

多くの病院では、限られたスペース以外での携帯電話、スマートフォンの利用を禁止しています。患者さんの中には、通話が迷惑になるというモラル的な理由からだと思っている方もいますが、大きな理由は医療機器への悪影響を防ぐためであることはご存知かと思います。

 

平成26年度の総務省調査によると、携帯電話やスマートフォンの電波が植込み型心臓ペースメーカ及び植込み型除細動器の誤作動を招く危険性があります。そのため、“植込み型医療機器が装着されている部位から15cm程度離すこと”という指針を示し、注意喚起を行っています。また平成26年に電波環境協議会が出した文書(pdf)の中でも、携帯電話やスマートフォンをさまざまな医療機器周辺で使用する際の対策や病院内の各エリアでの使用方法など、安心・安全に活用するための方法について言及しています。

 

その他の医療機器に対しても、電波環境協議会から指針が示されています。「医用電気機器には一定の電磁的耐性が義務付けられているものの、携帯電話端末がごく近接して使用された場合には動作への影響を受けるおそれがあ」るとし、「影響が懸念される医用電気機器から1m程度離す」ことを目安としています。

 

実際には、現在の携帯電話やスマートフォンの電波は、医療機器へ影響を及ぼさないように改良されてきています。しかし、影響を及ぼすリスクはゼロではないこと、万が一影響を及ぼした場合は命に直結する危険があることを考えると、やはり使用方法や使用場所については医療機関ごとにルールを決め、利用者にはそれに則るよう促すことが最も必要です。

 

集団による感染症の拡大リスク

ある場所にポケモンGOユーザーが多く集まることにより、デング熱やジカ熱などの重篤な感染症が拡大することが懸念されています。既にニュースなどでも取り上げられているように、「珍しいモンスターがいた」というスポットになどには、たくさんの人が集まっています。そこでの感染リスクが高いことは、想像に難くありません。

また、医療機関内にポケモンGOユーザーが入ってくることも大きなリスクです。部外者であるユーザーが病院内に立ち入ることにより、免疫力の低下している患者さんの感染症リスクが高まる可能性があります。

 

看護師免許取り消しの危機?

運転中にポケモンGOをプレイしていたために摘発された運転手は現在までに70人を超え、物損事故や人身事故も起きています。

もしも看護師がこのような事故を起こした場合は、道路交通法違反だけでなく、保健師助産師看護師法第9条に定められている「欠陥事由」に該当するかもしれません。

(参考)看護師免許の欠格事由と処分について

 

もし看護師免許を保有する私たちが何らかの事件・事故を起こして刑事処分となった場合、3年以内の業務停止、免許の取り消しとなる可能性があります。さらに、あってはならないことですが、業務中に使用すれば医療ミスや事故につながることも考えられます。

看護師という国家資格を有する者としても、節度ある使用を心がけなければなりません。

 

ある病院の注意喚起に学ぼう

ある小児専門病院では、敷地内に若者が入り込むケースが相次いだため、「この病院にいるポケモンたちは入院中です。ポケモンたちが早く元気になって退院するために、探さないでくださいね」と、ユーモアを交えた手書きのポスターを作製し、事故を未然に防ぐ取り組みを行っています。(毎日新聞)

 

また、オランダのアムステルダムメディカルセンター(AMC)も同様の問題に対して、「AMCには確かに病気のポケモンがいる。だがわれわれがちゃんと面倒を見るから、面会に来ないでほしい」という内容とともに、ティッシュペーパーに囲まれたポケモンキャラクターのピカチュウのイラストを添えてツイッターに投稿しています。

 

 

いくら注意をしても、ユーザーの目やに入らなくては意味がありません。闇雲に「ダメ!」と押さえつけられても、拒否したくなる気持ちもあるでしょう。このようなユーモアのある注意喚起は話題にもなりますし、ユーザーにも響きやすいかもしれません。

 

 

ポケモンGOのプラスの効果

体力アップや生活習慣病の予防に大活躍、さらに認知症予防まで?

近年、ゲームを含む屋内での活動が増え、身体を動かす機会が減っていることによる健康リスクが高まっています。

 

食生活や運動不足などが原因の高血圧脂質異常症糖尿病など生活習慣病のため継続的に治療を受けている患者さんは年々増加傾向にあります。さらに、厚生労働省による平成26年の患者調査の概況(pdf)によると、生活習慣病が原因と考えられる慢性腎疾患の総患者数は296,000人、血管疾患では1,179,000人、心疾患では1,729,000人にのぼります。

 

部屋の中から街に出てポケモンGOをプレイすることが自然な運動につながり、体力アップに貢献するのではと期待されています。

同様に、適度な運動による認知症の予防効果も期待できます。身体を動かすことで他の病気の予防や筋力維持に効果があるだけでなく、お孫さんと同じゲームで遊ぶことでコミュニケーションにも役立ちそうですね。

 

 

看護師の立場で取り組めること

ゲームをプレイするにあたって、モラルやマナーを遵守するのは最低限のことです。

医療機関ではそれぞれの性格ごとに独自のルールを設け、利用者にその必要性を理解してもらう必要があります。

 

また、事故防止の観点からは、「物理的に事故が起きにくくなる」対策を取る必要もあるかもしれません。たとえば階段などの危険な場所や立ち入り禁止区域には障害物を置く、扉の施錠を徹底する、院内の人には積極的に声をかけて注意を促すといった、病院全体での取り組みも有効です。

 

アメリカのある病院では、小児患者のリハビリに活用し成果を上げている例もあるそうです。ゲームそのものの存在が悪ではなく、それをプレイするユーザー次第で、それは毒にも薬にもなります。

患者さんを守る医療者としても、ゲームを楽しむユーザーとしても、適切な使い方ができるよう考えることが重要です。

 

 

【ライター:こたつむし】

 

(参考)

Pokemon GO at C.S. Mott Children's Hospital(Youtube)

平成25年度電波の医療機器等への影響に関する調査結果及び当該結果に基づく「各種電波利用機器の電波が植込み型医療機器へ及ぼす影響を防止するための指針」の改訂(総務省)

医療機関における携帯電話等の使用に関する指針(電波環境協議会)

心疾患の総患者数は172万9,000人 厚生労働省「平成26年患者調査の概況」より(日本生活習慣病予防協会)

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