緩和ケア 7つの誤解|誤解6◆モルヒネは命を縮める

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「患者だけでなく、医療者の中にも『モルヒネは命を縮める』といまだに誤解している人がいる」。

こう話すのは永寿総合病院(東京都台東区)の廣猛氏だ。

医療用麻薬の1つであるモルヒネは、呼吸回数を減らして呼吸しやすくする作用を持つ。

「緩和ケア講習会の普及で、医療者間のモルヒネに対する誤解は減ったが、研修会に出たことのない医師も多く、モルヒネ使用に尻込みする医師も少なくない」と愛和病院(長野市)の平方眞氏は指摘する。

(満武 里奈=日経メディカル)

 

 

緩和ケア 7つの誤解

誤解6◆モルヒネは命を縮める

廣橋氏はこうした誤解について、そもそも余命わずかな患者にモルヒネを投与したことで「早いスピードで亡くなった」という印象を持つからではないかとみる。ただし、呼吸抑制が起こり得るモルヒネを、適量より多く投与することで、死期を早めてしまう恐れはある。「モルヒネは決して命を縮める薬ではなく、苦痛を和らげる薬。適切に使用することで、確実に苦痛を和らげ、生活の質を高めることができる」(廣橋氏)。

 

もっとも、医療者以上にモルヒネに不安感を持っているのが患者と家族だろう。患者がモルヒネに誤解を抱いているとき、平方氏はその誤解を解いた上で医療用麻薬を投与するようにしている。投与前には次のように説明しているという。

 

例えば、「今使っている薬では痛みは十分に抑えられないので、次の段階の痛み止めが必要です。『医療用』麻薬の一種で、多くの患者さんが今のような状態のときに使用して痛みを取っています。今までの痛み止めとは異なる副作用(便秘、初期の吐き気、初期の眠気)が出ることがありますが、副作用で困らないようにする薬も一緒に処方します。最初から痛みが止まらなくても、痛みに応じて増やすことができる薬剤です」。

 

また、「『つらそうだからモルヒネで寝かせます』という考えも間違っている」(廣橋氏)。

モルヒネ投与で眠くなるようであれば、副作用が出ていると見なす。患者を鎮静(セデーション)するのであればモルヒネではなく、注射剤のミダゾラムやフルニトラゼパム、坐薬のジアゼパムを使用するとよいという。「モルヒネは鎮静薬ではなく、寝かせる薬でもない。鎮静薬をうまく使用してほしい」と廣橋氏はアドバイスしている。 

 

 

【緩和ケア 7つの誤解】

誤解1◆緩和ケアは癌治療後に開始

誤解2◆予後は予測できない

誤解3◆緩和ケアは痛みの緩和

誤解4◆医師の説明を患者は理解している

誤解5◆レスキュー薬はできるだけ制限

誤解6◆モルヒネは命を縮める

誤解7◆点滴しないと死期が早まる

 

<掲載元>

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