最後を迎える患者さんにできることは、看護師が教えてくれた

医師から看護師へ伝えたいこと【11】

最後を迎える患者さんにできることは、看護師が教えてくれた

 

患者の死に、どう立ち向かうか

医療従事者には避けて通れないことのひとつ−−それが患者さんの「死」です。
今回は、そんな患者さんの「死」と、医療従事者がどう関わっていくべきかを考えていきたいと思います。

 

最後を迎える患者さんにできることは、看護師が教えてくれた

 

心をサポートできるのは、看護師

仕事をしていて、常に思うことは、「看護師は、病棟の誰よりも患者さんやその家族の気持ちの変化を敏感に察することができる」ということです。

医師は、患者さんよりもまずはその「病気」にフォーカスして診療をするので、ふと漏らした患者さんの呟きや不安感を、きちんと汲み取ることができぬままに仕事を進めてしまう事が多いのです。

いっぽう看護師は、毎日患者さんの小さな訴えを聞いたり、面会に来られたご家族と話す機会も多いため、患者さんの情報を漏らさず把握することに長けています。それは、私たち医師では気が付けなかった事がほとんどです。

 

最後まで寄り添う。一人ぼっちの寂しさを救う看護師の存在

死を目前にされた患者さんは、死への恐怖はもちろんの事、一人ぼっちになって皆から忘れ去られてしまうのではないかという寂しさも抱えておられます。 

 

かつて私は、そんな死を目前にした患者さんを担当したことがありました。その時、新人の若い看護師がいつもその患者さんを必死にサポートしていたのを今でも憶えています。看護業務はまだ慣れない手つきでしたが、細く震える患者さんの手を優しくいつまでも撫でて、声を掛けている姿は、とても頼もしく、これこそが真の医療なのではないかと感じさせられました。

 

 結局、その患者さんは治療の甲斐も虚しく亡くなられましたが、後にご家族からはこのような言葉をいただきました。
「おじいちゃんが、ここの病院はみんな温かい人たちばかりだっていつも言っていました。若い看護師さんがいつも手をとってくれて、一人じゃないのよ、と言ってくれた。だから夜も眠れるんだって」

 

看護の力の偉大さを、この時ほど感じさせられた事はありませんでした。

看護師が、患者さんの気持ちに寄り添うことで、患者さんの病気や死への恐怖心は少し和らぐのではないかと思います。

 

 

医師は、患者様の病気を治療することが主な仕事であるため、死への関わりかたも、「いかに延命できるか?」もしくは「いかにQOLを向上できるか?」が焦点になってきます。

そのため、死に対する恐怖心を持った患者様の心のケアまですることは大変難しいです。

 

一方看護師は、常に患者様の近くでお世話をするために、患者様の心の拠り所になっているケースが非常に多いです。

患者様に対する看護師の声掛けは、時として薬よりも効果がある場合があります。

がんの末期で痛みに苦しんでいる患者様に対して、鎮痛薬よりも、側にいて手を握って声を掛け続けていた方が、穏やかな表情を見せる患者様が多いのも、その一例です。

 

医師と看護師では、患者様との向き合い方が異なりますが、目指す大きな目標は一緒だと思っています。同じ医療現場で働く仲間としても看護師とうまく組織連動しながら、患者様の治療をしていかなければいけないと考えます。

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