最終更新日 2024/09/27

睡眠導入剤

睡眠導入剤とは・・・

睡眠導入剤(すいみんどうにゅうざい、hypnotic)は、不眠症や睡眠が必要な状態の際に使用される薬剤のこと。睡眠導入剤と睡眠薬の違いについて厳密な定義はないが、睡眠導入剤は睡眠薬の中で作用時間の短い薬を指すことが多い。

 

禁忌

慎重投与

閉塞性肺疾患や睡眠時無呼吸症候群が基礎疾患にある方、小児患者に対しては慎重投与が必要である。

 

併用禁忌について

複数の睡眠導入剤を投与することで相互作用が生じるときがある。また、抗うつ薬や抗コリン薬などほかの薬剤とも相互作用が生じる場合がある。

 

分類と作用

睡眠薬と睡眠導入剤の違いに明確な定義はない。ただ、睡眠薬には作用時間による「超短時間作用型」「短時間作用型」「中間作用型」「長時間作用型」といった分類があり、睡眠導入剤はそのうち、「超短時間作用型」に当たる。

 

その中でも、構造による分類では「ベンゾジアゼピン系」、「非ベンゾジアゼピン系」、「メラトニン受容体作動薬」、「オレキシン受容体拮抗薬」がある(表)。

 

睡眠導入

 

ベンゾジアゼピン系

ベンゾジアゼピン受容体を刺激し、内の抑制性の神経伝達物質であるGABA産生が亢進され、催眠・鎮静作用につながる。

 

非ベンゾジアゼピン系

ベンゾジアゼピン系薬剤と同様に中枢神経系のGABA受容体に作用することから、ベンゾジアゼピン系薬剤に分類されることもある。

 

メラトニン受容体作動薬

メラトニン受容体に作用することで脳の松果体から分泌される睡眠や体内時計に関係するメラトニン分泌を亢進し、より生理的な催眠作用につながる。

 

オレキシン受容体拮抗薬

オレキシン受容体を阻害することで覚醒を抑制し、正常な睡 眠を促すことが考えられており、わが国ではスボレキサントとレンボレキサントがある. 有害事象として傾眠があるが、他の薬剤と比較し日中への持ち越しや依存のリスクは低い。

 

副作用(投与後の注意点)

睡眠導入薬使用後の翌朝の自動車運転などの危険を伴う機械の操作に従事はさせない。
眠気、注意力・集中力・反射運動能力の低下、ふらつき、前行性健忘、頭痛に加えて便秘や下痢などの消化器症状も副作用として挙げられる。

 

また、高齢者においては加齢に伴う薬剤の代謝率や排泄率低下などから体内に蓄積する傾向にあり、ベンゾジアゼピン系薬剤に対する感受性も亢進することから、薬剤の種類や用量には注意が必要である。

 

取り扱いの注意点

睡眠導入剤の用量調整や休薬などは原則、主治医と相談し、計画的に行う必要がある。突然の休薬は不眠症の増悪につながる可能性があり、過量内服は呼吸停止や心停止につながる可能性がある。

 

引用参考文献
1)厚生労働科学研究班・日本睡眠学会ワーキンググループ「睡眠薬の適正な使⽤用と休薬のための診療ガイドライン」2013年10月22日改訂.(2024年9月閲覧)
2)Dieter Riemann, et al. European guideline for the diagnosis and treatment of insomnia; J Sleep Res. 2017 Dec;26(6):675-700.
3))Franco De Crescenzo, et al. Comparative effects of pharmacological interventions for the acute and long-term management of insomnia disorder in adults: a systematic review and network meta-analysis; Lancet. 2022 Jul 16;400(10347):170-184.
4)越智 紳一郎.総論 : 睡眠治療のアップデート. 睡眠障害に対する西洋薬の使い方とやめ方.特集 プライマリ・ケアでみる睡眠の悩み.治療.106(4),2024,384-387 2024.

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