最終更新日 2024/07/22

睡眠薬

睡眠薬とは・・・

睡眠薬(すいみんやく、sleeping pills)は不眠症の治療に用いられる薬剤で、以下の種類が存在する。

 

(1)ベンゾジアゼピン受容体作動薬

・ベンゾジアゼピン系睡眠薬:エスタゾラム、フルラゼパム、トリアゾラム、クアゼパムなど
・非ベンゾジアゼピン系睡眠薬:エスゾピクロン、ゾルピデムなど

 

(2)オレキシン受容体拮抗薬

国内で承認されているのはレンボレキサントとスボレキサント

 

(3)メラトニン受容体作動薬

ラメルテオン

 

ベンゾジアゼピン系睡眠薬は非ベンゾジアゼピン系に比べ半減期が長く、依存や慣れのリスクが高いため、通常は第一選択として使用されることは少ない。一方で、第一選択で推奨されるのは、非ベンゾジアゼピン系睡眠薬(エスゾピクロン、ゾルピデムなど)である。これらは効果的に不眠症を改善し、ベンゾジアゼピン系に比べて依存や副作用のリスクが低いとされる。

 

また、新しいタイプの睡眠薬であるオレキシン受容体拮抗薬メラトニン受容体作動薬は、依存症のリスクや、翌日の持ち越しも少なく、高齢者などでさらに使いやすい。

 

分類と効果

睡眠薬は、作用時間(表1)と作用機序(表2)によって異なる分類が存在する。主な分類は以下の通りである。

 

表1作用時間による分類

 

表2作用機序による分類

 

これらの分類は、睡眠薬の選択において重要であり、患者の不眠の特徴や必要性に合わせて適切な薬剤が選ばれる。作用時間の違いに関しては、患者の睡眠の問題点(寝つきの悪さ、夜間の覚醒、早朝覚醒など)に合わせて選択され、作用機序の違いに関しては、安全性や副作用を考慮して選択される。

 

用法・用量

承認されている睡眠薬の多くには、年齢など患者の背景によって、投与量が異なり、通常、高齢者や女性には推奨開始用量が少なく設定されている。また、基本的に治療は忍容性(投与された人がどの程度薬剤の副作用に耐えられるか)を評価するために最低用量から開始し、より高い効果を得るために必要な場合にのみ慎重に高用量に移行すべきである。

 

副作用(投与後の注意)

すべての睡眠薬には、共通した以下の一般的な副作用に関するリスクがある。

 

(1)中枢神経系抑制作用(注意力低下、運動協調性低下、翌朝障害など)

一般にベンゾジアゼピン受容体作動薬でそのリスクが最も高く、オレキシン受容体拮抗薬で中間、メラトニン受容体作動薬で低くなる。また、ベンゾジアゼピン系睡眠薬は呼吸抑制作用があり、低換気や閉塞性睡眠時無呼吸症候群を悪化させる可能性がある。これらの副作用は不眠症治療薬と他の中枢神経抑制薬やアルコールを併用すると、リスクが高まるため注意が必要である。

 

(2)異常行動、幻覚、興奮、健忘など

夢遊病や、睡眠中の運転・電話・食事・性行為など、睡眠に関連する複雑な行動が起こる。これらの事象はすべての不眠症治療薬で報告されている(特に超短時間作用型のゾルピデム、エスゾピクロン、トリアゾラムで多い)。

 

(3)うつ病の悪化および希死念慮のリスク

特に、うつ病を併存する患者に対しては、睡眠薬を処方する前に希死念慮を評価する。希死念慮がある場合には注意深く監視する必要がある。

 

取り扱いの注意点

不眠症治療薬の突然の中止後、数日間にリバウンド効果(薬を始める前と比較して睡眠が悪化する)を発症するリスクがある(一般的にはベンゾジアゼピン受容体作動薬)。特定の薬物や用量にもよるが、数日から数週間かけて徐々に漸減することで、リバウンド効果を抑えることができる。 また、不眠症で慢性的に薬を使っている場合、薬を中止するために不眠症の認知行動療法が有効であるという報告が増えてきている。

 

引用・参考文献

1)David N Neubauer.Pharmacotherapy for insomnia in adults.UpToDate.

執筆: 白川和宏

神戸市立医療センター中央市民病院 救命救急センター副医長

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