出産とは・・・
出産(しゅっさん、child birth)とは、子を産むことである。お産、分娩(ぶんべん、delivery)ともいう。出産の方法には大きく分けて経膣分娩と帝王切開とがある。
出産方法
経膣分娩
経膣分娩とは、産道を通り子(胎児)が母体から産まれ出ることである。
分娩の終了は、児および胎盤などの胎児付属物すべてが娩出された時点をいう(「出産の経過」参照)。
・無痛分娩
無痛分娩とは、硬膜外麻酔(鎮痛)により疼痛の緩和を行いながら分娩を行うことである。これまで日本では欧米諸国と比較して無痛分娩の割合は低かったが、希望する妊婦の増加に伴い、近年は増加傾向にある。
帝王切開
帝王切開とは、妊婦の腹部を切開し、胎児をとり出す外科手術である。
帝王切開には事前の検査などから経膣分娩に適さないと判断され、あらかじめ日時を決めて行われる予定帝王切開と、妊娠経過中や分娩時に経膣分娩が難しいと判断されて帝王切開となる緊急帝王切開とがある。
予定帝王切開が選択されるのは主に帝王切開の既往のある妊婦で、帝王切開が選択される理由の中で最も多い。ほかに胎位異常や前置胎盤などがある場合も予定帝王切開が選択される。
緊急帝王切開が選択されるのは分娩遷延、胎児機能不全などである。
出産の経過
正常な場合の出産は、分娩第1期~分娩第3期の経過をたどる。
出産の前兆
不規則な陣痛や産徴が見られるようになる。
分娩第1期(開口期)
分娩第1期は、分娩の開始~子宮口全開大までをいう。
陣痛の周期が10分以内、または陣痛が1時間に6回以上の頻度となった時点を分娩の開始といい、子宮口が開くにつれ、陣痛の間隔が短くなってくる。子宮口が10cm程度開くことを子宮口全開大という。
分娩第1期では、胎児はあごを胸に引きつけた姿勢になり(第1回旋)骨盤入口部に進入し、その後、回転しながら胎児の後頭部が母体の前方へ向く(第2回旋)。
分娩第2期(娩出期)
分娩第2期は、子宮口全開大~胎児の娩出までをいう。
陣痛の間隔が更に短くなり、痛みが最も強い時期。子宮口が全開大し、破水が起こる。
その後、胎児の頭が見え隠れする「排臨」を経て、胎児の頭が引っ込まなくなる「発露」となる。
胎児はさらに下降し、児頭が反屈して胎外に娩出される(第3回旋)。その後、児頭が娩出された状態のまま、再度回転して横を向き、母体の腹側にある胎児の肩甲が娩出する。その後、反対側の肩甲骨も娩出し、続いて体幹が娩出される。
分娩第3期(後産期)
胎児娩出後は、後産期陣痛が起こり、胎盤が子宮から剥離されて胎盤が娩出される。
分娩時の評価
胎児心拍モニタリング
母体に陣痛計を装着することによって胎児心拍数、子宮収縮(陣痛)圧を測定し記録する。胎児の状態を評価するために行う。
頸管の成熟度
内診で評価する。子宮口(頸管)開大度、頸管展退度、児頭の位置、頸部の硬度、子宮口の位置をそれぞれ確認する。Bishop scoreで点数化して表現することもある。
児頭の位置・回旋
視診や内診を行い評価する。児頭の小泉門や大泉門、産瘤の位置などが目安となる。下降が児頭からではなく、四肢や臍帯からの場合は、緊急帝王切開となる。
出産時に伴うリスク
出血
妊産婦死亡の最も多い原因は出血である。分娩時大量出血の原因には弛緩出血、頸管や膣の裂傷、胎盤遺残、子宮内反症、子宮破裂などがある。
なお、止血困難な産後の異常出血および出血性ショックには産科危機的出血の対応を行う。
羊水塞栓症
羊水が母体血中へ流入することによって引き起こされる。分娩中および分娩直後に呼吸困難、胸痛を訴えたり、意識低下や原因不明の血圧低下が見られ、ショックや呼吸停止に至る。
ほかにも分娩の遷延や停止、胎児機能不全、臍帯異常などがある。
引用参考文献
1)Sharon Sung,et al.Cesarean Section.I. Treasure Island (FL),2023.(2024年9月閲覧)