HIVとは・・・
HIV(えいちあいぶい、human immunodeficiency virus;ヒト免疫不全ウイルス)とは 、レトロウイルスの一種でRNA型のエンベロープウイルスである。
どのようなウイルスか?
免疫担当細胞(主としてCD4陽性リンパ球)に感染すると、免疫系が徐々に破壊されていき、後天性免疫不全症候群( AIDS;acquired immunodeficiency syndrome)を引き起こす。
感染経路
HIVに感染した血液、精液、膣分泌液、母乳が粘膜に触れることで感染する。血液以外の体液(唾液や涙)に含まれるウイルス量は微量であり、血液以外の体液(唾液や涙)にもウイルスが含まれているが、ウイルス量は微量なため、感染する可能性は非常に低い。
主な感染経路は、
1)性的接触
2)母子感染(経胎盤、経産道、経母乳感染)
3)血液感染(輸血、臓器移植、静脈注射など)がある。
どのような疾患の原因になるか?
HIV感染によって生じる疾患として、AIDSがある。適切な治療が行われなければ重篤な全身性免疫不全状態となり、日和見感染症、悪性腫瘍を引き起こす。
検査
HIV感染の診断には、血清中の抗HIV抗体やHIV(抗原や遺伝子)の検査が行われる。
日本では、スクリーニング検査、確認検査の順に二段階で診断を行う。スクリーニング検査では、抗原・抗体同時検査を行う。陽性の場合、さらにイムノクロマト法による抗体検査、もしくは従来の抗体検査と核酸増幅検査法(RT-PCR法)による確認検査を行い、診断を確定する。
治療法
2023年現在、 HIVに対するワクチンはなく、完治させる治療薬もない。
AIDSの発症を防いだり、免疫能を向上させるために、2剤以上の抗HIV薬を組み合わせた抗レトロウイルス療法 (ART : anti-retroviral therapy)が標準治療である。この治療により、AIDSの発症・進行抑制が可能になり、生命予後は著しく改善された。しかし、厳格な服薬を一生続けることが求められる。
引用・参考文献
1)日本エイズ学会 HIV感染症治療委員会.HIV感染症「治療の手引き」第25版.2021.
2)吉村和久.AIDS (後天性免疫不全症候群)とは.国立感染症研究所.