盲腸とは・・・
盲腸(もうちょう、ceacum)とは解剖学的に大腸の一部を指す言葉である。
解剖
回腸(小腸の一部)末端には回盲弁と呼ばれる大腸内容物の逆流防止弁の役割を果たす部分がある。それ以遠が大腸であるが、回盲弁よりも下の盲端な部分を盲腸と呼び、その長さは通常5~6cmと言われている。盲腸の後内側壁には直径3~5mmほどの虫垂と呼ばれる袋状の臓器がついている。虫垂は一般的には右下腹部にあるが、発生の過程によりどこにでも位置する可能性がある。虫垂に炎症が起きると虫垂炎と呼ばれる病態となり、世間一般的に盲腸と呼ばれることが多いが、医学的には両者は区別されている。
虫垂炎
(1)疫学・発生機序
虫垂炎(appendicitis)は10~20代に好発する急性腹症の原因となる疾患である。虫垂に炎症が起こる理由としてはさまざまな機序があるが、糞石や食物残渣、リンパ組織腫大、腫瘍などにより虫垂内腔が閉塞して、2次性に感染が加わることが重要な機序となる。
(2)症状
・疼痛(最初は心窩部・臍周囲、後に右下腹部)
・悪心、嘔吐、急性の食思不振
・腹部触診もしくは直腸診での圧痛
・局所の筋硬直
・局所の膨隆
・皮膚表面の知覚過敏
・発熱
・便秘
・精巣の症状(まれ)
※Cope's Early Diagnosis of the Acute Abdomen参照
(3)診断
診断にあたり症状の発生順序が最も重要となる。
以下の順序で症状が進むことがほとんどである
(1)疼痛(通常は心窩部や臍部に出現)
(2)悪心、嘔吐、急性の食思不振
(3)圧痛(右下腹部が典型的だが、腹部・骨盤のどの部位でも起こり得る)
(4)発熱
(5)白血球増多
(4)画像所見
臨床症状が虫垂炎と一致するときに、腹部超音波や腹部CTで腫大した虫垂や糞石を認めることで診断につながることもあるが、虫垂炎の際にいつでも認められる所見ではない。
(5)治療
虫垂炎の治療は大きく外科的治療(虫垂切除術)と保存的治療(抗菌薬、絶食)に分けられるが、一概にはどちらが良いとは言えず、糞石の有無や腹膜刺激の強さなどを踏まえて総合的に決められることが多い。