最終更新日 2017/07/24

樹状細胞

樹状細胞とは・・・

樹状細胞(じゅじょうさいぼう)とは、強い抗原提示能力を持つ免疫細胞の一つである。白血球の一種で、骨髄の中の造血幹細胞に由来する樹状前駆細胞が血流に乗って全身に運ばれ、末梢組織で分化してできる細胞である。

樹状細胞は名前の通り細胞の周りに樹の枝のような突起があり、さまざまな組織や器官内に存在する。部位によって、それぞれ違う名前が付けられている。

樹状細胞の抗原提示能力を利用した治療法に、体外で刺激した樹状細胞を体内に戻してがん細胞を攻撃させる樹状細胞ワクチン療法があげられる。

 

部位による名称

・表皮:ランゲルハンス細胞 
・輸入リンパ管:ベール細胞(ヴェール細胞)
リンパ節傍皮質(ぼうひしつ、T細胞領域):指状嵌入細胞
・胸腺:胸腺樹状細胞

 

その他にも、リンパ小節の胚中心に、濾胞樹状細胞(ろほうじゅじょうさいぼう)と呼ばれる間質細胞があるが、現在では樹状細胞とは由来も機能も異なると考えられている。
また、形質細胞様樹状細胞と呼ばれる細胞もある。これは自己免疫疾患アレルギー疾患などで、炎症組織に集積している。炎症反応を引き起こしたり増幅させたりすることに関与していると考えられている。

 

樹状細胞の役割

樹状細胞は自らが攻撃することはなく、T細胞に異物の特徴(抗原)を教える「抗原提示能力」を持つ。抗原提示能力とは、体内に侵入した異物の断片を樹状細胞が取り込み(貪食)、自らの細胞表面に目印を出す能力のことである。

 

その目印を基にして、T細胞に異物の特徴を記憶させて攻撃させる。樹状細胞は成熟レベルが進むにつれて「抗原提示能力」を持つようになる。

 

樹状突起の機能は、人体にとって有害な異物や細菌を排除するために重要である。体内が正常であれば、樹状細胞は活性化されない。末梢リンパ系組織で免疫寛容(特定の抗原に免疫系が反応しないように抑制すること)を維持するために働いている。免疫寛容が不調になると、自己免疫疾患にかかると考えられている。

 

樹状細胞ワクチン療法

がん免疫療法

がん免疫療法は、免疫担当細胞やサイトカイン、抗体、およびそれらを活性化する物質によって、自己の免疫機能にがん細胞を攻撃させる治療法である。
現在、がん治療は外科療法や化学療法、放射線療法が主流で、免疫療法は研究段階だが、第4の治療法として期待されている。

 

樹状細胞ワクチン療法の特徴

患者自身の樹状細胞を体外に取り出し、刺激して体内に戻す治療法である。
前立腺がんや悪性リンパ腫、悪性黒色腫等で臨床試験が開始され、一部に効果があったという報告もあるが、まだ効果や副作用についての評価は定まっていない。特に、患者自身に対して害になる免疫反応が同時に起こる可能性が指摘されている。

SNSシェア

用語辞典トップへ