肺挫傷とは・・・
肺挫傷(はいざしょう、pulmonary contusion)とは、胸部打撲や強い圧迫などで肺に歪みやずれ、圧の変化などの傷害が生じる状態のことである。
原因
胸部に強い衝撃が加えられることによって、肺胞の内圧が急激に上昇し、肺胞や毛細血管が断裂して引き起こされる。交通事故、高所からの墜落、災害の爆発、暴行などにより発生するケースが多い。
肋骨骨折、血胸、気胸のほか、周囲の臓器の損傷を併発している場合もある。
症状
軽症の場合は目立った症状は現れず、1週間程度で自然に回復する。
肺の損傷が大きい重症患者では、呼吸困難、頻呼吸、血痰、チアノーゼなどが見られる。重症化するとガス交換に障害が生じ、血液中の酸素濃度が低くなり、低酸素血症(動脈血中の酸素が不足した状態)による意識障害や血圧低下が現れ、最悪の場合、急性呼吸不全を起こし、死に至ることもある。
診断
受傷の原因が胸部打撲や強い圧迫の場合、肺挫傷の有無を考える必要がある。また、上記症状からの診断に加え、胸部の聴診、動脈血ガス分析による低酸素血症の確認、胸部X線、胸部CTなどから判断する。
治療
安静臥床を基本とし、酸素吸入、肺理学療法(呼吸練習、呼吸筋トレーニングなど、残存する肺機能を維持することを目的に行う理学療法)を行う。重篤な低酸素血症では、気管挿管(気管内へチューブを挿入して気道を確保する方法)を行い、人工呼吸管理をする必要がある。
引用参考文献
1)岡元和文編.34. 肺挫傷の治療指針.救急・集中治療 最新ガイドライン.総合医学社,2018,119-121.(ISBN 9784883786602)
2)和田攻ほか編.肺挫傷(ざしょう).看護学大辞典,第2版,2010,2337.(ISBN 9784260005135)
3)医療情報科学研究所編.胸部外傷総論.病気がみえる vol.4 呼吸器.メディックメディア,2015,310.