エボラ出血熱とは・・・
エボラ出血熱(えぼらしゅっけつねつ、Ebola hemorrhagic fever)とは、エボラウイルスによる感染症である。感染症法で一類感染症に定められている。すべての患者が出血症状を示すわけではないため、現在では「エボラウイルス病(Ebola virus disease;EVD)」と呼ばれている。
病原体
フィロウイルス科に分類されるRNAウイルスが病原体である。ザイール、スーダン,ブンディブギョ、タイフォレスト、レストンの5つの株があるが、とくにザイール株は病原性が強く、2014-16年の西アフリカでの大流行の原因となった。
流行地
アフリカが流行地である。2014-16年の過去最大の流行は西アフリカ(ギニア、リベリア、シエラレオネ)で起こったが、それまではコンゴ共和国、コンゴ民主共和国、ガボン、ウガンダ、スーダンなど、より東側のアフリカで流行が確認されていた。
感染経路
動物からヒトへの感染は、狩りや火の通っていない肉の摂取などによって起こる。ヒトからヒトへの感染は、防護のない状態で感染者の体液(血液、分泌物、吐物、排泄物など)に接触することで生じる。
潜伏期
2~21日(通常6~12日)
症状
発熱や倦怠感、頭痛、筋肉痛などの一般的なウイルス感染症と初発症状に差がない。結膜充血はやや特徴的といわれる。進行すると嘔吐や下痢を起こし、さらに重症化するとショック、多臓器不全、ときに出血症状を起こす。
疑うポイント
潜伏期間内にエボラウイルスの流行地に滞在していたか、エボラウイルス感染症の可能性がある人や血液、体液と接触したかどうか。
診断
患者の血液や体液(咽頭ぬぐい液、尿)からRT-PCR検査やウイルス抗原検出ELISA法によってウイルスの存在を確認する。抗体を測定する方法もある。
感染拡大予防策
エボラウイルス感染症に対しては、かなり厳重な感染予防策をとる必要がある。すべての患者、疑い患者に対し、個人用防護具(personal protective equipment:PPE)に加え、フェイスカバー、防護効果のあるフットウェア、ガウンあるいはカバーオール、ヘッドカバーの装着が必要である。また、患者と接触した人は、注意深く経過を見守る必要がある。
治療
2019年の時点で承認されている治療薬やワクチンはない。対症療法を行う。
予後
過去の流行では致死率が90%に達することもあった。2014-16年の西アフリカの大流行全体での致命率は40%であった。ただし、致死率はウイルス株やその国の医療レベルによって大きく異なる。
引用参考文献
1)国立感染症研究所ウイルス第一部/感染症疫学センター.エボラ出血熱とは.国立感染症研究所.
2)厚生労働省検疫所FORTH.エボラウイルス病流行に対応した個人防護具(PPE)についての緊急推奨ガイドライン.