意識障害のアセスメント、JCSとGCS、どちらが何に向くの?
『エキスパートナース』2017年3月号<バッチリ回答!頻出疑問Q&A」>より抜粋。
JCSとGCSについて解説します。
菅原美樹
札幌市立大学看護学部成人看護学領域准教授
どちらを使用してもよいのですが、JCS(ジャパン・コーマ・スケール)は緊急時に適しており、GCS(グラスゴー・コーマ・スケール)は亜急性~慢性期の意識障害患者の身体残存機能や、予後の評価に適すると思われます。
〈目次〉
意識障害とは
意識障害は、患者さんの命が危機的状況であることを示すサインの1つです。その原因はとても広範囲にわたり、脳の障害のほかにも、ショックや中毒など全身におよぶ疾患から、意識障害に陥ることも少なくありません。
当然、患者さん自身から、現在の症状や苦しさを聞くことはできません。そのため、外部から刺激や反射によって客観的に評価をすることが、救命の第1歩になります。その際、意識障害を適切に把握するためのツールが「意識障害判定スケール」です。
JCSとGCSのそれぞれの特徴
意識障害判定スケールの代表的なものに以下があります。なおコーマ(coma)とは、「昏睡」のことです。
- ①JCS(Japan Coma scale/ジャパンコーマスケール)表1
- ②GCS(Glasgow Coma scale/グラスゴーコーマスケール)表2
表1JCS(3-3-9度方式)
皆さんの施設ではいずれかを決めて用いていることが多いと思われますが、ときおり聞かれるのが「使い分けは必要?」「どちらがよいの?」という質問です。基本的にはどちらでもよいのですが、より適切な使用ができるように、それぞれ特徴を示します。
①JCSは短期間で簡便:急性期に向く
JCS(3-3-9度方式とも呼ばれる)は、呼びかけや痛みなどの、刺激に対する覚醒の程度によって評価するスケールです。
JCSは、短時間で簡便に意識レベルの評価を行えるのが大きな特徴で、緊急時に用いるのに適しています。急変対応時のスケールとしても、第一選択となるケースが多いと思います。また、間脳・中脳・延髄への侵襲の程度判定もしやすく、よいめやすになります。
②GCSはやや複雑:亜急性~慢性に向く
GCSは、世界的に通用する意識レベル評価法ということが最大の特徴です。「開眼」「発語」「運動機能」の3側面から評価を行いますが、この3側面の総和で評価するためやや複雑になり、そのうち1項目でも判定が困難な場合は意味をなさない、という問題があります。
JCSと比べ、GCSは亜急性~慢性期の意識障害患者の身体残存機能や、予後の評価に有用です。
JCSとGCSをどう使い分ける?
使い分けを考えるなら、例えば一般病棟ではJCSを用い、救命救急センター、ICUなどでは時期に応じてJCSとGCSを併用する、などの方法があるでしょう。
なおこの2つのスケールは、器質的脳障害の存在を念頭に作られています。そのため、代謝性脳障害や精神的疾患には用いることはできないでしょう。
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P.49~50「意識障害のアセスメント、JCSとGCS、どちらが何に向くの?」
[出典] 『エキスパートナース』 2017年3月号/ 照林社