カバジタキセル療法(化学療法のポイント)/前立腺がん

この連載では、抗がん剤のポイントや注意点について解説します。
今回は、前立腺がん(前立腺癌)の患者さんに使用する抗がん剤「カバジタキセル療法」について、レジメンや副作用、治療成績について紹介します。

 

第2話:『カバジタキセル療法(看護・ケアのポイント)/前立腺がん

カバジタキセル療法

 

和田耕一郎
(岡山大学病院 泌尿器科)

 

カバジタキセル療法のポイントA・B・C

  • ポイントA:副作用として、好中球減少症が必発と言われているので、特に発熱に注意しよう!
  • ポイントB:ステロイドを毎日服用するため、薬剤管理を徹底し、急な服用中断が起きないようにチェックしよう!
  • ポイントC:退院後も発熱や咳などの異常があれば病院に連絡するように、患者さんに伝えよう!

 

〈目次〉

 

カバジタキセル療法は前立腺がんの患者さんに行う抗がん剤治療

カバジタキセル療法は、去勢抵抗性前立腺がんに対する化学療法の一つで、「ドセタキセル療法」の効果が低下した患者さんが対象となります。

 

現在、前立腺がんに推奨されている抗がん剤のなかでも効果的ですが、厳しい副作用があります。いわば「最後の砦」として投与されます。

 

ステロイドのプレドニゾロン(プレドニン)を併用した投与法が一般的で、5~10mg(通常10mg経口)が投与されます。

 

カバジタキセル療法で使用する薬剤

カバジタキセル療法で使用する薬剤は、表1のとおりです。

 

 

表1カバジタキセル療法で使用する薬剤

カバジタキセル療法で使用する薬剤

 

(写真提供:サノフィ株式会社、塩野義製薬株式会社)

 

カバジタキセル療法のレジメン

カバジタキセル(ジェブタナ)は、1日目(Day 1)に投与し、2~21日目は休薬します(表2)。プレドニゾロン(プレドニン:経口)は、1~21日目に投与します。

 

 

表2カバジタキセル療法のレジメン

カバジタキセル療法のレジメン

 

カバジタキセル療法で使用する薬剤の投与方法(表3

 

表3カバジタキセル療法の投与方法

カバジタキセル療法の投与方法

 

生食:生理食塩水

 

*本投与方法は、岡山大学病院で行われているものです(2017年5月現在)。

 

発熱性好中球減少症(FN)の予防には、表4のように、2日目に持続型G-CSF製剤であるペグフィルグラスチム(ジーラスタ)の予防投与が行われます。

 

 

表4カバジタキセル療法時の発熱性好中球減少症(FN)の予防投与

カバジタキセル療法時の発熱性好中球減少症(FN)の予防投与

 

*本投与方法は、岡山大学病院で行われているものです(2017年5月現在)。

 

カバジタキセル療法の代表的な副作用

カバジタキセル療法の副作用は、好中球減少や、悪心、下痢や疲労感などがあります。特に、好中球減少は最も注意すべき副作用と言えます。これは、ドセタキセル療法後の患者さんに対してカバジタキセル療法を行った臨床研究において、治療後の好中球減少が100%の患者さんで認められたからです1)。これは以前行ったドセタキセル療法も関係していると言われています。

 

発熱性好中球減少症(FN)も半数以上と報告されているため、通常はカバジタキセルの投与翌日に、ペグフィルグラスチム(ジーラスタ)を投与して好中球減少を予防します。

 

その他、肝機能障害、間質性肺炎などが報告されており、重症化すると死亡することがあります。また、ステロイドを併用することによる耐糖能異常(ステロイド糖尿病)や消化管出血、不眠などに注意が必要です。

 

カバジタキセル療法のポイントA

  • 副作用として、好中球減少症が必発と言われているので、特に発熱に注意しよう!

 

カバジタキセル療法のポイントB

  • ステロイドを毎日服用するため、薬剤管理を徹底し、急な服用中断が起きないようにチェックしよう!

 

カバジタキセル療法のポイントC

  • 退院後も発熱や咳などの異常があれば病院に連絡するように、患者さんに伝えよう!

 

カバジタキセル療法の治療成績

カバジタキセル療法は、プレドニゾロン(プレドニン)との併用療法で、ドセタキセル療法による治療歴を有する去勢抵抗性前立腺がんに対して、海外および国内で有効性(生存期間の延長)が証明されています。

 

海外では、去勢抵抗性前立腺がんの患者さん755例をカバジタキセル群と対照群(ミトキサントロン投与群)に割り付け、カバジタキセル群で全生存期間を2.4ヶ月延長し、2年生存率を対照群の16%から27%に上昇したことが報告されました2)。また、国内でも44例に投与されたデータが報告され、画像的な改善を16.7%に、前立腺がんの腫瘍マーカーであるPSA(前立腺特異抗原)の低下を29.3%に認めました1)

 

しかし、国内での発売後に実施された特定使用成績調査では、253例のうち2例で、有害事象(間質性肺炎)による死亡例が報告されており、発熱性好中球減少症(FN)とともに、有害事象の予防や治療が重要になる治療法です3)

 

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[監 修]
齋藤信也
岡山大学大学院保健学研究科 教授

 

[編 集]
西森久和
岡山大学病院 血液・腫瘍内科

 

[執 筆]
和田耕一郎
岡山大学病院 泌尿器科

 


*本連載では、薬剤の厳密な指示・副作用・投与スケジュールなどについて記載されていますが、これらは2017年5月時点のもので、変更される可能性がございます。薬剤の使用にあたっては、製品に添付されている最新の情報を十分にご参照ください。

 

*本連載では、登録商標マーク®の記載はすべて省略しています。

 

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